2023年05月22日 19:15
過疎による撤退などで公共交通が不十分となった地域での移動手段を確保するため、国土交通省は22日、タクシー事業者や自家用有償旅客運送などの制度を緩和する改善案を公表した。法人タクシーが営業所ごとに保有する車両台数の引き下げを行い新規参入がしやすいようにしたり、介護NPOなどが行っている自家用有償旅客運送の対価について、人件費など必要な費用を賄えるよう目安を見直すことなどを盛り込んだ。【大月えり奈】
国交省は、過疎や高齢化に加え、新型コロナでの需要減による公共交通機関の撤退などでいわゆる「交通空白地」が生じている問題に対応するため、持続可能で利便性の高い交通サービスの環境作りを進めようと有識者らによる検討会で協議を重ねてきた。
今回の改善案では、交通不便地域では高齢化や免許返納の動きによって住民の移動手段への不安がある一方で、過疎などでタクシー事業所では運転手が減少するなど交通事業の担い手不足が深刻化し、またバス・タクシーを補完する自家用有償旅客運送についても非営利という性格上サービスの継続に課題があるとしている。
そのため、改善策として、タクシーについては、▽法人営業所ごとに必要となる最低車両台数が現在5台となっているが、事業の維持や新規参入を促すため、地方運輸局長らが認めた場合には引き下げの緩和を行う▽現在人口が概ね30万人以上の地域で許可されている個人タクシーについて、Uターンなどを想定して30万人未満の地域でも一定の要件を満たしていることを条件に認める-ことなどを挙げている。
また、介護NPOや市町村などが自家用車を使って有償で行う自家用有償旅客運送を促進させるため、運送の対価の目安を見直す。現在は道路運送法によって対価は実費の範囲内。その目安は、当該地域でのタクシーの上限運賃の概ね2分の1の範囲内とされているが、安全確保のために必要な費用(自動車保険料等)や運転手の人件費を賄うことができないなどの問題があるため適正化するという。
国交省では今後、この改善案に基づき通知などを行い、夏の実施を目指す。