副作用マネジメント

口内炎

Vol.02

抗がん剤による口内炎

国立がん研究センター東病院 薬剤部 主任
鈴木真也 先生

重症化させないための鈴木先生からのアドバイス

  • 抗がん剤の副作用か、そのほかの原因があるか?
    • 患者さんが受けているがん治療の口内炎リスクの把握
    • 二次感染症による口内炎の予測と早期発見・早期対応
    • 口内炎リスクを高める要因への早期介入
  • 口内炎の程度に関わらず、痛みにより経口摂取、飲水困難であれば速やかに受診
  • 口内炎対策のKeyは口腔内の清潔・保湿・鎮痛
  • 抗がん剤と併用している通常の薬剤による薬剤性口内炎に要注意

代表的な薬剤

口内炎を起こしやすい薬剤1)
薬効分類 薬剤名
代謝拮抗薬 5-FU、S-1、カペシタビン、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、
ヒドロキシカルバミド
アルキル化薬 シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン
プラチナ系薬 シスプラチン、カルボプラチン
タキサン系薬 ドセタキセル、パクリタキセル
トポイソメラーゼ阻害薬 イリノテカン、エトポシド
アンスラサイクリン系薬 ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン
抗生物質 ブレオマイシン
ビンカアルカロイド系薬 ビンクリスチン
mTOR阻害薬 エベロリムス、テムシロリムス
HER2阻害薬 トラスツズマブ
チロシンキナーゼ阻害薬 スニチニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、レンバチニブ、エルロチニブ
VEGF阻害薬 ベバシズマブ
EGFR阻害薬 セツキシマブ、パニツムマブ
CCR4阻害薬 モガムリズマブ

※口内炎リスク評価の際の留意点

  • ・口内炎は頭頸部癌における化学放射線療法で100%、造血幹細胞移植の前処置の大量化学療法で80%、通常の化学療法で40%程度発症するとされる。2)
  • ・殺細胞性薬、分子標的薬に関わらず個々の薬剤で口内炎のリスクは異なるが、それらの抗がん剤を複数併用すること、大量使用すること、もしくは持続的に使用すること(5-FUはボーラスより持続投与で口内炎リスクが高く、また、長期間の血液癌における化学療法では口内炎リスクが高い)によりそのリスクは更に高まる。

発現時期・期間

  • ・通常の化学療法であると①となるが、大量化学療法、長期の化学療法の場合、口内炎は重篤化かつ長期化する。
  • ・②口腔内への放射線治療による口内炎は数週間にわたる照射中において持続し、照射終了後、1~2週間程度で口内炎は改善傾向にむかう。3)
  • ・②では唾液分泌低下によりカンジダ性口内炎リスクも同様に上昇する。
  • ・③の二次感染においてヘルペス口内炎、カンジダ性口内炎のリスクは抗がん剤の投与方法や期間により異なる。
  • ・④の特殊な場合として、造血幹細胞移植時の移植片対宿主病(graft versus host disease; GVHD)があり、急性GVHDは幹細胞移植後2~3週間に起こり、慢性GVHDは移植後100日頃に生じる。4) また、抗がん剤以外の通常の薬剤による劇的なアレルギー・自己免疫疾患的な薬剤性口内炎は薬剤服用後2週間以内に発症することが多いとされるが、数日以内あるいは1ヵ月以上後の報告もある。5)

代表的な薬剤

有害事象 Grade1 Grade2 Grade3 Grade4 Grade5
口腔粘膜炎
症状がない, または軽度の症状がある
治療を要さない
中等度の疼痛
経口摂取に支障が
ない
食事の変更を要する
高度の疼痛
経口摂取に支障が
ある
生命を脅かす
緊急処置を要する
死亡

有害事象共通用語規準v4.0日本語訳JCOG版より
JCOG ホームページはこちら

※口内炎の評価の際の留意点

  • ・一般的なイメージである口腔粘膜の局所的な潰瘍は口腔粘膜炎と呼ばれる。用語として使用される口内炎はこの口腔粘膜炎に加えて粘膜、歯列、歯根尖周囲、および歯周組織など、口腔組織にみられるすべての炎症状態を意味する。
  • ・医療者の評価は誤差がありグレードで明確に判断できないこともあることから、実際の臨床においては痛いか、ご飯が食べられるか、水が飲めているか等の患者の主訴をもとに対応を行うべきである。
  • ・抗がん剤による口内炎はグレード評価が可能であるが、二次感染としてのカンジダ性口内炎やヘルペス性口内炎はグレード評価ではなく、医師による迅速な診断が必要。
実際の口内炎の例

フッ化ピリミジン系抗がん剤による口内炎

CTCAE v4.0 Grade1

CTCAE v4.0 Grade3:
痛みにより経口摂取などに支障をきたすことは明らか

エベロリムスによる口内炎

アフタ性の口内炎で限局しているのが特徴的

[ 写真:国立がん研究センター東病院 歯科 小西先生、薬剤部 鈴木先生 より提供 ]

口内炎の鑑別

1. 抗がん剤投与に伴う「口内炎」
  • (1)抗がん剤による粘膜障害

    抗がん剤による直接的作用および誘導されるサイトカインやフリーラジカルにより粘膜の基底細胞が障害され、アポトーシスが起こることによる粘膜上皮形成阻害によるもの。

    判断の目安
    • ・口腔粘膜上皮細胞の再生周期が10日程度であるため、口内炎は抗がん剤投与後7~10日で発症し、2週間程度で改善する。1)
    • ・mTOR阻害薬のエベロリムスでは65~75%と高頻度であり、うちグレード3は10%程度。治療開始1~28日で5割が生じ、29日以降56日目までは1割以下、その後は数%と頻度は軽減していく傾向がある。ピークは治療開始後8~14日であり、殺細胞性抗がん剤に似る。6)
    • ・殺細胞性抗がん剤による口内炎は刺激を受ける口腔内の可動域・非角化粘膜部位で起こりやすいが、分子標的薬では刺激を受けにくい非可動域・角化粘膜部位に限局するアフタ性口内炎が特徴的である。
  • (2)薬剤性口内炎

    薬剤による免疫・アレルギー反応によるもの。

    判断の目安
    • ・モガムリズマブは重篤な皮膚障害とそれに伴う口内炎が高頻度であることが報告されている。7)
    • ・免疫チェックポイント阻害薬は1~0.1%未満であるが、まれに重篤な皮膚障害とそれに伴う口内炎が起こることもある。8)
  • (3)抗がん剤による免疫抑制に伴う感染

    抗がん剤による免疫抑制に伴う二次感染によるもの。

    判断の目安
    • ・カンジダ性口内炎はカッテージチーズのような白苔が特有で、ピリピリ・チクチクした痛みをきたす。1)、9)
    • ・ヘルペス性口内炎は水疱性病変であり、複数の水疱ができ、それらが破れるとびらんや潰瘍ができ、痛みをきたし発熱、倦怠感などの随伴症状を伴う。
2. 抗がん剤以外の薬剤投与に伴う「口内炎」
  • (1)薬剤性口内炎

    薬剤による免疫・アレルギー反応によるもの。

    判断の目安
    • ・薬剤服用後に38度以上の高熱と粘膜疹を伴った広範囲な紅斑と水疱、びらんと伴に重症の口内炎が起こる。薬剤服用後2週間以内に発症することが多いとされるが、数日以内あるいは1ヵ月以上後の報告もある。5)
    • ・原因薬は抗菌薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、サルファ剤、抗てんかん薬、向精神薬、緑内障治療薬、筋弛緩薬、痛風薬、降圧薬など多岐に渡り、消化性潰瘍薬であっても報告がある。5)
    • ・早期の原因薬の中止、緊急処置が必要となる。
  • (2)通常薬の口内炎

    ニコランジル、NSAIDs、ステロイド剤等によるもの。

    判断の目安
    • ・ニコランジルは難治性口腔潰瘍(口内炎の類似疾患)をきたすことが知られている。5)
    • ・NSAIDsやステロイド剤は粘膜障害をきたし口内炎リスクを高めるとされている。
3. 薬剤以外の治療(放射線治療等)に伴う「口内炎」
  • (1)放射線治療

    口腔内への放射線照射によるもの。

    判断の目安
    • ・頭頸部癌治療における化学放射線療法では、放射線照射開始から10Gy付近(1週間後)に口腔乾燥や味覚障害が起こり、15Gy付近(3週間後)に口腔粘膜炎で嚥下困難が生じ、20Gy程度(4週間後)で徐々に口腔粘膜炎の影響で疼痛が伴い摂食に影響する。特に治療の後半(60Gy付近)(12週間後)では嚥下時の疼痛を伴い摂食困難となる。10) 放射線治療終了後から1~2週間は症状が継続し、週単位で徐々に改善する。3)
  • (2)造血幹細胞移植における自己免疫反応

    造血幹細胞移植時の自己免疫反応であるGVHDによるもの。

    判断の目安
    • ・局所的なものではなく、広範囲に生じる。
    • ・急性GVHDは幹細胞移植後2~3週間に起こり、紅斑性粘膜炎、びらん、潰瘍をきたす。4)
    • ・慢性GVHDは移植後100日頃に生じ、口唇・頬粘膜の扁平苔癬レース様白斑と水疱が特徴。4)

休薬・再開

  • 化学療法が原因の口内炎では、CTCAEにおけるグレード3をきたした場合は症状が回復するまで化学療法を休薬し、休薬した場合は再開時又は次回投与時に減量を考慮する。1)
  • グレードに関わらず口内炎の痛みによる経口摂取不良やQOL低下をきたすために、評価と対症療法が必要になる。

治 療

抗がん剤投与に伴う口内炎に対する治療の方針
背 景 薬 剤
大量化学療法や放射線療法併用を除く通常の化学療法及び分子標的薬 含嗽薬、鎮痛薬
造血幹細胞移植の前処置としての大量化学療法
移植片対宿主病(GVHD)
含嗽薬、鎮痛薬
(感染が原因の口内炎がある場合は抗真菌薬、抗ウイルス薬)
抗がん剤によりきたされる免疫低下による口腔カンジダ症や口腔ヘルペス症 抗真菌薬、抗ウイルス薬
用いられる薬剤11)

含嗽薬

【痛みがない場合】

生理食塩液含嗽液

アズレンスルホン酸ナトリウム含嗽液
アズレンスルホン酸ナトリウム顆粒5包または液25滴
グリセリン液60mL

水を加え、計500mLとする
1回20mL程度含嗽に使用ぶくぶく含嗽を30秒程度実施し吐き出す

【痛みがある場合】

アズレンスルホン酸ナトリウム・リドカイン含嗽液
アズレンスルホン酸ナトリウム顆粒5包または液25滴
グリセリン液60mL
リドカイン塩酸塩液5~10mL

水を加え、計500mLとする
1回20mL程度含嗽に使用。
食直前に2分程度ぶくぶく含嗽を実施して吐き出す
  • ・含嗽により口腔内清潔保持、保湿がなされる。
  • ・生理食塩水であると口内炎への刺激が少ない。
  • ・含嗽は何度でも実施してよいが、口腔内細菌が増殖する2時間毎に、1日8回程度を目標とするとよい。
  • ・痛みがあればリドカイン塩酸塩液を使用する。
  • ・グリセリン液は保湿目的であるが味が嫌な場合は抜いても良い。
  • ・ヨードを含むポピドンヨード液は粘膜刺激性があり、また、組織の上皮化の阻害をきたす可能性があるため使用しない。

鎮痛薬注)

アセトアミノフェン 1日3~4回 最大4000mgまで
NSAIDs(ロキソプロフェンナトリウム、ナプロキセン等)
医療用麻薬(モルヒネ、フェンタニル等)
  • ・初回から高用量の鎮痛薬を用いるのではなくWHOの除痛ラダーに従って薬剤を使用する。
  • ・肝機能低下時にはアセトアミノフェンは慎重投与。腎機能低下時には、腎機能障害をきたす可能性のあるNSAIDs、副作用が増強するモルヒネ製剤の使用を控え、腎機能に影響が少ないアセトアミノフェン、オキシコドン製剤などを使用する。
  • ・頭頸部癌の化学放射線療法における鎮痛におけるOpioid pain control programにおいても造血幹細胞移植における患者自己管理鎮痛法(patient controlled analages:PCA)においてもオピオイドを用いた患者の痛みに応じた積極的な鎮痛を必要としている。
  • ・経口摂取できない場合はフェンタニルパッチやオピオイド静注を使用する。

注)口内炎に対する適応はないが、厚生労働省が公表する「重篤副作用疾患別対応マニュアル」にて口内炎に対する使用についての記載がある

抗真菌薬

ミコナゾールゲル経口用2%(1g/本) 1回1本、1日4回
毎食後、寝る前に口腔内に塗布後もしくはできるだけ長く含んだ後に嚥下する
イトラコナゾール内用液1% 1回20mL、1日1回
空腹時に内服
アムホテリシンBシロップ
(アムホテリシンBシロップ10%(100mg/mL)を50~100倍に希釈して調製)
1回50mL、1日3~4回
口腔内にできるだけ長く含んで含嗽(またはその後に嚥下)
  • ・カンジダ性口内炎への治療として抗真菌薬を使用する。
  • ・投与後、数日にすみやかに改善することが多いため、多職種による早期発見と医師の判別が必要。
  • ・アゾール系の抗真菌薬を用いる為に薬物間相互作用に注意する。

抗ウイルス薬

バラシクロビル錠500mg 1回1錠、1日2回
朝夕食後(もしくは1回2錠、1日3回)5~7日間
アシクロビル注250mg 1回5mg/kg、1日3回
点滴静注、7日間
  • ・ヘルペス性口内炎への治療として抗ウイルス薬を使用する。
  • ・ヘルペス抗体価は結果がでるまで時間がかかるので、それ確認する前に診断的に抗ウイルス薬を開始する。痛みは数日で改善することが多い。
  • ・造血幹細胞移植前の免疫を大きく抑制する大量化学療法の際にはリスクが高くなるため、高リスク症例には抗ウイルス薬の予防投与も考慮する。

口腔用軟膏

アズレンスルホン酸ナトリウム軟膏
  • ・創傷治癒促進、消炎作用、局所の浄化作用が期待される。
  • ・痛みがある場合、リドカイン塩酸塩を混ぜたアズレンスルホン酸ナトリウム・リドカイン軟膏も有用(アズレンスルホン酸ナトリウム軟膏150gとリドカインゼリー30mLを混合)。
ステロイド軟膏(デキサメタゾン、トリアムシノロン等)
  • ・痛みが強い一時的なアフタ性の口内炎に対する接触時痛を保護する目的での使用はよいが一時的なアフタ性の口内炎と異なり、口内炎の期間が長く継続する抗がん剤による口内炎では感染の原因にもなるために使用は推奨されない。

クライオセラピー

アイスボール、氷片等 薬物投与開始から30分間程度口に含み、口腔内を冷やす
  • ・全てに有効というわけではなく、5-FUのボーラス投与、造血幹細胞移植における大量化学療法(大量メルファラン療法等)において
    エビデンスがある。

注意)薬剤の使用にあたっては、各製品添付文書をご確認ください

口内炎への対応例

(参考:フローチャートでわかるがん化学療法の副作用 南山堂)

※上記、フローチャート使用の際の留意点

  • ・グレードに関わらず、飲食に影響する痛みの強い口内炎はすぐに相談するように指導する。
  • ・痛みがある場合は積極的に鎮痛薬もしくはリドカイン含嗽を使用する。
  • ・広範囲の口内炎は抗がん剤によるものではなく、感染や薬剤性口内炎の可能性が高い。
  • ・経口抗がん剤を内服している場合には休薬の可否と再開に関して担当医に確認が必要。
  • ・薬剤の他に、保湿、洗浄目的のスポンジブラシ、保湿剤、刺激の少ない歯磨き粉などの医薬部外品が役立つことがあるため、積極的な情報提供をおこなう。
  • ・口内炎発症時には摂食困難、食事量低下をきたすことがあるため、栄養士に相談し、食事内容を相談することも一助となる。
  • ・口内炎発症時には刺激となる成分を含むもの、熱い食べ物は刺激となるので避ける。また、内服薬であっても、口腔に広がるような粉薬は口内炎の刺激となることがある。

2019年10月更新



<参考資料>
1) 岡元るみ子 他 編,改訂版 がん化学療法副作用対策ハンドブック,羊土社,2015.
2) Naidu Mu, Ramana GV, Rani PU et al,Neoplasia,6(5):423-431(2004).
3) 鈴木賢一 他 編,がん薬物療法の支持療法マニュアル,南江堂,2013.
4) Imanguli MM et al,Oral Dis,14(5):396-412(2008).
5) 厚生労働省,重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性口内炎,2009.
6) ノバルティス ファーマ株式会社,アフィニトール®錠2.5mg/5mg 適正使用ガイド 手術不能又は再発乳癌,2018.
7) 協和キリン株式会社,ポテリジオ®点滴静注20mg 適正使用ガイド,2019.
8) Acero Brand FZ et al, J Immunother Cancer,6(1):22(2018).
9) 田原信 編,フローチャートでわかるがん化学療法の副作用,南山堂,2015.
10) 遠藤一司 他 編,改訂第6版 がん化学療法レジメンハンドブック,羊土社,2019.
11) 厚生労働省,重篤副作用疾患別対応マニュアル 抗がん剤による口内炎,2009.