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医療・介護ニュース

手術減の医療機関へ損失補填を-全国医学部長病院長会議が新型コロナ対応で声明

2020年04月21日 18:15

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 全国医学部長病院長会議は20日、新型コロナウイルス感染症へ対応する医療機関への支援を求める声明を発表した。集中治療室(ICU)を確保するために手術制限を行っている医療機関などに対する損失の補填や、院内感染を防ぐための無症候の患者へのPCR検査の必要性を関係府省に訴える。都道府県には、地域の診療体制や詳細な感染状況などの情報開示を求める。【吉木ちひろ】

 全国医学部長病院長会議に先立ち、京都府立医科大附属病院と京都大医学部附属病院は15日、▽無症候の患者に対する新型コロナウイルスのPCR検査を保険適用(または公費での施行を可能)とすること▽PCR検査に必要な個人防護具と試薬の確保-を求める共同声明を発表していた。

 これを受けて全国医学部長病院長会議は、20日に開いた記者会見で、無症候の患者に対するPCR検査の保険適用や公費での実施に必要な金額をおよそ210億円だとして、改めて国に求める考えを示した。これまでに大学病院が持ち出しなどで実施している検査の実績から、1回当たりの検査費用を1万5,000円、全国の入院患者数を140万人分として試算した。

 また、2大学の要望に加え、▽診療所を含む全ての医療機関に対する、新型コロナウイルス感染症対策のために業務内容を変更した場合(集中治療室確保のための手術件数の制限、外来診療や侵襲的検査の制限など)の損失補填として、概算で年間2,000億円を手当てする▽各都道府県が持つ感染者に関する情報や診療体制(人工呼吸器の使用者や隔離患者などの内訳など)の情報を大学病院や医師会に開示する▽臨床研修医を振り分けるなど、人材配置に関する現場の柔軟な判断を認める-ことを新たに求める 。

 会見では、嘉山孝正・専門委員長会委員長(山形大名誉教授)が、直接的に新型コロナウイルス感染症の治療に当たらない部門に対しても、人材などの柔軟な運用や補填を認めないと「コロナに携わる人材も確保できない」などと訴えた。

 東京医科歯科大の大川淳・医療担当理事は、新型コロナウイルス感染症の患者の診療に当たるため、「2つ半の病棟の通常業務を完全にやめて、そこに本来であれば入るべき患者さんをお断りしている」と同大の対応を紹介した。これに加えてICUを全て新型コロナ対応に充てていること、一般病床からも医師や看護師を対応に送っていることなどから稼働額が下がり、月間で7億-8億円の減収を見込んでいるという。この試算には、18日付で適用が開始された中等症や重症患者を受け入れた診療報酬上の対応は含まない。

出典:医療介護CBニュース