閉じる

医療・介護ニュース

白血病引き起こすタンパク質の機能の一端解明-薬剤効果も、国立がん研究センターが研究成果発表

2023年04月27日 19:55

印刷

 国立研究開発法人国立がん研究センターは27日、鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室(横山明彦チームリーダー)、東京大大学院新領域創成科学研究科(金井昭教特任准教授)などの研究グループが、悪性度の高い白血病を引き起こすAF10融合タンパク質が働くメカニズムの一端を解明したと発表した。【新井哉】

 CALM-AF10に代表されるAF10融合タンパク質は、他のタンパク質と結び付いて複合体を形成し、発がんドライバー(がん発症に関与する変異)として機能する。しかし、AF10融合タンパク質が白血病の発症にどのように寄与するのかは分かっていなかった。

 研究グループは、CALM-AF10融合遺伝子の構造を改変した人工遺伝子を多数作製し、どの構造が白血病化に必須であるかを探索した。その結果、CALM-AF10は、ENLというタンパク質の中に含まれるYEATSドメインという構造を介して白血病を引き起こしていることを見い出した。

 ENLはYEATSドメインを介してMOZというタンパク質と結び付いている。そこで、MOZタンパク質の働きを弱める薬剤をCALM-AF10白血病細胞に作用させると、がん細胞が非常に効率よく無害な細胞へと変化した。マウスに白血病細胞を移植し、白血病を発症させる実験では、この薬剤によって効果的に白血病細胞が減少することが示された。

 これらの結果から、CALM-AF10はENLやMOZと結びつくことで発がんドライバーとして機能するため、MOZの働きを弱める薬剤によって治療できることが分かったという。この研究の成果は、国際学術誌「Nature Communications」に掲載された。

出典:医療介護CBニュース