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医療・介護ニュース

日医会長、「躊躇なくプラス改定」とすべき-財政審の社会保障の議論は容認できない

2021年11月17日 21:40

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 日本医師会の中川俊男会長は17日の記者会見で、財政制度等審議会・財政制度分科会における8日の社会保障の議論について、所管である財政の問題を超えて、細かく医療分野の各論に踏み込んでくるのは省としての守備範囲を超えており、「容認できない」と断じた。さらに、「なんちゃって急性期病床」などと揶揄するかのような呼び方は、医療機関に対しても、入院して治療を受けている患者に対しても、極めて失礼などと発言した。【齋藤栄子】

 中川会長は、財政面から個々の問題点を指摘するのは財務省の役割だが、低密度で対応できる医療しか行わない、いわゆる「なんちゃって急性期病床」が急増したため診療報酬を見直すよう求めていることについても、中央社会保険医療協議会で長年、真摯に議論を積み重ねて現在に至るものであり、財務省の主張は診療報酬の各論に踏み込み過ぎだとした。 また財務省は、「躊躇なくマイナス改定」をすべきだと資料に示しているが、コロナで医療現場は著しく疲弊しており、これをなんとか立て直すためにも「躊躇なくプラス改定」とすべきで、日医はこのメッセージをしっかりと発信していきたいとの考えを強調した。財務省は、2020年度、21年度は収入の減少を補う以上の補助金を投入しており、医療機関の経営実態は近年にないほど好調だとしているが、補助金がなければ赤字の状態であり、補助金頼みの経営は非常に不安定で、本来の診療報酬で経営が成り立つようにしなくてはならないと説明した。 さらに、財政審が示した個別の課題から、▽医療法人の事業報告書の電子開示▽かかりつけ医機能▽調剤報酬▽薬価改定-の4つの論点で特に問題があると、松本吉郎常任理事から説明があった。医療法人の事業報告書の電子開示では、全ての医療法人が提出する事業報告書を、アップロードで届出・公表する全国的な電子開示システムを整える方針について、将来、医療経済実態調査に取って代わる提案とも読み取れるとし、個別の医療機関の詳細な経営データが公開されるため、本来の利用の目的とは全く違うことに利用されれば、行き過ぎた政策の弊害が危惧されるなどとした。
松本常任理事 会見の冒頭で中川会長は、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が12日に公表した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」については「懸念される第6波への万全の備えとして、政府の本気度を示している」と話し、10月公表の骨子にあった幽霊病床という言葉が削除されたことについては、用いないよう強く要請した結果、削除されたと説明。さらに、「コロナ医療と一般医療」との表現も、「コロナ医療とコロナ以外の通常医療」に改められたと説明した。

出典:医療介護CBニュース