閉じる

医療・介護ニュース

コロナ対応で大学病院は年約5千億円減収、補填を要請-全国医学部長病院長会議・日看協など

2020年05月19日 11:35

印刷

 全国医学部長病院長会議や日本看護協会などは18日、全国の大学病院が新型コロナウイルス感染症患者に対応すれば、病棟の閉鎖や手術の制限、外来抑制などで年間約5,000億円の減収が見込まれるため、その分を国による支援で補填するよう安倍晋三首相に要請した。【松村秀士】

 安倍首相に要請したのは、全国医学部長病院長会議と、その「新型コロナウイルス感染症に関わる課題対応委員会」、日看協、国立大学協会、東京大学の関係者。

 同会議では、全国の各大学病院が感染患者の診療などを行った場合、2020年度は前年度と比べて総額約4,864億円の減収になると予測している。これは、現在の感染拡大が収束した後も数回にわたって感染が広がることを想定した試算。

 減収の要因は、入院では、▽感染患者の専用病床の確保に伴う病床の閉鎖や救急患者の受け入れ抑制▽院内感染を防ぐための稼働病床数の縮小▽他の疾患での予定入院・手術の制限や延期-など。

 外来では、▽感染の疑いのある患者に人員を充てることに伴う一般・救急診療への応需率の低下▽不要不急の外来患者の受け入れ抑制▽感染への不安による患者の受診控え▽健診センターの一時的な閉鎖-などを減収の要因に挙げている。

 また、関連のコストとして、必要な医療用材料や患者を受け入れるための施設の改修工事費、職員の超過勤務手当・危険手当、PCR検査の実施費などがかかる。

 特にPCR検査の実施については、DPC病院は包括で算定され、陽性結果が出なければ新たな経費となることから、DPC病院の大学病院にとって経営負担になっていると説明。大学病院がPCR検査を実施するのにかかる費用(年間で推計237億円)は現状、「持ち出し」の状態だという。

■報酬倍増でも減収分を賄えない

 18日に開かれた記者会見で、国立大学協会の永田恭介会長は、「今のままでは財政状況の悪い大学は7月に、良い大学でも9月から資金ショートが始まる」と窮状を訴えた。

 日看協の福井トシ子会長は、病院で感染患者を1人受け入れることで他の患者用のベッドが約10床減少するとの試算に触れた上で、「新型コロナウイルス感染症の(重症な)患者対応への診療報酬が2倍になっても、病床減少による減収分を賄えない」とし、国による支援の必要性を強調した。

 要請に対して安倍首相は、新型コロナウイルス感染症への対応に伴う収入減などで大学病院が経営破綻することがあってはならないとし、「大学病院を守ることを約束する」と明言したという。

出典:医療介護CBニュース