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トピックス

2022年度診療報酬改定 答申

短冊が公表された後も議論が続き、ようやく2月9日に2022年度診療報酬改定(以下、次回改定)の答申が行われました。今号は答申の内容から、入院医療と外来診療に関するポイントに絞り、お伝えしていきます。

高度急性期・急性期入院医療の集約化が進む一方で、懸念される医療事故の緊張感への対応

一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目から心電図モニターの管理が削除され、輸血や血液製剤の管理の評価が上がったことに代表されますが、次回改定では従来以上に重症の判定が厳しくなりました(図表1)。その一方で重症者受け入れ割合はやや緩和されたものの、200床以上の急性期一般入院料1(必要度Ⅰ)は変わらないままです。更に、急性期一般入院料1を算定する医療機関では、手術等の実績や集中治療室を有する高度急性期病床に対する急性期充実体制加算(1日につき/7日以内・460点、8日以上11日以内・250点、12日以上14日以内・180点)が新設されるなど、より高度急性期に近づくにしたがって高い評価が得られるようになっています。特定集中治療室管理料及び救命救急入院料(2もしくは4)に対しても、看護師や臨床工学技士の手厚い配置や職員の研修などを実施できる体制を有する医療機関に対して重症患者対応体制強化加算(3日以内・750点、4日以上7日以内・500点、8日以上14日以内・300点)が新設され、同じく集中治療領域(ハイケアユニットや脳卒中ケアユニット等も可)において治療に直接関わらない専任の担当者「入院時重症患者対応メディエーター」の配置を評価する重症患者初期支援充実加算(1日につき/300点)も新設されました。

(図表1)一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の概要(A項目のみ)

(図表1)一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の概要(A項目のみ)

出典:厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会(2021年第3回)入-1 (一部抜粋、改変)

いずれも集中治療領域における働き方改革に資する取組であると同時に、処遇改善を通じて地域の貴重な高度急性期医療の提供体制を維持継続し続けるための注目すべき評価でしょう。地域医療構想の進展に伴い、さらなる医療機関・病床単位での役割分担・連携強化が進んでいくことは間違いありませんが、とりわけ重要なことは、いつどこで発生するかわからない重症者への緊急対応であり、そのいつ発生するかわからない事象に常にスタンバイしておかなければならない医療スタッフの負担軽減であると言えます。また、次回改定での急性期及び高度急性期入院医療に対する重症者の基準引き上げ、及び診療報酬上の手厚い評価は、地域医療構想の推進の流れに沿ったものでもあります。更に注目しておきたい点は、薬剤師や管理栄養士といったコメディカルスタッフが、周術期管理や褥瘡対策において積極的に専門性を発揮するための取組が、次回改定内に散りばめられていることです(図表2)。チーム医療のさらなる推進であり、勤務医負担軽減の一環とも言えるでしょう。

(図表2)周術期の多職種連携に関する新たな評価

(図表2)周術期の多職種連携に関する新たな評価

出典:筆者作成

医療安全や、サイバーセキュリティへの対応も

地域医療構想の推進と働き方改革の推進では、地域医療において高度急性期入院医療を有する病院に、より一層重症患者が集約化されます。医療現場では医療事故に対する緊張感にあふれることが懸念され、医療安全に対する取組が今後ますます重要になってくるでしょう。次回改定では、新たに画像診断部門や病理診断部門が医療安全管理部門と連携し、画像診断又は病理診断が行われた入院患者に関する画像診断報告書や病理診断報告書の確認漏れ等の対策を講じ、診断又は治療開始の遅延を防止するための体制を整備していることを評価する報告書管理体制加算(退院時1回 7点)を創設しました。他にも、医師事務作業補助者においても経験年数が高いスタッフの配置割合(加算1について、勤務経験3年以上の医師事務作業補助者が配置区分ごとに5割以上配置)を新たに設けるなど、間接的に医療安全や確実な情報連携に支障が出ないような見直しが図られている点もポイントです。

そして、近年注目を集めているのがサイバーセキュリティという新しい課題です。医療における電子化の進展とともに、社会的にも注目を集めていますが、次回改定では従来からある診療録管理体制加算の施設基準等を見直すことで、このサイバーセキュリティへの対応が求められることになっています。具体的には許可病床数が400床以上の病院については非常時に備えたサイバーセキュリティ対策が講じられるよう、医療情報システム安全管理責任者の配置及び院内研修の実施が求められ、医療情報システムのバックアップ体制の確保が望ましいとされています。

回復期入院医療は現状維持のままではマイナス成長に

地域包括ケア病棟に目を向けてみると、より在宅復帰率を高めていくことや在宅や施設からの患者受入れを積極的に行っていくこと、すなわち一般病棟からの転棟よりも、地域とのつながりを更に強固にするべく、地域の医療機関や施設のバックアップ病床としての機能を発揮していくことに注力していかなければ、自然に医業収入は下がっていく内容となりました。在宅復帰率が見直され(図表3)、院内転棟割合が厳格化されるなど、地域のための病棟としてどのように運用・活用していくかという視点が必要になっています。地域包括ケアシステムにおける在宅と入院のコントロール機能への期待が伺えます。

回復期リハビリテーション病棟入院料1、3では、第三者評価の受審が「望ましい」という文言が入りました。気を付けておきたいのはこの「望ましい」とは、2024年度改定では義務化される公算が高いことです。2024年度までの経過措置と見てもよいでしょう。尚、第三者評価としては病院機能評価が国内では最も有名ですが、他にもISOやJCIといった第三者評価があります。病院機能評価はどちらかと言えば、患者の視点で病院を評価するもので、ISOやJCIは国際的な取引(海外の医療保険会社からの推奨や国際的な人材の交流など)において求められるケースが多いことを理解し、今後に備えておきたいところです。

また、回復期リハビリテーション病棟入院料に「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患、又は手術後の状態」(算定開始から起算して90日まで)の患者を対象に加え、CPX検査を「望ましい」としながらも明記しました。更に、特定機能病院での回復期リハビリテーション病棟の評価を新設したことからも、とりわけ循環器領域などに求められる高度なリハビリテーションが期待されていることがわかります。

地域包括ケア病棟もそうですが、回復期リハビリテーション病棟も量的拡大にひと段落をつけ、早期在宅復帰に向けた病棟で提供される医療サービスの質の向上を問い、競う内容となってきています。

(図表3)地域包括ケア病棟の減額に関する一覧

(図表3)地域包括ケア病棟の減額に関する一覧

出典:筆者作成

オンライン診療・リフィル処方箋は、保険薬局と病院の連携強化の対応を

COVID-19感染拡大の最中、受診控えによる患者の重症化予防を実現するために、オンライン診療の特例対応が行われ、現在に至っています。オンライン診療については指針が見直され、かかりつけ医であれば初診から、かかりつけ医でなくとも診療情報提供書等から患者情報を入手できれば初診から、情報が入手できなくとも診療前相談を通じて初診から-実施できることになります。次回改定では、新たな指針に準拠した対応をすることで、初診・再診・外来診療料にてオンライン診療の場合の評価を新設しました(図表4)。点数自体がかなり高くなったこともさることながら、対象患者が拡充した点や、外来診療料でもオンライン診療の評価ができる点がポイントです。

(図表4)オンライン診療の診療報酬の見直し

(図表4)オンライン診療の診療報酬の見直し

出典:筆者作成

合わせて確認しておきたいのが、導入されることが決定したリフィル処方箋(反復利用できる処方箋)です。期間は特に指定がないものの、最大3回まで受診せずとも薬剤が受け取れるということです。これは、患者にとっての身体的・経済的な負担軽減につながる一方で、医療機関としては医業収入の減収と、患者と対面で会う機会の減少に伴う処方内容の見直しのタイミングが難しくなることを意味します。次回改定でのリフィル処方箋の導入は、高度急性期医療を提供する病院や紹介受診重点医療機関における3か月処方の患者等が主な対象となると考えられ、勤務医の負担軽減の一環として推進されていくでしょう。そこで重要になるのは、保険薬局と病院との連携です。受診回数が減ることから、門前の保険薬局ではなく、街中の保険薬局やドラッグストア併設店に患者の足は向かうことが想像できます。患者がどこで受け取るのかを確認し、その受取先保険薬局の薬剤師とのトレーシングレポート等を活用した情報共有が重要になります。受診はせずとも薬は受け取りに来局することから、必要に応じて受診勧奨を促すことも必要になってくるでしょう。これは同様に、オンライン診療においても重要な視点だといえます。今後、オンライン診療及びリフィル処方箋の推進を考えていくにあたり、保険薬局との連携の在り方も合わせて対応していくことが重要となります。

外来の機能分化がいよいよ始まる、近隣医療機関との連携がカギ

その他、2022年度から始まる外来機能報告制度に呼応して、外来機能分化の推進をさらに進めるべく、紹介受診重点医療機関(図表5)に対する評価を新設しています。まず1つ目のポイントは、従来からある大病院における受診時定額負担義務化の対象拡充です。現状では特定機能病院と一般病床200床以上の地域医療支援病院が義務化の対象となっていますが、これを一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関にまで広げ、定額負担も2,000円ほど引き上げられます。紹介受診重点医療機関とは、その名の通り診療所や一般病床200床未満の病院からの紹介状をもって受診することを前提に考えているため、初診に対しては従来の選定療養費に加えて受診時定額負担が発生するものとされています。2つ目のポイントは、この紹介受診重点医療機関に患者が入院した場合の紹介受診重点医療機関入院診療加算(入院初日/800点)が新設されたことです。3つ目のポイントは、地域の診療所や一般病床200床未満の病院からの紹介患者に対して、紹介元からの要請に応じて診療状況の経過報告をすることで得られる連携強化診療情報提供料(旧・診療情報提供料Ⅲ)が紹介受診重点医療機関も対象となりました(図表6)。近隣の医療機関との関係強化が診療報酬でも評価されるものといえます。従来はかかりつけ医機能を有する医療機関との連携が要件でしたが、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関においては、かかりつけ医機能を有する医療機関でなくても算定可能となりました。

(図表5)紹介受診重点医療機関について

(図表5)紹介受診重点医療機関について

出典:厚生労働省 社会保障審議会医療部会(第85回)資料2-2(一部抜粋、改変)

(図表6)連携の新たな評価

(図表6)連携の新たな評価

出典:筆者作成

今回は答申の内容からとりわけ影響度の高いと思われる項目をご紹介しました。今後、3月上旬に告示が行われ、答申では明らかにされなかった施設基準等も詳細になります。次回は、告示の内容を踏まえて、詳細に解説をしていく予定です。

(HCナレッジ合同会社 山口 聡/編集:株式会社日本経営 2022年3月作成)
※本稿は2022年2月10日時点の情報に基づき作成いたしました。

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