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医療・介護ニュース

「胸腔ドレーンの大気への開放」報告書で注意喚起-医療機能評価機構、空気逆流し換気妨げも

2022年06月29日 18:05

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 日本医療機能評価機構が27日に公表した医療事故情報収集等事業第69回報告書(2022年1-3月)では、「胸腔ドレーンの大気への開放」を取り上げている。胸腔ドレーンバッグの水封部に滅菌蒸留水を入れないまま接続すると、陰圧の胸腔に空気が逆流し、換気が妨げられるため、注意を促している。【新井哉】

 医療機能評価機構は、第50回報告書(17年9月公表)や医療安全情報(No.133)で、胸腔ドレーンバッグの誤った使用で胸腔を大気に開放した事例を取り上げ、注意喚起を行ってきたが、今回の分析対象期間(22年1-3月)に類似の事例が1件報告されたため、17年11月以降に報告された再発・類似事例をまとめた。

 再発・類似事例は9件あり、「経験年数が1-3年の看護師が多い」と指摘。患者の状態については、いずれも排液を目的にドレーンが挿入されていた。発生場面については、「胸腔ドレーンの挿入時とバッグ交換時のいずれの場面でも発生していた」と指摘している。

 水封しなかった要因も整理している。医師と看護師の複数の事例で共通して挙げられた要因に「胸腔ドレーンバッグの構造を理解していなかった」があったという。患者への影響(複数記載)については、気胸が8件で最も多く、以下は、SpO2低下(5件)、呼吸困難感(4件)、皮下気腫(3件)などの順だった。

 こうした状況などを踏まえ、報告書では、「安全に胸腔ドレナージを行うためには、胸腔の解剖生理や、胸腔ドレーンバッグの仕組みを理解することが重要」と記載。また、看護師が初めて胸腔ドレーンバッグを取り扱った事例が報告されているため、「周囲に初めて扱うことを伝えることや、リーダー看護師は初めてではないかを確認するなど、看護師業務の経験状況を把握し、必要に応じてフォローする体制が求められる」としている。

出典:医療介護CBニュース