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トピックス

2022年度診療報酬改定特別号

現状維持では厳しい改定に 医療資源の集約化と連携強化の具体化

2022年3月4日、2022年度診療報酬改定(以下、本改定)が告示されました。本改定はCOVID-19感染拡大が収束を見せない中で行われる初めての診療報酬改定ということで注目を集めていましたが、先立つこと2021年4月には介護報酬改定が行われています。この介護報酬改定もCOVID-19感染拡大の中で行われたものとして注目を集めていましたが、本改定の先行事例として改めて確認をしてみると、非常に似たポイントがあることに気付きます。それは、現状維持の体制のままでは「減収となる可能性がある」という点です。例えば、地域包括ケア病棟入院料には地域との関わりを拡充していかなければ多くの減算を受けることになり、後発医薬品使用体制加算では点数は据え置きながら、数量割合が引き上げられています。

一方で、従来の取り組みにおいて人員配置や設備投資を行うものに対しては、さらなる評価の拡充や、新設されたことがポイントです。外来化学療法加算のさらなる上位の評価ともいえる外来腫瘍化学療法診療料や、特定集中治療室にさらなる手厚い人員を配置し、教育研修体制を整えることで評価される重症患者対応体制強化加算などがそれにあたります。

COVID-19感染拡大が続く中においても、医療提供体制の質向上に向けた環境整備を後押ししているともいえますが、注意をしなければならないのは、地域医療の現状をしっかりと把握した上での対応を慎重に行うことでしょう。後戻りをすることは難しいこと、そして一度創り上げたものを見直すことは新たなコストが発生することを理解した上で、自院だけではなく、地域医療構想調整会議の場などを利用して、地域における役割分担について確認しておくことが今後さらに重要になってきます。

(参考資料)入院から在宅まで切れ目のない医療を提供するための取り組み(連携編)

(参考資料)入院から在宅まで切れ目のない医療を提供するための取り組み(連携編)

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

病院/急性期
地域の最後の砦 高度急性期入院医療に手厚い評価

本改定において、最も注目を集めたのが重症度、医療・看護必要度評価の見直しでした。A項目から心電図モニターの管理が除外されたということが大きな衝撃となった医療機関も多かったのではないでしょうか。その結果もあってか、重症者の受け入れ割合についてはやや緩和されたものとなりましたが、急性期一般入院料1(旧・7:1入院基本料)については、現状維持の割合となりました。急性期一般入院料1については、急性期充実体制加算の新設などもあり、今後高度急性期の道を目指すのか否かを迫る内容にも見えます。自院の状況だけではなく、地域の医療機関の現況を確認することで今後の在り方を考えていく必要があるでしょう。確かに高度急性期入院医療に対してはかなり手厚い評価が多く見受けられますが、実際に重症な患者を受け入れて初めて診療報酬は得られます。人員獲得と設備投資は慎重に行う必要がありますが、とりわけ設備投資は、後戻りができないことが多くあるので注意が必要です。

高度急性期入院医療で注目される項目の一つに急性期充実体制加算があげられます。これは、急性期一般入院医療1の届出医療機関であり、全身麻酔による手術2,000件/年以上(緊急手術 350件/年以上)、又は300床未満病院の場合は 6.5件/年/床以上(緊急手術 1.15 件/年以上)といった実績の他、紹介受診重点医療機関か紹介割合50%以上かつ逆紹介割合30‰(パーミル単位)以上であることが求められます。なお、総合入院体制加算との併算定は不可となっていますが、総合入院体制加算と比較すると全身麻酔手術の実績以外の手術等の実績はほぼ同じといえるものの、診療報酬点数が大きく異なります(図表1)。高度急性期医療の提供や院内迅速対応チームの設置(院内心停止を減らす取り組みとして)など、設備と人件費がより必要とされるものが急性期充実体制加算にあることがその理由と考えられます。COVID-19感染拡大で露呈した高度急性期医療の体制面の脆弱さをカバーし、いつ訪れるかわからない新興感染症への備えとしての意味合いもあることが、感染対策向上加算1の届出が要件となっていることからも見てとれます。今後、急性期充実体制加算の届出を行う医療機関には、地域の最後の砦として、また感染対策を通じた地域医療の質向上に貢献していく責務が課せられることになるでしょう。

(図表1)高度かつ専門的な急性期医療の提供体制に係る評価の新設

(図表1)高度かつ専門的な急性期医療の提供体制に係る評価の新設

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

その他、特定集中治療室にさらなる手厚い人員配置を評価する重症患者対応体制強化加算の新設もポイントです(図表2)。文字通り手厚い配置を評価するものですが、ここで着目しておきたいのは「地域の医療機関等が主催する集中治療を必要とする患者の看護に関する研修に講師として参加するなど、地域における集中治療の質の向上を目的として、地域の医療機関等と協働することが望ましい」という施設基準が盛り込まれたことです。本改定では、感染対策向上加算や人工腎臓の導入期加算などで地域での医療機関との研修を行うといった文言が目立ちます。特定の領域における地域のオピニオンリーダーとなる医療機関には、地域全体の医療の質向上に向けた取り組みも視野に入れていかなければならないことと、その責任も診療報酬の評価の一部となっていることを意識しておく必要があるでしょう。

(図表2)特定集中治療室等における重症患者対応体制の強化に係る評価

(図表2)特定集中治療室等における重症患者対応体制の強化に係る評価

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

そして高度急性期入院医療では、医師の負担軽減の一環として、薬剤師と管理栄養士による専門性を発揮したチーム医療が評価されました。近年、その評価が高まる管理栄養士の活躍推進として、本改定では周術期栄養管理実施加算が新設されました(図表3)。ただし、総合入院体制加算もしくは急性期充実体制加算の届出のある医療機関に限定され、専任で常勤の管理栄養士の配置が必要であり、早期栄養介入管理加算との併算定は不可となります。管理栄養士による介入の評価は、早期栄養介入管理加算や回復期リハビリテーション病棟入院料等でもその実績が評価され、診療報酬改定の都度拡充しています。本改定の結果如何では、2024年度診療報酬・介護報酬同時改定において、医療と介護の連携のキーパーソンとしてさらに脚光が集まることが期待されます。

(図表3)周術期の栄養管理の推進

(図表3)周術期の栄養管理の推進

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

DPC/PDPSの見直しの焦点

2021年6月に公表された骨太方針2021では、急性期入院医療の包括評価の在り方の見直しについて言及されましたが、本改定ではその見直しの方針が明らかになりました(図表4)。他院からの転院と自院への直接入院で差を設ける診断群分類が明らかになっていますが、急性心筋梗塞や狭心症、慢性虚血性心疾患、心不全、股関節・大腿骨近位の骨折がその対象となりました。また、点数設定方式Aの入院期間Iを高く設定し、入院期間Ⅱ・Ⅲを引き下げることになり(SKIM2022vol.1 図表3参照)、点数設定方式Aの72%がその対象になります。

標準的医療サービスの推進は、DPC対象病院の拡大と共に精緻なデータが集まることで、実態に合わせた内容へと変化してきました。2023年10月からは、いよいよ外来診療においてもデータ提出加算がスタートします。いずれは外来診療の包括評価も視野に入ってくることが想定されます。

(図表4)DPC算定ルールの見直し

(図表4)DPC算定ルールの見直し

出典:筆者作成

新たな事故対策、サイバーセキュリティ対策への対応が求められる

診療録管理体制加算では、許可病床400床以上の病院に対して、医療情報システム安全管理責任者の配置及び院内研修の実施(情報セキュリティに関する内容を少なくとも年1回程度)を要件に加えるとともに、非常時に備えた医療情報システムのバックアップ体制を確保することが望ましいとされ、毎年7月の定例報告を求める―との文言を加えています。これは2024年度改定では要件化される可能性が高いものと考えておくべきでしょう。

また、許可病床400床以上の病院は義務化される文言がありますが、「医療情報化支援基金」の活用で400床未満の中小規模病院に対して標準規格準拠の電子カルテの導入が進むことで、義務化の対象も広げられることが予想されます。これからの導入、更新においてはサイバーセキュリティ対策としての安全管理責任者の配置と院内研修は同時に行っていくことがポイントになります。「診療報酬改定への対応のため」ということだけではなく、患者情報を預かり、地域で情報共有するための対応整備が進められています。

後発医薬品の使用促進は数量割合を高めて現状維持

現状維持では減収になりかねない項目として、本改定では後発医薬品の使用促進がその代表的なものとして挙げられます。これまでは数量割合70%以上からが加算の対象となっていましたが、本改定からは後発医薬品使用体制加算と外来後発医薬品使用体制加算では点数は据え置きのまま数量割合を一律に5%引き上げ、後発医薬品調剤体制加算では点数引き上げの一方で、数量割合を一律に5%引き上げとなりました。とりわけ病院と診療所においては厳しい変更です。

そこで、入院におけるバイオシミラーの導入促進などを積極的に考えていくことが必要となるでしょう。本改定では見送られたフォーミュラリですが、バイオシミラーを含めた後発医薬品の積極的導入と活用を推進していく上では、策定に取り組むことは重要だといえます。今後フォーミュラリ作成のガイドラインも公表される予定があることから、先駆的に取り組む医療機関の事例をもとに、その対応に備えておくことも検討に値するといえるでしょう。なお、バイオシミラーについては、2020年度診療報酬改定で新設されたバイオ後続品導入初期加算の対象が、外来化学療法及び外来腫瘍化学療法診療料を実施している患者への導入も評価の対象となりました。またこの外来腫瘍化学療法診療料は、従来の外来化学療法加算の対象患者で抗悪性腫瘍剤を注射する患者の評価の基準を引き上げた新項目です(図表5)。外来がん化学療法も同様にさらなる体制の強化が必要とされます。

(図表5)悪性腫瘍の治療における安心・安全な外来化学療法の評価の新設

(図表5)悪性腫瘍の治療における安心・安全な外来化学療法の評価の新設

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

病院/回復期・慢性期
地域の共有財産としての「地域包括ケア」病棟

重症度、医療・看護必要度の見直しを中心に、近年の急性期入院では自院でコントロール可能な人員配置や平均在院日数だけではなく、「実際に重症者をどれだけ受け入れているか」といった自院だけではコントロールが困難な状況があり、地域包括ケア病棟への転換などが進んできました。そのため、地域包括ケア病棟は自院内での転棟による病床稼働率の確保・向上という取り組みが行われてきましたが、本改定では、改めて「地域包括ケア」という名称の意味に立ち返る内容となりました。

地域包括ケア病棟の見直しでは、減算規定が多く設けられたのが特徴です(SKIM2022 vol.2 図表3参照)。量的な拡大を続けてきたことから、次はその質を高めることで、ボリュームのある地域包括ケア病棟を中心に、入院と在宅の繋ぎ手として、地域住民にとっての身近な救急入院・レスパイト入院先としての機能を発揮し、地域包括ケアシステムを支える病棟となることへの期待が詰め込まれています。療養病床による地域包括ケア病棟も同様で、とりわけ在宅や施設からの受け入れの強化と実績が求められています(図表6)。

(図表6)療養病床地域包括ケア病棟の場合

(図表6)療養病床地域包括ケア病棟の場合

出典:筆者作成

今後は、地域の実状にもよりますが、200床未満の病院であれば地域包括診療料の算定も見据えて、地域のかかりつけ医との二人主治医制などによるバックアップや、自院からの訪問看護の実施などを積極的に展開していくことがより求められてくることになるでしょう。実際に、本改定では外来版の退院時共同指導料となる外来在宅共同指導料(図表7)が新設され、地域包括ケア病棟における在宅医療の実績の一つとしてカウントされることになりました。地域医療への貢献こそが地域包括ケア病棟としての経営存続に大きく関わることになるでしょう。

(図表7)外来医療を担う医師と在宅医療を担う医師が共同して行う指導の評価

(図表7)外来医療を担う医師と在宅医療を担う医師が共同して行う指導の評価

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

リハビリテーションの質向上が引き続き求められる

回復期リハビリテーション病棟入院料では、ここ数年はFIMの評価の見直しなどを通じたアウトカムベースの診療報酬の見直しが行われてきましたが、本改定では「第三者評価の受審が望ましい」などといった新たな視点での見直しがポイントとなっています。2020年に策定された循環器病対策推進基本計画の影響もあってか、「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が追加されました(図表8)が、心大血管疾患リハビリテーション料の届出が必要となっていますので注意が必要です。さらに、特定機能病院における回復期リハビリテーション病棟入院料も正式に可能となっていることもあり、より専門性の高いリハビリテーションを評価する傾向となっていることが分かります。

(図表8)回復期リハビリテーション病棟入院料に係る見直し

(図表8)回復期リハビリテーション病棟入院料に係る見直し

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

地域包括ケア病棟と同じく回復期の領域になる回復期リハビリテーション病棟ですが、地域包括ケア病棟がより在宅や介護施設に近づく一方で、回復期リハビリテーション病棟はより急性期に近づいている印象です。

慢性期入院医療に求められる適正化の流れ

従来通りであれば2022年3月末で経過措置が終了となる経過措置型療養病棟の扱いが焦点となっていましたが、経過措置期間を2年延長することで決着となりました。ただし、診療報酬は従来よりもさらに減額され75%の評価となります。リハビリテーションを行う患者が多いことからFIMの測定が求められる結果となりました(図表9)。

(図表9)療養病棟入院基本料(注11に規定する経過措置)の評価の見直し

(図表9)療養病棟入院基本料(注11に規定する経過措置)の評価の見直し

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

また、医療区分3にある中心静脈栄養について、2020年度診療報酬改定でもテコ入れはあったものの、思うように中心静脈栄養の患者が減少していない実態を踏まえて、摂食嚥下機能回復に関する取り組みを必須とし、その取り組みがなければ医療区分2による算定となります。この摂食嚥下回復機能に関する取り組みとは、摂食嚥下支援加算から見直された摂食嚥下機能回復体制加算3を指します(図表10/2022年9月30日までの間に限り、専従の常勤言語聴覚士については専任の常勤言語聴覚士であっても差し支えない)が、実績が求められることに注意が必要です。また、嚥下機能評価を実施した上で嚥下リハビリテーション等を行い、嚥下機能が回復し、中心静脈栄養を終了した患者数の前年実績が2名以上となっています。こちらは、2022年3月31日時点で療養病棟入院料1又は2を算定している病棟に入院している患者については、嚥下機能評価及び嚥下リハビリテーション等を実施していない場合であっても、嚥下機能が回復し、中心静脈栄養を終了した患者数を算入して差し支えないとしています。

(図表10)摂食嚥下支援加算の見直し

(図表10)摂食嚥下支援加算の見直し

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

同じく慢性期入院に該当する障害者施設等入院基本料と特殊疾患病棟入院料においては、重度の意識障害を有さない脳卒中患者に限定して、療養病棟の医療区分に準じた評価となります。慢性期入院においても、機能回復もしくは重症化予防の視点が強化され、医療費の適正化が図られています。在宅復帰を見据えた取り組みはここでもより強化されている印象です。

病院・診療所/外来
外来機能分化は「逆紹介」と「かかりつけ医機能」の推進

医療法改正に伴い、2022年度は外来版地域医療構想を構築するための基礎データ収集となる外来機能報告制度が始まります。病床機能報告と同様に、病院・有床診療所を対象とするものですが、無床診療所も任意で届け出る事が可能です。今後は、重点外来を有すると判断された場合は都道府県から「紹介受診重点医療機関」に該当する旨の連絡があり、その後、地域医療構想調整会議等の協議の場での話し合いを通じて、最終的に医療機関自身で紹介受診重点医療機関となるか否かを判断することになります。紹介受診重点医療機関となることで生じることを以下に紹介しましょう。

  • 一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関は大病院の受診時定額負担の対象
    ※紹介受診重点医療機関となってから、6か月間は経過措置がある
  • 勤務医の外来負担の軽減などに伴い入院医療の質向上が考えられることから、一般病床200床以上の病院に限り紹介受診重点医療機関入院診療加算(入院初日 800点)の算定が可能
    ※地域医療支援病院は不可
  • 一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関は紹介・逆紹介割合が一定の水準に満たなければ、初診料・外来診療料が減額(図表11)
  • 連携強化診療情報提供料の算定において、連携先がかかりつけ医機能を有する医療機関でなくても構わない

(図表11)初診料及び外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定の見直し

(図表11)初診料及び外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定の見直し

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

この中で注意しておきたいのは、本改定から紹介・逆紹介割合(従来は紹介・逆紹介率)の要件が見直され、日常診療に該当すると考えられる患者をいかに逆紹介するかが重要となっていることでしょう。地域医療連携のさらなる推進がポイントとなります。

また、連携強化診療情報提供料(旧:診療情報提供料Ⅲ)の算定にあたって、これまでは機能強化加算の算定をしている医療機関との連携であることが必須となっていましたが、この紹介受診重点医療機関においては、機能強化加算の算定をしている医療機関ではなくてもよいことになりました(図表12)。本改定では、機能強化加算の算定要件が見直され、実績が求められることになったことから大きなメリットになるといえるでしょう。

(図表12)連携強化診療情報提供料の概要

(図表12)連携強化診療情報提供料の概要

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-全体版(一部抜粋、編集)

リフィル処方箋は働き方改革のツールとしての側面も

外来機能分化、患者の経済的・身体的負担の軽減を目的に導入されるのがリフィル処方箋です。反復利用できる処方箋とされていますが、1回の受診で3回まで保険薬局で処方薬を受け取ることができます。ただし、投薬量の制限があるもの(新薬、麻薬、向精神薬、湿布など)については処方できません。受診回数の減少につながることから経営的に影響を受けることも十分に考えられる一方で、外来の勤務医の負担軽減と感染対策になることが期待されています。

経営的な影響以上に注意しなければならないのが、処方の見直しのタイミングです。対面診療の機会が減少することでそのタイミングが難しくなりますので、薬局薬剤師との連携が重要になるでしょう。ただ、受診回数が減ることから、医薬品の受け取りは門前薬局よりも、街中の保険薬局やドラッグ併設店での受け取りが増加すると予想されます。病院との距離の問題も出てくることから、ICT・ビデオ通話などを用いて、患者に受診勧奨を促すポイントや、服薬フォローの状況・依頼などを連携していくことが必要になってくるでしょう。2020年9月より、薬機法改正に伴い薬局薬剤師には必要に応じて服薬フォローをすることが義務となっていることを考えると、こうしたリフィル処方箋の導入やオンライン診療への対応の準備が、以前より徐々に進められていたとも考えられるでしょう。

拡充されたオンライン診療、オンライン資格確認のインセンティブ

オンライン診療の指針の見直しに伴い、従来のオンライン診療料は廃止され、初診・再診・外来診療料に情報通信機器を用いた場合が新たに評価されることになりました。点数も見直され、対面診療で得られる診療報酬との差が縮小されました。また、医学管理料の対象も拡充され、外来診療料の算定を考慮したものといえるでしょう。オンライン診療は、思ったよりも時間がかかる場合や、外来機能分化や医師の負担軽減に直接つながりにくいものの、患者の利便性を高めることは間違いありません。まずは、患者からの要望に合わせて対応できる選択肢として備えておくことが必要になります。

なお、オンライン資格確認に関する評価も新設されています。注意しておきたいのは、ただ機器を設置すればよいというわけではなく、患者情報を診療に活かしていることが求められています。また、2023年1月に予定されている電子処方箋の導入では、マイナンバーカードと紐づけることになっていることを踏まえて、オンライン資格確認の導入は前向きに検討をしておきたいところです。

重症化予防をより強力に

診療報酬においては機能強化加算の届出のある医療機関を「かかりつけ医機能を有する医療機関」としています。先に述べたように本改定では、実績が求められることになりましたが、その他にも外来のかかりつけ医機能ともいえる地域包括診療料・地域包括診療加算の対象疾患に慢性心不全と慢性腎臓病が追加されました(図表13)。対象疾患を増やすことで、対象となる患者を増やし、連携先も拡充することが狙いといえます。ますますかかりつけ医の負担が増加することも踏まえて、医師の指示を受けた看護師や薬剤師、管理栄養士が生活面の指導を行うことが可能となりました。なお、この方針は投薬料が包括評価から除外され出来高算定となった生活習慣病管理料でも取り入れられています。

(図表13)機能強化加算の実績に関する施設基準/外来のかかりつけ医機能の見直し

(図表13)機能強化加算の実績に関する施設基準/外来のかかりつけ医機能の見直し

出典:筆者作成

透析医療の場面においても重症化予防の考えが取り入れられ、透析時運動指導等加算(75点)が新設されています。ただし、指導開始から90日以内となっており、90回ではないことに注意しておきたいところです。

他にも、骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者を対象とした地域医療連携を評価する二次性骨折予防継続管理料が新設されています。手術治療を行う病院、リハビリテーションを行う病院、外来で継続診療を行う医療機関で有機的な連携を通じて、寝たきりにならないよう支援するものです。ここで注目しておきたいのは、手術・治療を行う病院では緊急整復固定加算(4,000点)と緊急挿入加算(4,000点)が新設されていることと、外来で継続診療を行う医療機関においては、1年にわたって毎月算定できることになりました。以下に、透析医療、がん化学療法についても注目される見直しについて整理しておきます。

  • 人工腎臓(慢性維持透析)の引き下げ、腎代替療法の強化
    診療材料や医薬品の実勢価格に合わせ、今回も減額となりました。また、HIF-PH阻害剤が原則院内処方となり、包括評価の対象となっています。ポイントは導入加算の見直しです。新たに加算3を設け、地域で腎代替療法に関する研修と移植に関する情報提供の機会を設けることが求められています。地域を挙げて、慢性腎臓病対策、新規透析導入患者の導入時期を少しでも先延ばしする取り組みを評価するものといえます。
  • 外来化学療法加算から、抗悪性腫瘍剤を注射した場合を切り出して評価を新設
    外来腫瘍化学療法診療料を新設し、抗悪性腫瘍剤の注射以外での副作用等での受診対応も新たに評価されました。そのため、従来よりも手厚い体制が求められることになっています。

保険薬局/調剤
対人業務の推進を通じて実現する健康寿命の延伸

対物業務から対人業務へ―2015年に公表された「患者のための薬局ビジョン」を着々と前に進めるべく、かかりつけ薬剤師や地域支援体制加算などの評価や薬機法改正が行われてきました。2021年8月には地域連携薬局・専門医療機関連携薬局といった薬局機能の整備を、そして本改定では特に対人業務のさらなる推進をキーワードに大きな見直しが行われています。

日常診療の中での高血圧症や糖尿病といった生活習慣病の重症化予防が医科領域でもキーワードとなっています。調剤報酬においても重症化予防に努めるべく、服薬状況等の一元的・継続的な把握に努めることを評価するものが拡充し、従来の調剤料等の評価を対物と対人で明確に分けることになりました(図表14)。例えば、内服薬については処方日数ごとに点数設定されていましたが、一律固定の点数となり、新設された調剤管理料において内服薬は処方日数ごとの点数設定となっています。

(図表14)調剤料と薬剤服用歴管理指導料の再構築

(図表14)調剤料と薬剤服用歴管理指導料の再構築

出典:筆者作成

対人業務の評価としては、糖尿病治療薬を服用する患者に対する服薬状況確認と処方医への連携を評価する調剤後薬剤管理指導加算など、さらに評価が拡充されている点が注目です。また、病院・診療所との連携で評価される項目(図表15)も増え、中でも服薬情報等提供料3(50点)は、従来は病院で行われていた持参薬チェックを保険薬局が行うこと評価するものとなっており、病院スタッフの働き方改革を支援するものとして期待されます。これは、2020年の薬機法改正に伴い服薬フォローと共に盛り込まれた医療提供施設等の医師への情報提供が努力義務となっていたことに対応するものと当てはめることができるでしょう。

(図表15)対人業務に関する新たな評価の見直し

(図表15)対人業務に関する新たな評価の見直し

出典:筆者作成

なお、これまでかかりつけ薬局機能を表す地域支援体制加算が本改定では、4つのグレードに分類されます(図表16)。実績要件の見直しなど細かくなりましたが、地域連携薬局の要件を意識した内容となっているのがわかります。

(図表16)地域医療に貢献する薬局の評価

(図表16)地域医療に貢献する薬局の評価

出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要-調剤(一部抜粋、編集)

対人業務、かかりつけ機能に対する評価に重きが増す一方で、対物業務の評価は厳しいものとなりました。調剤基本料について見れば、300店舗を超えるチェーン保険薬局に関する新たな点数の設定、そして敷地内薬局等を表す特別調剤基本料もさらなる基本料の引き下げとなりました。なお、特別調剤基本料については後発医薬品減算等の影響で大幅に基本料が下げられる可能性もありますが、3点までを限度とすることになっています。

本改定は「医療資源の集約化と連携強化の具現化」がテーマと捉えることができるものとなりました。この内容で2022年度がスタートしますが、現状維持の体制のままでは先細りとなっていくことはこれまでに述べた通りです。2024年度診療報酬・介護報酬同時改定に向けて、大きな舵取りの選択が必要となってきます。

(HCナレッジ合同会社 山口 聡/編集:株式会社日本経営 2022年4月作成)
※本稿は2022年3月4日時点の情報に基づき作成いたしました。今後の疑義解釈やQ&A等により変更となる場合がございます。

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