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医療制度トピックス

2024年度診療報酬改定 答申(外来医療・在宅医療)

2024年2月14日に2024年度診療報酬改定(以下、次回改定)が答申されました。改定率公表時には「40歳未満の勤務医等の賃上げ対応(0.28%程度)」や、「生活習慣病を中心とした管理料等の再編による効率化・適正化(マイナス0.25%)」を提示していましたが、200床未満の病院・診療所等の外来医療では厳しい次回改定となりました。

【医療従事者の賃上げ対応】初・再診料等を引き上げ、ベースアップ評価料を新設

次回改定では、感染防止対策や医療従事者の賃上げ対応について、初診料(3点増)や再診料(2点増)を上乗せします。

また、外来・在宅や入院に対し「ベースアップ評価料」を新設。「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(以下、評価料Ⅰ)」では、初診時、再診時等、訪問診療時の同一建物居住者等以外の場合と、同一建物居住者等の場合とで4つの評価区分を設け、病院、有床診療所(以下、有床診)、無床診療所(以下、無床診)といった施設類型を問わず一律の点数を設定します。

ただ、無床診のうち、「初・再診料」による収益が少ない人工透析や内視鏡検査の専門医療機関等では、一律の点数上乗せでは大幅な補填不足が生じることが明らかなため、無床診で「評価料Ⅰ」では十分な賃上げ原資を確保できない医療機関(「評価料Ⅰ」算定後の賃金増率が1.2%未満の医療機関)の救済措置として「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)(以下、評価料Ⅱ)」を設定しています(図表1)。

「評価料Ⅱ」は、初診・訪問診療時と再診時等の算定点数を組み合わせた8の評価区分で構成。対象医療機関は所定の計算式に対象職員の給与総額、「評価料Ⅰ」で算定する点数見込み、「評価料Ⅱ」の算定回数見込み等を当てはめて算出した値を基に該当区分を判定し、地方厚生局等に届け出ます。

これらの新設点数のうち、有床診は「評価料Ⅰ」と「入院ベースアップ評価料」を、無床診は「評価料Ⅰ(一部の医療機関は評価料Ⅱも算定、前述)」を算定可能とし、評価料による収入を賃上げの原資に充てます。

いずれの「評価料」とも賃上げに確実に結びつくよう施設基準では、▽評価料を算定する場合は2024・2025年度に対象職員の賃金改善を実施しなければならない、▽基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げによる改善を原則とする、▽賃金改善に関する計画書を作成する、▽計画書に基づく賃金改善の状況を定期的に地方厚生局長等に報告する、▽対象職員の基本給等を2023年度と比較して一定水準以上引き上げた場合は、「40歳未満の勤務医」、「事務職員」等の賃金改善ができる-等としています。

なお、訪問看護ステーションでは「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)(以下、訪看評価料Ⅰ)」を新設。「訪看評価料Ⅰ」だけでは補填不足となる場合の救済措置として、「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)」も新設します。

(図表1)賃上げに向けた評価の新設

(図表1)賃上げに向けた評価の新設

出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第584回) (一部抜粋、改変)

【生活習慣病対策】「生活習慣病管理料(Ⅰ)」は40点の評価引き上げ

論争が繰り広げられた生活習慣病対策では、それらに対する質の高い疾病管理を推進する観点として、これまで「生活習慣病管理料」と「特定疾患療養管理料」で評価してきた生活習慣病の管理を「生活習慣病管理料」に一本化する見直しを行います(図表2・3)。

生活習慣病の管理では、現行の名称を「生活習慣病管理料(Ⅰ)(以下、管理料Ⅰ)」に変更した上で、検査等を包括しない「生活習慣病管理料(Ⅱ)(以下、管理料Ⅱ)」を新設。「管理料Ⅰ」の算定要件では、▽現行同様に療養計画書を用いた患者への丁寧な説明と同意の取得、患者の署名を求めるが、2025年から運用が開始される電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、療養計画書への血液検査項目の記載を不要とする、▽少なくとも月1回以上の総合的な治療管理を求める要件を廃止する-等を見直します。

また「管理料Ⅰ、Ⅱ」共通の取り扱いとして、▽「糖尿病合併症管理料」や「がん性疼痛緩和指導管理料」等を除く医学管理等は評価に含まれる扱いとし、別途算定はできない、▽患者や家族から求めがあった場合は療養計画書を交付、▽28日以上の長期投薬やリフィル処方箋交付が可能なことを院内掲示-等を求めます。療養計画書については、電子カルテ情報共有サービスの患者サマリーに療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成・交付をしているものとみなす(ただし「管理料Ⅰ」は、この場合も患者への丁寧な説明と同意取得は必須)等、「生活習慣病管理料」の算定上のハードルとなっていた療養計画書や患者負担増となる要件を緩和し、2025年スタートの「かかりつけ医による書面交付」を意識した内容が盛り込まれました。なお、「管理料Ⅱ」を算定した日の属する月から起算して6ヵ月以内の期間は、「管理料Ⅰ」の算定ができないため注意が必要です。

(図表2)生活習慣病の管理を中心とした評価、および現行と改定後の算定移行のイメージ

(図表2)生活習慣病の管理を中心とした評価、および現行と改定後の算定移行のイメージ

出典:上/厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第571回) 総-5(一部抜粋、改変) 下/答申を元に作成

(図表3)生活習慣病に係る医学管理料、および地域包括診療料等の見直し

(図表3)生活習慣病に係る医学管理料、および地域包括診療料等の見直し

出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第584回) (一部抜粋、改変)

「生活習慣病管理料」と「外来管理加算」の併算定は不可
「特定疾患療養管理料」は対象から生活習慣病を除外

併算定が俎上に上がっていた、生活習慣病管理を受けている患者に対する「外来管理加算」は「管理料Ⅱ」に含まれる扱いとし、併算定は認めないことになりました。また、「特定疾患療養管理料」は対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症、高血圧症を除外します。

「地域包括診療料・加算」等は、かかりつけ医とケアマネジャーとの連携強化のための方策として、▽サービス担当者会議への参加実績がある、▽地域ケア会議への参加実績がある、▽ケアマネジャーと相談の機会を設けている-のいずれかを満たすことを施設基準に追加。▽認知症に関する研修の修了が望ましい、▽患者の意思決定支援に関する指針の作成-等も併せて求めます。算定要件では、▽患者や家族の求めに応じて文書を用いた適切な説明を行うことが望ましい、▽長期投薬・リフィル処方箋交付が可能なことを院内掲示-等を新しく追加し、介護連携や長期投薬・リフィル処方箋の一体的な推進を後押ししています。このうち患者等への文書交付は、「生活習慣病管理料」の療養計画書と同様、電子カルテ情報共有サービスの患者サマリー入力での対応を認めます。

【医療DXの推進】電子処方箋や電子カルテの導入等を 「医療DX推進体制整備加算」で新たに評価

医療DXの推進では、オンライン資格確認に関する医療機関等の体制整備がおおむね完了したことを受け、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の位置づけを現行の体制に対する評価から、初診時等の診療情報・薬剤情報の取得および活用に対する評価に変更。名称を「医療情報取得加算」に改めます。

これに代わる医療DX対応の体制評価として、「医療DX推進体制整備加算(1ヵ月につき・初診のみ 8点)」を新設。(1)電子処方箋の導入(経過措置2025年3月31日まで)、(2)電子カルテ情報共有サービスの導入(経過措置2025年9月30日まで)、(3)マイナ保険証の利用実績(2024年10月1日から適用)-等の要件を満たす医療機関が初診時に算定可能となります。その他、医療DX推進体制に関する事項、及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得・活用して診療を行うことを原則ウェブサイトへ掲載すること(経過措置2025年5月31日まで)が求められます。

「在宅患者訪問診療料」や「在宅がん医療総合診療料」、「訪問看護管理療養費」においても、医療DX情報活用に対する加算を新設しており、次回改定での医療DXに対する充実度が伺えます。

なお、答申の附帯意見として、▽かかりつけ医機能を持つ医療機関について、改正医療法に基づく制度整備の状況を見据えつつ、かかりつけ医機能がより発揮される評価のあり方を検討、▽「地域包括診療料・加算」における介護保険サービスとの連携に関する評価や、連携推進の検討、▽生活習慣病の管理に関する評価の見直しによる影響の調査・検証・患者の視点を十分に踏まえた検討、また他の疾病管理についても実態を踏まえた適切な評価の在り方の検討-等を要請しており、かかりつけ医機能の強化や外来機能の明確化を視野に入れた内容が盛り込まれました。

【在宅医療】「在宅療養移行加算」ICT等による24時間連携を評価する上位区分を新設

在宅医療では、今後も需要の拡大が見込まれる在宅医療の受け皿確保のため、単独での24時間対応が難しい医療機関でも在宅医療に参入しやすくなるよう、在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院(以下、在支診等)以外の診療所の訪問診療に対する評価「在宅療養移行加算」の見直しを行います。現行の算定区分は24時間の往診・連絡体制が要件の「加算1」と、往診要件を緩和した「加算2」の2つですが、次回改定では「在宅療養移行加算」の算定対象施設に病院を追加。さらに現行の「加算1、2」の算定要件に加え、患者の診療情報や急変時の対応方針等の情報を、▽定期的なカンファレンスの開催、▽ICT等を活用して連携先医療機関が常に確認できる体制の整備-のいずれかの方法で連携先医療機関に提供している場合の上位区分(新加算1、3)を新設し、4区分に再編します(現行の「加算1、2」は「新加算2、4」に移行)。

在支診等が連携先の患者を往診した場合は「往診時医療情報連携加算」を算定

連携する在支診等が往診対応した場合の評価も新設。「在宅療養移行加算」等で連携している在支診等以外の医療機関が訪問診療を行っている患者の急変時に、在支診等が往診した場合に「往診時医療情報連携加算」を算定できるようになります。「在宅療養移行加算」の新区分と同様、算定にあたっては在支診等以外の医療機関との間で、定期的なカンファレンスやICTの活用により最新の診療情報等を確認できる体制を整える必要があります(図表4)。

(図表4)在宅療養移行加算の見直し、および往診時医療情報連携加算の新設

(図表4)在宅療養移行加算の見直し、および往診時医療情報連携加算の新設

出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第584回) (一部抜粋、改変)

訪問診療回数が多く、看取り実績が少ない医療機関の評価は適正化

一方で、施設入所者を中心に訪問診療の実施頻度が高く、看取りの実績が少ない医療機関等は、評価を適正化します。「在宅時医学総合管理料」と「施設入居時等医学総合管理料」では、単一建物診療患者の数が「10~19人」、「20~49人」、「50人以上」の場合の評価を新設。その上で、訪問診療の算定回数が基準を上回る医療機関は、単一建物診療患者の数が10人以上の場合の評価を減額する措置を設けます(看取りの件数等が基準を満たす場合は対象外)。

患者1人あたりの訪問診療頻度が高い在支診等については、▽「在宅患者訪問診療料」の5回目以降の点数を2分の1に減額、▽直近3ヵ月の患者1人あたりの訪問診療回数が平均12回未満である-等、評価を見直します。

答申の内容からとりわけ影響度が高いと思われる項目をご紹介しました。かかりつけ医機能がより発揮されるよう、医療DXやリフィル処方・長期処方の活用等を多くの施設基準や算定要件に追加したことからも、今後それらの利用がさらに促進することは必至です。次回改定の告示は3月上旬頃の見通し。施行は経過措置を除き6月1日となります。

(編集:株式会社日本経営)
※本稿は2024年2月14日時点の情報に基づき作成いたしました。

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