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医療・介護ニュース

機能強化加算、要件見直しで対象患者の限定を提言-健保連、20年度改定に向けて

2019年08月23日 19:20

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 健康保険組合連合会(健保連)の幸野庄司理事は23日に記者会見を開き、2018年度診療報酬改定で新設された「機能強化加算」の算定要件の見直しなどを求める提言を厚生労働省に行ったことを明らかにした。健保連では、施設基準を満たしていれば全ての初診の患者に一律で80点を算定できる同加算を問題視。本来の対象者とは異なる患者への算定が大半となっているとし、対象者を限定するような要件の見直しを求めている。【松村秀士】

 健保連は、121健保組合の協力を得て16年10月から18年9月までの診療分のDPCレセプトなど計2億7538万件のデータを基に分析し、20年度改定に向けた課題を洗い出した。

 その結果、機能強化加算を算定された患者の約6割が1回のみの受診で再診がなかったほか、同加算の届出医療機関(内科標榜)を複数受診した患者のうち、約6割が2カ所以上の医療機関から算定されていた。また、算定の有無で傷病の構成がほぼ同じで、算定のあり・なしともレセプト出現率は急性気管支炎が全体の約20%と最多となり、継続的な管理が必要な高血圧症や糖尿病、脂質異常症はそれぞれ5%にも満たなかった。

 こうした分析結果を踏まえ、健保連では同加算は本来、初診の患者の中でもより継続的な管理が必要な疾患を有する人に算定することが想定されているにもかかわらず、複数の医療機関から算定されている患者が一定数いると指摘。また、同加算を算定された患者と、そうでない患者との間で加算に見合う効果が見られないとした。

 その上で、地域包括診療加算などの届け出といった基準を満たしていば初診の患者に同加算が一律に算定できることから、想定される本来の対象者とは異なる患者への算定が大半となっており、要件などの見直しが急務だと強調している。

 具体的な見直し内容は、対象者を「生活習慣病等の慢性疾患を有する継続的な管理が必要な患者」に限定すること。また、慢性疾患の指導に関する適切な研修を修了した医師を配置していることを施設基準として設けることも提言している。

 会見で幸野理事は、19日に厚労省へ提言した上で、中央社会保険医療協議会で議論の俎上に載せるよう求めたことを明らかにした。

 健保連は、健保組合全体の同加算の算定金額が年間50億円程度となり、国民全体では年間約200億円に上ると試算している。

■診療報酬制度に生活習慣病薬のフォーミュラリー導入を

 健保連はまた、薬物療法の質の向上や標準化、経済的な処方の促進などを目的に米国などで導入されているフォーミュラリーの事例などを参考とし、日本でも診療報酬制度に生活習慣病治療薬のフォーミュラリーの策定を盛り込むべきだと主張。また、関係学会などに対して薬剤の費用を加味した診療ガイドラインの作成を促すといった環境の整備も求めている。

 一般的にフォーミュラリーは、医学的な妥当性や経済性などを踏まえてつくる医薬品の使用指針。これに基づいて地域全体や院内で方針を決めることで、薬剤のコスト削減などの効果が見込める。

 診療報酬制度に組み込むことを想定し、健保連が降圧薬と脂質異常症治療薬、血糖降下薬の3種類のフォーミュラリー案を策定してその影響額を試算したところ、薬剤費の削減額は全国推計で年間約3100億円の見込みだという。

 このほか健保連は、▽繰り返し利用可能な処方箋(リフィル処方)の診療報酬制度への導入▽調剤報酬での調剤基本料や薬剤服用歴管理指導料の算定要件の見直し▽花粉症治療薬の保険適用からの除外―も提言している。

出典:医療介護CBニュース