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- 食欲不振・吐き気:食事(vol.14)
抗がん剤治療では、食欲不振や吐き気、嘔吐が生じることがあります。 これらの症状は制吐療法の進歩により改善されているものの、苦痛に感じている患者さんは少なくありません。 食事の摂取量が減って栄養状態が悪化すると、全身状態の悪化にも繋がります。そのため症状に適切に対処することが治療を継続する上でとても重要です。 今回は食欲不振や吐き気、嘔吐に悩む患者さんへの食事のアドバイス、日常生活の工夫をご紹介いたします。患者さんへの指導にご活用ください。
消化器外科 部長
尾形 高士 先生
栄養管理科 部長
藤井 理恵薫 先生
がん治療で起こる食欲不振・吐き気・嘔吐とは
がんの治療では、身体にさまざまな障害が起こります。がんそのものや抗がん剤の副作用、手術などの治療、患者さんの精神的ストレスなどが原因として挙げられます。なかでも抗がん剤で起こる副作用は、使用する抗がん剤の種類によって、症状や頻度、タイミングが異なります。これは食欲不振や吐き気、嘔吐でも同じことが言えます。
以前は、抗がん剤治療というと吐き気があり気持ち悪い状態が続く、嘔吐するといったイメージがあったと思います。吐き気や嘔吐は制吐剤によりかなりコントロールできるようになってきましたが、「食欲不振」を訴える人はまだ多く、「吐き気」や「嘔吐」も100%制御できるわけではありません。
抗がん剤による吐き気・嘔吐は、投与して24時間以内に起こる「急性」の症状と、それ以降に起こり数日続く「遅発性」の症状があります。使用する抗がん剤により症状の起こりやすさや重さが異なります。
抗がん剤治療で嘔吐した人が、以前の記憶からまた起こるかもという不安が吐き気を引き起こす(「予期性」の症状)こともあり、症状には個人差があります。主治医にどのような副作用がいつ頃から起こるのか、どんな対策ができるのかをしっかり聞きましょう。
食欲不振・吐き気・嘔吐の症状と対処法
吐き気・嘔吐の前に食欲不振が起こります。食欲がわかず食事の量が減ってしまうことは、多くの方が経験されます。食欲不振がひどくなると、吐き気や嘔吐を訴えるようになります。これらの副作用は、食事の摂取に影響します。食事がとれないとエネルギー量(カロリー)が不足し、筋肉を分解してエネルギーを補うようになるため、筋肉量が減少します。筋肉量の減少は体力の低下につながり、抗がん剤治療を続けられなくなる可能性もでてきます。食べられないと諦めずに、どんなものなら食べられるのか食事の内容や形態などを工夫してみましょう。
どんなものを食べると良いですか?
食欲がなく、あまり食べられないときはどのような食事をとれば良いのか悩むかもしれません。酸味があるさっぱりした料理や香辛料を使った料理などを食べやすいと感じる方もいます。ただし、手術後すぐなどは香辛料を多く使った料理を避ける方が良い場合もあります。主治医や栄養士など医療関係者に、ご自身に合った食事を聞いてみるのも良いでしょう。これまで好きだった料理が食べたくなくなったり、反対にそれほど好んで食べていなかったものが食べやすく感じるようになったり、食の好みが変わることもあります。無理をせず、食べられるときに食べられるものを試してみましょう。
食事がとれない場合はどうすれば良いですか?
無理に食べようとせずに、でも脱水にならないように水分はしっかりとるようにしましょう。食事がとれない日が数日続く場合は、医療機関に連絡してください。
少しでも食べることができる場合は、食べられるもので食事をとるようにしましょう。温かい食事はにおいで吐き気を催すことがあります。冷たく口当たりの良いものが食べやすいようです。
- 吐き気が強いときの食事のアドバイス
- ・少量ずつ何回かに分けて食べる
- ・1回の食事は腹8分目程度に抑える
- ・においを抑えた食事や冷たく口当たりの良い、飲み込みやすいものを選ぶ
- ・刺激物(スパイスやカフェインなど)は控える
- ・料理しないと!と無理せずに、冷凍食品や市販の惣菜品なども活用する
- おすすめの食品
- ・主食(お粥 雑炊 フレンチトースト パン粥 うどん にゅうめんなど)
- ・主菜(皮なし鶏肉 ささみひき肉 つみれ 卵 白身魚 豆腐など)
- ・副菜(大根 かぶ 冬瓜 キャベツ 皮むきなす 皮むき南瓜など)
※食物繊維はとりすぎない方が良いでしょう
サプリメントで栄養を補っても良いですか?
普段からサプリメントや漢方、健康食品などをとっている方もいると思いますが、がん治療中はできれば控えていただきたいものもあります。抗がん剤治療を始める前に主治医に相談してください。
嘔吐してしまった場合、どのように対処すれば良いですか?
嘔吐が抗がん剤の副作用によるものか、感染症によるものかわかりませんので、素手ではなくビニールやゴムの手袋をして、吐しゃ物はビニール袋などで密閉して焼却ゴミに出すようにしましょう。
嘔吐により制吐剤の服用や水分の摂取が困難な場合は、医療機関に連絡してください。また、嘔吐以外に発熱や腹痛などの症状がある場合は、感染症の可能性があります。すぐに医療機関に連絡してください。
がん治療中は、抗がん剤の使用によって血液中の白血球数が減少することが多くみられます。白血球は身体の中に入ってきた細菌やウイルスを排除しますので、白血球数が減少すると感染症にかかりやすくなります。また、がん治療中は消耗が大きく体力が低下していますので、ご家族も含めて手洗い、うがい、手指消毒をしっかりと行い、感染症を予防することが大切です。