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医療・介護ニュース

精神障害の受刑者を医療・福祉と連携し、更生へ-札幌刑務所でモデル事業始まる、法務省

2024年03月18日 18:25

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 法務省は15日、精神障害のある受刑者に対する処遇・社会復帰支援のモデル事業を札幌刑務所で開始した。受刑者の更生・社会復帰を促す柔軟な処遇を可能にする「拘禁刑」が2025年6月に始まるのを見据えた取り組み。【渕本稔】

 22年に精神障害の診断を受けた新受刑者2,435人(新受刑者総数の約17%)のうち、入所回数が2回以上は66.9%に上る。精神障害のある受刑者の再犯を防ぎ、出所後に地域社会で安定した生活を送れるようにするためには、外部専門機関や専門職のノウハウに基づいた福祉的支援の必要性が指摘されてきた。

 現在、札幌刑務所では北海道内の刑事施設から候補者(約20人)の選定を進めており、薬物療法や精神療法、精神科リハビリテーションといった精神科治療とともに、▽栄養指導や体操を含む身体機能向上作業▽障害の特性に応じた刑務作業(一般就労または福祉的就労を目指す2コース)▽自立した日常生活に役立つ改善指導-を行う。

 刑務官に加え、医師や看護師、作業療法士、福祉専門官などの専門職と保健医療・福祉関係などの外部専門機関が協力し、多職種・多機関連携をしながら適切な治療と障害特性を踏まえたチーム処遇を行う。

 さらに、受けられる保健医療・福祉サービスを当人が十分に理解していないケースも多いことから、精神障害者保健福祉手帳の取得に向けた調整や更生保護官署、地域生活定着支援センターなどとも連携し、社会復帰に向けた支援も行う。

 法務省の担当者は、今回のモデル事業の最終目標は再犯防止だとした上で、「障害によって受刑者が抱える生きづらさや苦悩に寄り添いながら、多職種・多機関連携によるチーム処遇を行うことで、出所によって支援が途切れるのではなく、社会の中で継続していくような形を作り上げていきたい」と話している。

 モデル事業の実施期間に定めはないが、事業の効果検証期間として約5年を設け、得られた知見は拘禁刑導入後の受刑者処遇にも生かす見込みである。

出典:医療介護CBニュース