抗がん剤の副作用
舌にある味覚を感じる味蕾(みらい)細胞が、抗がん剤によって障害されたり、抗がん剤と亜鉛のキレートによって亜鉛が不足し、味覚障害が起こります。
また、口腔内が乾燥しやすくなることも原因の1つです。
抗がん剤の影響などで、多くのがん患者さんが「食事の味が変わった」と言われます。
痛みや体調不良と違い、他の人にはわからない感覚なので、家族などにも理解されにくいのが実情です。多くの方は治療が終わりしばらくすると味覚がもとに戻りますが、食事の楽しみは生活する上でのパワーにもつながりますので、治療中でも不快に感じる味覚をできるだけ減らすことが大切です。そこで、味覚障害の患者さんでも美味しく食べられる料理や生活の工夫をご紹介します。
抗がん剤治療・放射線治療ともに、治療開始数日から数週間ぐらいに味覚障害の症状が出やすいと言われています。そして、多くの方は、治療を終えると味蕾が再生され、味覚が戻ります。
味覚の変化は個々により異なります。大きく分けると「本来の味と異なるように感じる」「味を強く感じる」「味が薄く感じる」となりますが、「苦味を感じる」、「砂を噛んでいるような気がする」などと表現する方もいます。
食事がとれないと、食事から得る水分も減ってしまいます。
できるだけ水分をとるようにしましょう。
食事があまりとれない状態のときは、スポーツドリンクでも良いでしょう。
食事の摂取量が減らないようにするには、楽しみながら食べること。
家族や友人と一緒に食事をしたり、外食したり気を紛らわせて、食事を薬のように「食べなければいけない」と使命感で食べるのではなく、見た目や香りを工夫して楽しみながら食べましょう。
便秘の時は食欲が落ちるので、できるだけ便秘を解消するように身体を動かすことを心がけましょう。
治療中は食事の回数にこだわらず、食べたい時に少量ずつでも食べましょう。
口腔内を清潔に保つことで、味の感じ方や口の中の違和感が軽減できます。食べる前に、レモン入りの水を飲むなどして、口腔内をさっぱりさせておいても良いでしょう。
治療中で身体がつらい時は、無理に手作りしようとせず、スーパーやコンビニで買えるものを利用して、簡単な料理を心がけましょう。栄養が偏っても、一時のこととおおらかに考えて、体調が戻ったらバランスよく食べることを心がけてください。
インスタントのうどんが美味しく食べられると聞きますので、いろいろ挑戦してはいかがでしょうか。
患者さんが食事をとれる状態であれば、なるべく一緒の食卓で食事をしてください。量は少なめに、目でも楽しめるように盛り付けをすると、気が紛れ、楽しく食事ができます。味覚障害であることを理解して、ご本人が好きな味を一緒に探してあげてください。
また、においに敏感になる方も多いので、魚を焼いたりする時などは配慮してください。反対に、においを感じにくくなっている場合もあります。その場合は、色のある食材を使うなど、目で楽しめるような工夫をすると良いでしょう。以前と味覚が異なるので、今まで以上に美味しく感じるものや、今までのようには美味しく感じなくなったものが出てくると思います。好きなものだけ食べるのではなく、いろいろなものに挑戦するほうが良いと思います。
「本来の味と異なるように感じる」、「味を強く感じる」、「味を薄く感じる」などそれぞれの症状に合わせたおすすめレシピをいくつかご紹介いたします。
「味を強く感じる」場合は味付けを薄めにするように工夫してください。
だしがきいているとしょう油や酢の味がまろやかになり、味覚障害の方も美味しく感じられるようです。
作り置きしておくと、料理が楽になります。
味が薄く感じる患者さんからは「食べ物が何かに包まれているみたい」という声をよく聞きます。少しでも味を感じることができるようキムチや梅を使用したレシピをご紹介します。みそ汁や煮物も、いつもよりだしをきかせて、旨みを強くすると食べやすくなります。
本来の味と違なるように感じる味覚障害の患者さんの中には、金属の味がするように感じる方が多いようです。塩やしょう油は控えめのほうが良いですが、カップラーメンを美味しく感じる方も多いようです。カップラーメンは塩分が強くても、だしの味も強いので食べやすいと思います。