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日常生活のアドバイス

栄養管理
手術後すみやかに普段の生活に戻るための胃がん患者さんへのアドバイス
食事

がんの治療を受けている患者さんは、手術や抗がん剤の副作用の影響により食事をとりづらい状態になることが多いです。特に胃がんの手術を受けた患者さんは、食事をとる量も減るため栄養状態が悪化しないよう気をつけなければなりません。患者さんが手術後にすみやかに普段の生活に戻れるよう、日常生活で気をつけることやおすすめのレシピなどをご紹介します。

埼玉県立がんセンター
消化器外科 科長兼部長
川島 吉之 先生
埼玉県立がんセンター
栄養部
森實 亜貴子 先生
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胃がんの治療とは

胃がんは、食べ物と接する胃の壁のいちばん内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん化し、無秩序に増殖を繰り返します。早くから不快感や胸やけのような症状を訴える方もいますが、まったく症状がでない場合もあります。がんが進行するに従い、がん細胞は胃の壁に潜り込み、外側にある漿膜(しょうまく)や近くにある大腸などの臓器にも広がることがあります。

胃がんでは、「内視鏡治療」「外科治療」「薬物療法」を病期に応じて選択し、治療を行います。

内視鏡治療

早期胃がんで、リンパ節への転移がない場合は、お腹を切らずに内視鏡を使ってがんを内側から粘膜ごと取り除くことがあります。この場合、胃はまるまる残ります。

外科治療

お腹にカメラを入れる腹腔鏡手術と開腹手術があります。がんの大きさによって、胃をすべて摘出する場合と2/3切除する場合があります。

薬物療法(抗がん剤治療)

手術では取り除けない小さながんを消滅させて再発を予防するために手術後に行う薬物療法と、再発した場合や進行したがんで、手術ではがんを取りきれない場合にがんの増殖を抑える薬物療法があります。抗がん剤の副作用は個人差があるので、効果と副作用を確認しながら治療を進めます。

日常生活の注意点

手術を受ける前

食事は普段と同じもので大丈夫です。手術後は、胃での消化の役割を口でサポートしますので、食べるときはよく噛むようにしましょう。よく噛んで食べることを手術前から行い、習慣づけます。

口腔が原因となる感染を防ぐために、口腔ケアを行いましょう。誤嚥性肺炎や口内炎の予防にも繋がります。

手術後

手術後は、「ダンピング症候群」「逆流性食道炎」「下痢」「腸閉塞」などに気をつけましょう。

ダンピング症候群

胃の切除後、速いスピードで食べ物が通過し一度に腸に送られてしまうことで起こるさまざまな症状のことです。食後早期に起こるものと晩期に起こるものがあります。

早期ダンピング症候群・・・
食事の途中、食後すぐに起こります。頭痛や動悸、腹痛などの症状がみられます。ゆっくり食べるようにしましょう。
晩期ダンピング症候群・・・
食後2時間くらいたってから起こります。低血糖の症状(手が震える、イライラする、めまいがする、身体がふわふわするなど)がみられます。血糖値が下がることにより起こるので、糖分を少しとると良いでしょう。
逆流性食道炎

イラスト胃の全摘出や、胃の入り口部分を切除(噴門側胃切除)したときに起こりやすくなります。手術後、だんだん食事のスピードが早くなったり、食べる量が多くなりすぎると、胃の入り口から食道へ食べ物や胃酸が逆流して起こります。ゆっくり少量ずつ、よく噛んで食べましょう。

下痢

胃を切除すると胃酸の量や消化能力が下がり、下痢傾向になります。ゆっくり少量ずつ食べるようにしましょう。揚げ物など油を多く使用している料理をたくさん食べると下痢を起こしやすくなります。下痢が続いている場合は、控えることをおすすめします。

腸閉塞

手術後、お腹の中で腸があちこちにくっつく(癒着〈ゆちゃく〉する)ことがあります。食べ物の流れが閉ざされてしまい、吐き気やおう吐、便が出ない、腹痛などの症状がみられます。噛み砕きにくい食材や繊維質が多い食材は控えて予防しましょう。

Q&A

イラスト

Q手術後、どれくらいで食事がとれるようになりますか?

当センターでは、術後1日目に水分から始めます。3日目に三分粥、6日目に全粥の方もいらっしゃいます。傷の治り具合は個人差がありますし、食事は施設によって異なります。

Q食事で気をつけることはありますか?

A胃を全摘出した場合、1日5回食事をとるなどと言われますが、あまり回数にこだわらず、1日の量を小分けして食べることをおすすめします。
よく噛みながら少量ずつ食べましょう。そうすると食べるスピードがゆっくりになりますので、ダンピング症候群や逆流性食道炎の予防にも繋がります。

ラーメンやうどんなどの麺類はよく噛まずに食べてしまう方が多いので、噛んで食べるようにします。七味も少しかける程度でしたら問題ないでしょう。
お刺身などの生ものも、新鮮なものを選んでいただくようお答えしています。わさびやからしは口の中で揮発するので、使用しても大丈夫です。
コーヒーも問題ありません。

腸閉塞の予防のためにごぼうやえのき、たけのこ、貝類など噛み砕きにくいものは避けます。また、こまめに水分をとるようにしましょう。

Q体重がかなり減ってしまいました・・・

A術後3ヶ月は体重が減り、1年間は増えないと言われています。今の体重と理想体重がどれくらい離れているのかにもよりますが、体重減少により体調不良を訴える場合や、逆流性食道炎などにより食事をとることができず体重が減少した場合は、気をつけなければなりません。一つの目安として、手術前の体重から10〜15%以上減少し、体調が良くない方は、医療従事者に相談してください。

イラスト 川島吉之先生よりご提供
体重がどれくらい減るか、またいつから増えるのかは個人差があります。

Q糖尿病になったのかも!?血糖値が気になります・・・

A糖尿病を心配される方は多いです。胃を切除すると、食べ物が小腸に到達する時間が早くなるため、食後急激に血糖値が上昇します。これにより食後1時間くらいは尿糖が出ることがありますが、これは糖尿病とは異なります。グリコヘモグロビン値を計測することで、糖尿病かどうか確認することができます。
糖尿病を気にして野菜から先に食べていると野菜だけでお腹がいっぱいになってしまい、必要な栄養をとることができません。最初は手術前のようにたくさん食事がとれないと思いますので、主食やたんぱく源(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品)を中心に食べてください。少ない量でも数回に分けて食べて、1日のトータルの食事量が少しずつ増えるといいですね。

Q下痢が続いています・・・

A胃がんの手術を受けた方で、食事をとれず下痢しているという方は多いです。下痢の症状がある時は、食事を消化の良いものに変え、間食に栄養補助食品などを使ったりしながら、栄養補給することをおすすめします。

1日に決まった時間に数回繰り返し排便のある方で、1回目は通常の便、2回目、3回目は下痢になる場合は、病気ではなく消化できなかったものが下痢となって排泄される不消化便なので問題ありません。

Q便秘の時はどうしたら良いのでしょう?

Aイラストまずは、水分をとりましょう。食事のときに一緒にとると満腹になり食事がとれなくなってしまうので、食事以外の時間にこまめに水分をとることをおすすめします。

わかめなどの海藻、きのこ類、皮つきのりんご、こんにゃく、しらたきなど繊維質で腸に留まりやすいものは、腸閉塞の予防のために便秘の時は少し控える方が良いでしょう。便秘でないときは、食べても問題ありません。

Q食欲がなくて食べられません

Aイラストご家族と一緒に暮らしている方は、ご家族の食事の時間に一緒にテーブルにつき、少しつまんだりしてみてください。食事の時間を決め、時間が来たから食べるとしても良いでしょう。エネルギーをとることが大事なので、自分の好きなものがあれば好きなものから食べることです。

Q以前と味覚が変わってしまいました

A抗がん剤治療を受けている方だけでなく、手術をした方でも味覚が変化し食べたいものが変わることがあります。食事を「砂を噛んでいるようだ」と表現する方もいます。味覚の変化では、亜鉛を補充する方法もあるので、医療従事者にご相談ください。

ご自身に合った味を見つけることができると食事がとりやすくなるかもしれません。
vol.7「味覚障害の患者さんへ美味しく食べられる食事の工夫」もご参照ください。

Qお酒は飲んでも大丈夫ですか?

Aアルコールは胃で吸収されるので、胃を切除するとお酒がより飲めるようになってしまう方がいます。毎日飲まれる方は今までよりも飲みすぎてしまうことも多く、肝臓には悪いので、ほどほどにしましょう。また、休肝日を設けましょう。

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