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医療・介護ニュース

医師の逆転有罪判決受け日医が抗議-再現性の乏しい「ずさんな検査」に強い危惧

2020年07月17日 12:45

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 日本医師会(日医)は、東京高裁が一審で無罪判決を受けた医師に対し、一審判決を破棄して懲役2年の実刑判決を13日に言い渡した控訴審判決について強く抗議した。東京都内の病院で全身麻酔による乳腺腫瘍の摘出手術を担当した医師が、女性患者にわいせつな行為をしたとして準強制わいせつ罪に問われているもの。15日の定例記者会見で経緯の説明に当たった今村聡副会長は、術後せん妄に関する理解が不十分であることや、判決に際して「再現性の乏しいずさんな検査」が行われ、その信用性が肯定されたことについて強い危惧を示した。【吉木ちひろ】

 会見の冒頭、中川俊男会長は控訴審判決について「体が震えるほどの怒りを覚えた。極めて遺憾」と断じた。

 日医が問題視しているのは、▽報道などによれば、せん妄の診断基準について、DSM-5(米国精神医学会の精神疾患診断分類)に当てはめずに、独自の基準でせん妄や幻覚の可能性を否定した医師の個人的見解が採用されている▽DNA鑑定等の検査が再現性の乏しいずさんな検査であるにもかかわらず、検査の信用性を肯定している判決の内容となっている-ことなどについて。科学捜査研究所による検査では、「データを鉛筆で書き、消しゴムで消す」「DNAの抽出液を廃棄する」「検量線等の検査データを廃棄する」などの方法が取られていたと指摘している。

 麻酔科医である今村副会長は、全身麻酔からの回復過程で生じるせん妄や幻覚は、全国の医療機関で起こる可能性があることも指摘し、「もし、このような判決が確定すれば、全身麻酔下での手術を安心して実施するのが困難となり、医療機関の運営、勤務医の就労環境、患者の健康にも悪影響を及ぼすことになる」と危機感を示した。

 日医は、2019年2月20日の一審の無罪判決についても、「判決は妥当であり、検察は控訴を控えるべき」などと主張していた。

出典:医療介護CBニュース