副作用マネジメント

皮膚障害

Vol.04

抗がん剤による皮膚障害

国立がん研究センター東病院 薬剤部 副薬剤部長
松井礼子 先生

重症化させないための松井先生からのアドバイス

  • 治療開始からのスキンケア
    • 清潔に保つこと
    • 保湿に心がけること
  • 瘡様皮疹そうようひしん
    • 清潔を保ち、早期のステロイド軟膏剤の使用開始
  • 爪囲炎そういえん
    • 早期からのケア(清潔を保つ)、軟膏治療を開始
    • 早期からテーピングの施行へ

皮膚障害の種類

皮疹

  • 皮疹皮疹抗がん剤により皮膚の角質化が阻害され、皮膚が薄く、もろくなり毛包周囲に炎症が起こることで皮疹、炎症、皮膚乾燥が生じるとされている。そう痒症、ざ瘡様皮疹(細菌感染のない無菌性膿疱)、脂漏性皮膚炎、皮膚乾燥など症状が多様で、顔面や胸部、背部、腕など露光部に多い。まれにSJS※1やTEN※2などの緊急を要する重篤な皮疹を生じることがあるため、速やかな診断が必要である。
  • ※1スティーブンス・ジョンソン症候群:高熱や全身倦怠感などの症状を伴って、口唇・口腔、眼、外陰部などを含む全身に紅斑、びらん、水疱が多発し、表皮の壊死性障害を認める疾患1)

    ※2中毒性表皮壊死(融解)症:スティーブンス・ジョンソン症候群から進展して生じる。水疱、びらんなどで皮膚が剝けた状態が体表面積の10%未満の場合をスティーブンス・ジョンソン症候群、10%以上の場合を中毒性表皮壊死症と診断する1)

爪囲炎

  • 爪囲炎爪囲炎両手足の爪の周囲に炎症をきたし、陥入爪となると側爪部に肉芽を形成して激しい痛みを伴う。

色素沈着

  • 手足や爪、顔が黒ずんだり、黒い斑点が現れたりする。メラニン細胞が刺激を受け、メラニン色素の生産が亢進するためと言われている。

写真は、国立がん研究センター東病院 薬剤部 副薬剤部長 松井礼子 先生提供

代表的な薬剤

【皮膚障害を起こしやすい薬剤】2)

薬効分類 薬品名
チロシンキナーゼ阻害薬 ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、
ラパチニブ、スニチニブ
抗EGFR抗体 セツキシマブ、パニツムマブ
代謝拮抗剤 5-FU、S-1、カペシタビン、テガフール、UFT、シタラビン、メトトレキサート
タキサン系薬 パクリタキセル、ドセタキセル
トポイソメラーゼ阻害薬 エトポシド
アンスラサイクリン系薬 ドキソルビシン
抗生物質 ブレオマイシン
アルキル化薬 ダカルバジン
抗CTLA-4抗体 イピリムマブ
マルチキナーゼ阻害薬 ソラフェニブ、レゴラフェニブ
mTOR阻害薬 エベロリムス、テムシロリムス、シロリムス

発現時期・期間

グラフ

鑑別

  • (1)緊急性の判断

    スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死(融解)症(TEN)、インフュージョンリアクションなどの病態は緊急を要する状態であり、速やかな診察と判断が必要である

    ■スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死(融解)症(TEN)

    判断の目安
    • ・皮膚だけでなく、発熱、粘膜の紅斑・水泡・びらん、こすっただけで皮膚が剥がれるなどの症状を伴う
    • ・原因薬剤開始後2週間以内の発症が多いという報告がある1)

    ■インフュージョンリアクション

    判断の目安
    • ・当該抗がん剤の投与24時間以内、また投与を開始したころ(1~2回目)に多い2)
  • (2)その他の原因の判断3)

    ■尋常性ざ瘡(にきび)

    判断の目安
    • ・尋常性ざ瘡はざ瘡様皮疹に比べて個疹が小さく、四肢に生じることは少ない

    ■ステロイドざ瘡

    判断の目安
    • ・ステロイドざ瘡はざ瘡様皮疹に比べて個疹が小さく、ステロイドや免疫抑制剤投与中あるいは投与後の好中球減少時に生じる

    ■皮脂欠乏性湿疹

    判断の目安
    • ・冬季に高齢者の下腿伸側に好発する

    ■通常の爪囲炎

    判断の目安
    • ・通常の爪囲炎は第1足趾のみに生じることが多いのに対し、抗がん剤によるものは多発し、手指に生じることもしばしばある

評価

有害事象 グレード
1 2 3 4 5
水疱性皮膚炎 症状がない;体表面積の<10%を占める水疱 体表面積の10-30%を占める水疱;痛みを伴う水疱;身の回り以外の日常生活動作の制限 体表面積の>30%を占める水疱;身の回りの日常生活動作の制限 体表面積の>30%を占める水疱;水分バランス異常または電解質異常を伴う;ICUや熱傷治療ユニットでの処置を要する 死亡
皮膚乾燥 体表面積の<10%を占めるが紅斑やそう痒は伴わない 体表面積の10-30%を占め、紅斑またはそう痒を伴う;身の回り以外の日常生活動作の制限 体表面積の>30%を占め、そう痒を伴う;身の回りの日常生活動作の制限 - -
皮膚疼痛 軽度の疼痛 中等度の疼痛;身の回り以外の日常生活動作の制限 高度の疼痛;身の回りの日常生活動作の制限 - -
そう痒症 軽度または限局性;局所治療を要する 激しいまたは広範囲;間欠性;掻破による皮膚の変化(例:浮腫、丘疹形成、擦過、苔蘚化、滲出/痂皮);内服治療を要する;身の回り以外の日常生活動作の制限 激しいまたは広範囲;常時;身の回りの日常生活動作や睡眠の制限;経口副腎皮質ステロイドまたは免疫抑制療法を要する - -
ざ瘡様皮疹 体表面積の<10%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない 体表面積の10-30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない;社会心理学的な影響を伴う;身の回り以外の日常生活動作の制限 体表面積の>30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない;身の回りの日常生活動作の制限;経口抗菌薬を要する局所の重複感染 紅色丘疹および/または膿疱が体表のどの程度の面積を占めるかによらず、そう痒や圧痛の有無も問わないが、静注抗菌薬を要する広範囲の局所の二次感染を伴う;生命を脅かす 死亡
爪囲炎 爪襞の浮腫や紅斑;角質の剥脱 局所的処置を要する;内服治療を要する(例:抗菌薬/抗真菌薬/抗ウイルス薬);疼痛を伴う爪襞の浮腫や紅斑;滲出液や爪の分離を伴う;身の回り以外の日常生活動作の制限 外科的処置や抗菌薬の静脈内投与を要する;身の回りの日常生活動作の制限 - -
皮膚色素過剰 体表面積の≦10%を占める色素沈着;社会心理学的な影響はない 体表面積の>10%を占める色素沈着;社会心理学的な影響を伴う - - -

※身の回りの日常生活動作:入浴、脱衣・着衣、食事の摂取、トイレの使用など

有害事象共通用語規準v4.0日本語訳JCOG版より
JCOG ホームページはこちら

休薬・再開の目安

以下に、皮膚障害の重症度(Grade)に基づく休薬、中止、治療再開の方法の一例を示す。2)

休薬を考慮する目安 再開の目安
≧Grade 2〜3 ≦Grade 1に回復
チャート

※色素沈着の場合は、原則として休薬・減量を行わない。

治療

1. 皮疹

【皮疹の治療方針】4)

Mild(軽症) Moderate(中等度) Severe(重症)
症状 限局性
随伴症状 なし
日常生活への支障 なし
全身性
随伴症状 軽微(そう痒・疼痛)
日常生活への支障 ほとんどなし
全身性
随伴症状 あり(そう痒・疼痛)
日常生活への支障 あり
治療
ステロイド外用剤
体幹:ステロイド軟膏
(Very Strongクラス)
 顔:ステロイドクリーム
(Midiumクラス)
ステロイド外用剤
体幹:ステロイド軟膏
(Very Strongクラス)
 顔:ステロイドクリーム
(Midium or Very Strongクラス)
経口抗菌剤
ミノサイクリン塩酸塩 または
クラリスロマイシン
経口抗ヒスタミン剤(そう痒時)
ステロイド外用剤
体幹:ステロイド軟膏
(Very Strong or Strongestクラス)
 顔:ステロイドクリーム
(Midium or Very Strongクラス)
経口抗菌剤
ミノサイクリン塩酸塩 または
クラリスロマイシン
経口抗ヒスタミン剤(そう痒時)
経口ステロイド剤

【皮疹に対する一般的な処方】

分類 薬剤名 使用方法
保湿剤 ヘパリン類似物質製剤 (軟膏、クリーム、ローション) 1日2~3回 塗布
抗菌剤 ミノサイクリン塩酸塩錠100mg 1回1錠 1日1~2回
クリンダマイシンゲル1% 1日2回 患部に塗布
化膿性炎症を伴う場合に使用
ステロイド外用剤 ヒドロコルチゾン酪酸エステルクリーム0.1% 1日2~3回 顔面に塗布
(強度:Medium)
ジフルプレドナート軟膏0.05% 1日2~3回 全身に塗布
(強度:Very Strong)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
ローション0.05%
1日2~3回 頭皮に塗布
(強度:Strong)
抗アレルギー剤 フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg 1回1錠 1日2回 朝夕食後
皮疹ができた際の痒み止めとして使用
ベタメタゾン0.25mg・
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩2mg配合錠
1回1錠 1日3回 毎食後
痒みが強い場合に使用
ステロイド内用剤 プレドニゾロン錠5mg 1回1錠 1日2回 朝昼食後
重症例における追加処方

注意)薬剤の使用にあたっては、各製品添付文書をご確認ください

【患者さんへの指導のポイント】

外用剤を塗布する際の注意点

  • ・顔、体を洗った後に塗布する
  • ・塗布する前に手を洗う
  • ・ステロイド外用剤は発疹部にのみ薄く延ばして塗布する
  • ・保湿剤は人差し指の第1関節程度の量をとり、まんべんなく塗布する(この量が手のひら2枚分程度の範囲に塗布する量とされている)
  • ※洗顔後に化粧水などを使用する場合には、化粧水、保湿剤、ステロイド外用剤の順で使用すると良い

日常生活の注意点

  • ・清潔、保湿、刺激の回避を心掛ける
  • ・お風呂、シャワーはぬるめのお湯にし、弱酸性で保存料フリーもしくはアルコールを含有しない低刺激の洗剤を使用する
  • ・皮膚をこすり過ぎないよう、よく泡立てて洗う
  • ・日光やきつい衣類などの刺激を避ける(SPF値30、PA値++以上の日焼け止めを推奨)
  • ・化粧をしても良いが、低刺激のものを選択し、薬を塗布した上から化粧をする
  • ・ひげは汚れの温床となる可能性があるため、定期的に清潔なひげ剃りで剃る

2. 爪囲炎

【爪囲炎に対する一般的な処方】

分類 一般名 用法・用量
保湿剤 ヘパリン類似物質製剤 (軟膏、クリーム、ローション) 1日2~3回 手足に塗布
ステロイド外用剤 ジフルプレドナート軟膏0.05% 1日2~3回 手足に塗布 (強度:Very Strong)
抗菌剤 ミノサイクリン塩酸塩錠100mg 1回1錠 1日1回

注意)薬剤の使用にあたっては、各製品添付文書をご確認ください

【患者さんへの指導のポイント】

日常生活の注意点

  • ・清潔、保湿、刺激の回避を心掛ける
  • ・深爪を避け、爪の角を少し長くカット(スクエアカット)すると爪が食い込まず負担が少ない
  • ・爪は爪切りではなく、やすりで整えるほうが好ましい
  • ・ヒールなどのきつい靴を履かないようにする
  • ・指へのテーピングがとても有用であり、早期に開始することが望ましい

テーピングの方法

  • テーピング盛り上がった肉芽を爪から引きはがすように引っ張りつつ、テープで固定する
    指先の血液循環を止めないようらせん状に巻くようにする

写真は、国立がん研究センター東病院 薬剤部 副薬剤部長 松井礼子 先生提供

3. 色素沈着

【患者さんへの指導のポイント】

日常生活の注意点

  • ・清潔、保湿を心掛ける
  • ・日光を避ける(SPF値30、PA値++以上の日焼け止めを推奨)

2019年10月更新



<参考資料>
1) 厚生労働省,重篤副作用疾患別対応マニュアル スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群),2006.
2) 岡元るみ子 他 編,改訂版 がん化学療法副作用対策ハンドブック,羊土社,2016.
3) 鈴木賢一 他 編,がん薬物療法の支持療法マニュアル,南江堂,2013.
4) チームベクティビックス(国立がん研究センター東病院)編,パニツムマブの実臨床 ベクティビックス®を正しく使いこなすコツ,メディカルレビュー社,2010.