副作用マネジメント

手足症候群

Vol.06

抗がん剤による手足症候群

日本赤十字社 徳島赤十字病院 薬剤部
薬事管理課長
組橋由記 先生

■ 抗がん剤による手足症候群

  • 手足症候群とは
  • 代表的な薬剤
  • 症状
  • 評価
  • 鑑別
  • 休薬・再開の目安
  • 対処法

重症化させないための組橋先生からのアドバイス

  • 予防・早期発見のためのポイント
    • 治療開始前から、痛みやひび割れなどの皮膚症状がなくても、毎日の保湿が必要であることを指導しておく
    • 治療開始前に患者さんと一緒に足底や手掌の状態を把握し、患者さんには毎日足底や手掌を観察し、皮膚に変化がないかを確認するよう指導する
    • 治療をうまく進めるためには、患者さん自身の副作用対策へのアドヒアランスが必要であることを指導し理解してもらう
  • 重症化させないためのポイント
    • 痛みを感じるようになれば、休薬する(医師とのコンセンサス必要)
    • 休薬に迷う場合は、病院へ連絡し相談するよう指導する

手足症候群とは

がん治療に使用される抗がん剤や分子標的薬などにより手や足の皮膚の細胞が障害されることで起こる副作用。手足のしびれ、疼痛などの感覚異常や、皮膚の角化、皮剥け、発赤、腫脹などを生じ、重症化すると日常生活に支障をきたすようになるため、予防および早期の対処が重要となる。

代表的な薬剤

【手足症候群を起こしやすい薬剤】1)、2)
薬剤分類 薬剤名
殺細胞性抗がん剤 代謝拮抗剤 5-FU、カペシタビン、テガフール、シタラビン
タキサン系薬 ドセタキセル
アンスラサイクリン系薬 リポソーム化ドキソルビシン
分子標的薬 キナーゼ阻害薬 ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、アキシチニブ

症状

【殺細胞性抗がん剤およびキナーゼ阻害薬による手足症候群の違い】3)、4)
殺細胞性抗がん剤 キナーゼ阻害薬
部位 びまん性 限局性
(圧や摩擦など物理的刺激を受けやすい部位)
発症時期 1~2ヶ月目までに多い 3週目までに多い
症状 初期 知覚異常(しびれ、チクチク、ピリピリ)
広範な発赤・紅斑
限局性の斑状の発赤
進行 皮膚表面の光沢
指紋の消失、色素沈着
疼痛
荷重部・加圧部の過角化
知覚異常
疼痛
重症化 過角化
落屑、皮剥け
亀裂
水疱
潰瘍
水疱の形成
潰瘍

・殺細胞性抗がん剤による手足症候群とキナーゼ阻害薬による手足症候群では、症状のあらわれ方に違いがあるため、患者さんが投与されている薬剤に応じた観察が必要

・皮膚症状と痛みは必ずしも相関せず、見た目に異常がなくても自覚症状として痛みが出てくることがあるため、患者さんの訴えを見逃さないよう注意が必要

写真は、日本赤十字社 徳島赤十字病院 薬剤部 薬事管理課長 組橋由記先生提供

評価

手掌・足底発赤知覚不全症候群
Grade1 疼痛を伴わないわずかな皮膚の変化または皮膚炎(例:紅斑、浮腫、角質増殖症)
Grade2 疼痛を伴う皮膚の変化(例:角層剥離、水疱、出血、浮腫、角質増殖症);
身の回り以外の日常生活動作の制限
Grade3 疼痛を伴う高度の皮膚の変化(例:角層剥離、水疱、出血、浮腫、角質増殖症);
身の回りの日常生活動作の制限
Grade4
Grade5

※ 身の回りの日常生活動作:入浴、着衣・脱衣、食事の摂取、トイレの使用、薬の内服が可能で、寝たきりではない状態

評価の際の留意事項

観察された有害事象が複数のGradeの定義に該当するような場合には、総合的に判断して最も近いGradeに分類する。

有害事象共通用語規準v4.0日本語訳JCOG版より
JCOG ホームページはこちら

鑑別

抗がん剤により手足症候群以外の皮膚障害もよく起こる。また、白癬などがん治療に直接関係ない疾病もあるため、投与前の確認や投与中も継続して確認が必要である。以下に、手足症候群と鑑別が必要な疾患とその鑑別の方法を示す。3)

  • (1)手湿疹(洗剤皮膚炎、進行性指掌角皮症)

    炊事などで使用する洗剤類によって角層のバリア機能が障害されて生じるもので、主として利き手の指先や指腹に乾燥、角化、紅斑を生じ、指紋の消失、亀裂を伴い、徐々に手掌へ拡大する。利き手の親指、人差し指、中指がとくに侵されやすい。冬に悪化する傾向がある。

    判断の目安
    • ・利き手の指腹に症状が強く、足には症状がみられない。また、色素沈着も生じない
  • (2)足白癬(角質増殖型)

    判断の目安
    • ・足底全体がびまん性に角化し、紅斑、落屑を伴う
  • (3)掌蹠膿疱症

    手掌、足底に2~4mm大の多数の小水疱と小膿疱が出現して痂皮化する。慢性に経過し、角化性の紅斑に新旧の小水疱と小膿疱が混在するようになる。

    判断の目安
    • ・小膿疱や小水疱が出没することと慢性の経過から鑑別できる
  • (4)異汗性湿疹

    局所多汗症に起因すると考えられる病態で、手掌、足底、指腹に1~2mm程度の小水疱が多発して、数週間で落屑することを繰り返し、しばしば紅斑を伴う。夏季や季節の変わり目に出現しやすい。

    判断の目安
    • ・小水疱が出没を繰り返すこと、色素沈着や爪甲の変化を伴わないことなどから鑑別できる
  • (5)乾癬

    手掌、足底に厚い鱗屑を付す紅斑角化性の病変を生じ、慢性の経過をとる。手掌、足底の一部に限局することも、全体に及ぶこともある。しばしば爪甲の変化(白濁、肥厚など)を伴う。

    判断の目安
    • ・通常、他の身体部分(とくに頭部、膝蓋部、肘部など)に銀白色の厚い鱗屑を付す紅斑性病変が多発性に認められる

写真は、厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群」より引用

休薬・再開の目安

手足症候群は、休薬により速やかに改善することが知られている。3)
以下に、手足症候群の重症度(Grade)に基づく休薬、中止、治療再開の方法の一例を示す。5)

休薬を考慮する目安 再開の目安
≧Grade2 ≦Grade1に回復

※薬剤ごとの詳細な休薬・減量の方法につきましては、各薬剤適正使用ガイド等をご確認ください。

休薬の際の留意事項

  • 手足症候群の確立された治療法・予防法はなく、症状が発現した場合の重篤化を防ぐために確実な方法は休薬である
  • 重症化するとQOLを著しく低下させるだけでなく、治療継続が困難となることがあり、早期に休薬をしたほうが回復も早く、最終的に化学療法を早く再開できる可能性がある
  • 1~2週間の経過で改善がない(Grade2が遷延する)場合は、休薬し、治療内容を見直すとともに、ステロイド外用剤の強化、皮膚科へのコンサルトを検討する

対処法

【薬物療法】

手足症候群の薬物療法は、下記を目的として行われる

①皮膚の角化改善・保湿
保湿剤、角化正常薬により手足を保護し、手足症候群の発症・重症化を予防する

②炎症の抑制
ピリピリ感などの知覚異常もしくは皮膚の皮剥けなどの初期の症状からステロイドを使用する

③痛みなどの症状改善
痛みに対しては消炎鎮痛剤、かゆみに対しては抗アレルギー剤などを使用する

【重症度に応じた薬物療法の方針】2)
予防 Grade1 Grade2 Grade3
保湿剤
角質正常薬(特にキナーゼ阻害薬投与時)
ステロイド外用剤
消炎鎮痛剤
【手足症候群に対する一般的な処方】3)
分類 薬剤名 使用方法
保湿剤 ヘパリン類似物質
(軟膏、クリーム、ローション)
1日2~3回 手足に塗布
ワセリン軟膏 1日2~3回 手足に塗布
ビタミンA・E軟膏 1日2~3回 手足に塗布
アズレン軟膏 1日2~3回 手足に塗布
角化正常薬 尿素クリーム 1日2~3回 手足に塗布
ステロイド外用剤 ジフルプレドナート軟膏0.05% 1日2~3回 紅斑・亀裂部位に塗布
(very strong)
クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05% 1日2~3回 紅斑・亀裂部位に塗布
(strongest)

注意) 薬剤の使用にあたっては、各製品添付文書をご確認ください

保湿剤、軟膏剤の使用について

  • 保湿剤はひび割れや痛みなどの症状がなくても毎日使用する
  • チクチク、ピリピリなどの知覚異常を感じたらステロイド外用剤を使用する
  • 保湿剤は全体に、ステロイド外用剤は症状や痛みのあるところに部分的に塗る
    ※ ただし、症状や痛みが手掌・足底全体にわたる場合は、ステロイド外用剤を全体に塗る
  • 人差し指の第1関節程度の量で、掌2枚分の面積に相当する

日常生活の注意点

  • 皮膚への刺激や長時間の圧迫は、手足症候群の発症や重症化の原因となるため避けるよう指導する
・・・保湿・・・
  • 保湿剤は1日2回以上塗布する
  • 手については、日中の手洗いで流れてしまうため頻回に保湿剤を塗布する
  • 手洗いや入浴の後は、すみやかに保湿剤を塗布する(10分以内)
  • 就寝時には保湿剤を塗布後、木綿の手袋・靴下を着用する
・・・刺激の回避・・・
  • 熱いお風呂やシャワーを避ける(40℃までを目安とする)
  • 長時間の入浴を避ける(10分程度とする)
  • 紫外線を避ける
・・・手の保護・・・
  • 木綿の手袋を着用する
  • 長時間の筆記、雑巾絞り、固い蓋の開け閉め、包丁仕事、土仕事など圧のかかる作業を控える
  • 水仕事をできるだけ避け、必要な場合は木綿の手袋の上からゴム手袋を着用する
  • 重い荷物を持たない
・・・足の保護・・・
  • 木綿の靴下を着用する
  • 室内ではスリッパを使用する
  • 小さめの靴や革靴、ハイヒール、サンダルなどを避け、足に合った履きやすい靴、軟らかい低反発の中敷きを使用する
  • 長時間の立ち仕事や歩行、ジョギングなどの負荷を避ける*
  • *患者さんの生活習慣を確認し、ウォーキングやジョギングの習慣がある患者さんには、毎日足の裏を観察して赤みが増したりや皮膚が厚くなってくるようであれば、ウォーキングやジョギングを休む必要があることを伝える

2019年12月更新



<参考資料>
1) 岡元るみ子 他 編,改訂版 がん化学療法副作用対策ハンドブック,羊土社,2016.
2) 田原信 編,フローチャートでわかるがん化学療法の副作用,南山堂,2015.
3) 厚生労働省,重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群,2019.
4) 鈴木賢一 他 編,がん薬物療法の支持療法マニュアル,南江堂,2013.
5) カペシタビン錠300mg「サワイ」適正使用ポケットガイド(2019年1月).

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