2023年05月26日 17:35
医療従事者がスマートフォンを使って電子カルテに音声入力を行ったところ、1人当たりの記録業務が1カ月で約7.8時間削減される見込みだとする実証実験の検証結果を、奈良県とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が発表した。スマートフォンを貸与し利活用することで、医師らの「働き方改革」に寄与することが確認できたとしている。【松村秀士】
この実証実験は、休日労働を含む医師の時間外労働の上限が2024年4月以降、罰則付きで規制されるのを見据えたもので、奈良県とNTT Comが連携して23年1-3月に実施した。
具体的には、奈良県総合リハビリテーションセンターの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(計約40人)に貸与していたPHSに代わってスマートフォンを貸与した上で、「AI音声認識ワークシェアリング」を活用した電子カルテ入力を導入。記録業務の削減効果を検証した。
利用者の位置情報を取得して分析したところ、1日の勤務時間のうち、多い人で約3割を電子カルテの入力業務が占めていることが分かった。実験後に行ったアンケートでは、AI音声認識ワークシェアリングの利用頻度が高い利用者の全員から、「記録業務負荷が軽減された」との回答を得た。
利用者の勤務データや過去の導入事例を踏まえ、奈良県などは、本格的に導入した場合には同センターでの利用者1人当たりの記録業務について月7.8時間程度の削減効果が出ると推測している。
■スマホでの業務フロー見直し、「働き方改革の一助に」
実証実験ではまた、携帯型のビーコンを用いて位置情報を取得し、同センターと市立奈良病院の職員(計約80人)の導線や所在場所の滞在時間を把握・分析した。
その結果、医療行為を行っている時間を除いた勤務時間の中で、移動時間が2割近くを占めており、特にフロア間の移動が非常に多いことが分かった。
奈良県などは、「チャットツールによるコミュニケーション改革も移動時間の削減への効果が期待できることから、スマートフォンを活用した業務フローの見直しが働き方改革の一助となると想定される」と指摘している。
このほか、同センターに議事録作成支援ツールを試験的に導入したところ、利用者へのアンケートでは「負担軽減」「時間外勤務削減」「記載内容漏れ・忘れ抑止」「記載内容の質向上」「記載情報の紛失リスク低減」「医療提供サービスの質向上」の6つの観点で高い評価結果を得られたという。