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医療・介護ニュース

下肢閉塞性動脈疾患は冠動脈疾患より死亡リスク高い-医学的・社会的に「弱い」状況が影響 大阪大大学院など

2024年05月24日 18:00

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 血行再建術が必要となる下肢閉塞性動脈疾患を持つ患者のほうが、冠動脈疾患の患者に比べ死亡率が高いとする研究成果を大阪大大学院医学系研究科や小倉記念病院、大阪警察病院らの研究グループが発表した。冠動脈疾患の患者に比べ他の病気を多く合併していることや栄養不良など社会的な状況も影響しているとみる。【栗原浩太】

 研究グループは、全国多機関共同研究に参加した、動脈硬化による下肢閉塞性動脈疾患や冠動脈疾患に対して血行再建術を受けた患者1万754人のデータを分析し、患者の死亡リスクを調査。下肢閉塞性動脈疾患は、冠動脈疾患と比べて死亡率が2.91倍に。下肢閉塞性動脈疾患は冠動脈疾患の患者よりも年齢が高く、他の心血管疾患を合わせ持つ人が多い傾向が認められたが、それらを調整しても両者の死亡率の差は29%縮まっただけで、下肢閉塞性動脈疾患の死亡率は冠動脈疾患の約2倍だった。

 調査結果を分析すると、下肢閉塞性動脈疾患の患者は、合併する慢性疾患の数が多い一方、心臓病や血管病の発症・悪化を抑える心血管保護薬の使用率が低い傾向にあったことが判明。それらの違いも調整すると、下肢閉塞性動脈疾患と冠動脈疾患の死亡率の差は73%縮まった。心血管保護薬の使用率が低い理由について、研究グループは現時点では分からないとしている。さらに、栄養不良やフレイル、要介護状態、介護施設入所中、生活保護受給中の状態などを調べると、下肢閉塞性動脈疾患の患者のほうが相対的に高いことも分かった。

 この2つの点を調整すると両者の死亡率の差は86%縮まり、明確な差異ではなくなったという。下肢閉塞性動脈疾患の死亡率の高さについて、研究グループは▽合併する慢性疾患の数が多い▽心血管保護薬の使用率が低い▽医学的・社会的に「弱い」状況に立たされている人が多い-ことなどが大きく関係しているとしている。
 この研究成果は、欧州科学誌「European Heart Journal」でオンライン公開された。

出典:医療介護CBニュース