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医療制度トピックス

2024年度診療報酬改定特別号

中央社会保険医療協議会は3月5日、2024年度診療報酬改定(以下、本改定)を告示しました。2024年度は、本改定・介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定のトリプル改定、第8次医療計画や、医師の働き方改革がスタートする等の変革期を迎えることからも、本改定では全般的にメリハリのきいた評価となった印象です。

俯瞰してみると1つ目のポイントは、重点課題である「人材確保と働き方改革の推進」への対応です。診療報酬では「初・再診料」や「入院基本料」の引き上げ、「ベースアップ評価料」の新設等、介護報酬では「処遇改善加算の見直し」と、いずれも賃上げを誘導する評価となっています。2つ目のポイントは「医療と介護・障害福祉の連携」あるいは「医療の拡張」ともいうべきものでしょう。病院から患者を早期に退院させ、介護保険施設等で受け入れるよう診療報酬や介護報酬、障害福祉サービス等報酬を設計。介護保険施設内の医療機能を高めることで介護保険施設から病院への入院患者を減少させる評価や、病院から介護保険施設、介護保険施設から病院、病院・介護保険施設から在宅へ移行する等の連続性や効率性を高めるための評価が設けられます(図表1)。

【医師の働き方改革】
「地域医療体制確保加算」B、連携Bの時間外労働 2024年度は年1,785時間以下

2024年4月からスタートする医師の働き方改革では、労働時間短縮の取り組みが一層進むよう、「地域医療体制確保加算」の施設基準に、医師の時間外・休日労働時間(以下、時間外労働時間等)に関する基準を追加。▽医師の労働時間を原則、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する、▽時間外労働時間等の上限水準でBまたは連携B(いずれも年1,860時間まで)に該当する医師の1年間の時間外労働時間等が国の定める基準(2024年度1,785時間以下、2025年度1,710時間以下)である-等を求めます。基準を超える医師がいる場合は、その理由や、改善計画の院内掲示およびホームページ等への掲載を求めます。

また、高度急性期治療室内の医師配置における「特定集中治療室管理料」では、専従の常勤医師の治療室内勤務を要件としない(宿日直医師を含む専任医師の医療機関内の常時配置で可)算定区分の5、6を新設。施設基準では患者指標に入室時のSOFAスコアを追加します(新区分5、6は適用外)。専任の常勤医師配置要件については、▽治療室内の配置(宿日直を行っていない医師に限る)▽医療機関内の配置(宿日直を行っている医師を含む)-等、取り扱いの明確化が図られます。その他、働き方改革を踏まえ、救急患者のいわゆる下り搬送も評価されます(病院/回復期・慢性期 【地域包括ケア病棟】にて記載)。

(図表1)2024年度診療報酬改定のポイント

(図表1)2024年度診療報酬改定のポイント

出典:告示を基に作成

病院/急性期

【地域包括医療病棟】
高齢の救急搬送患者の受け入れ先を新設 「地域包括医療病棟入院料」は1日3,050点

急性期では、高齢救急搬送患者の受け入れ先として地域包括医療病棟が新設されます。地域包括医療病棟は、急性期一般病棟が担う急性期機能の一部と、地域包括ケア病棟が担うリハビリテーションや栄養管理の機能を併せ持つ病棟であり、その一方で平均在院日数は急性期一般並みの21日以内であることから、「比較的早い在宅復帰を目指す病棟」として位置づけられています。「地域包括医療病棟入院料」は1日3,050点とし、90日を超えた場合は「地域一般入院料3(1,003点)」の点数を算定。包括評価であるため、「救急医療管理加算」をはじめとする入院料の加算、医学管理、検査、画像診断、投薬、注射、処置等の費用は「地域包括医療病棟入院料」に含める扱いとし、出来高算定は認めません。

施設基準では、▽10対1以上の看護職員配置(看護師比率70%以上)、▽常勤のリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士または言語聴覚士)を2名以上配置、▽専任の常勤管理栄養士を1名以上配置、▽入院早期からのリハビリに必要な構造設備、▽平均在院日数21日以内、▽在宅復帰率80%以上、▽自院の一般病棟からの転棟患者割合が5%未満、▽救急搬送患者または「救急患者連携搬送料」算定医療機関からの下り搬送患者の割合が15%以上、▽「脳血管疾患等リハビリテーション料」と「運動器リハビリテーション料」の届け出、▽「入退院支援加算1」の届け出-等を求めます。

附帯意見では「地域包括医療病棟の新設に伴い、10対1の急性期一般病棟については、その入院機能を明確にした上で、再編を含め評価の在り方を検討すること」と記載されたように、地域包括医療病棟は、看護職員配置が同じ10対1の「急性期一般入院料2~6」の届出病棟や、救急医療で一定の実績がある地域包括ケア病棟などからの転換が見込まれています。今後、急性期を届け出ている医療機関は厳しくなった各評価に対応するか、地域包括医療病棟に転換するか、地域包括ケア病棟として回復期に移行するか-の選択を迫られます(図表2)。

(図表2)地域包括医療病棟への移行のイメージと、機能比較

(図表2)地域包括医療病棟への移行のイメージと、機能比較

出典:厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料等について 医科全体版( 一部抜粋、改変)

【重症度、医療・看護必要度の見直し】
急性期一般入院料1の内科系病院では「厳しい内容」に

急性期病床の適正化も着実に進められます。一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)」の評価項目見直しと、それに伴う該当患者の基準・割合の変更をめぐっては支払側と診療側の意見が激しく対立し、今回も公益裁定で決着。「急性期一般入院料1(以下、急入1)」については、看護必要度IIの場合、基準・割合が①A3点・C1点以上が20%以上、かつ②A2点・C1点以上が27%以上-に設定されます。現行、許可病床200床未満の病院で認められている看護必要度Iは①21%、②28%に緩和されますが、2024年9月30日までの経過措置となっており、その後は看護必要度IIによる評価が必須となります。合わせて、許可病床200床未満に適用している緩和基準は廃止されます。

急入1での新たな基準の設定は、評価項目の見直しにおいてB項目(寝返り・移乗等の「患者の状況等」)の評価が廃止されたため。もともとB項目には介護業務を評価している性質があり、「急入1(7対1)の指標には適さない」と議論で指摘があったこと、現行の「A2点・B3点以上」で評価されるA2点の患者にも重症者がいること-等から、それらをカバーできる基準に設定されました。さらに急入1では、12年ぶりに平均在院日数も見直され、18日以内から16日以内に短縮されます。こうした施設基準の厳格化がどう影響するのか、厚生労働省が行ったシミュレーションの近似条件では基準を満たす医療機関は10%程度減少との結果もあり、7対1病床では地域包括医療病棟への移行も含めた検討も必要になりそうです。

【リハ・栄養管理・口腔管理の推進】
急性期病棟においても早期からのリハビリ介入を

入院患者に占める高齢者の割合が年々増加傾向にある「急性期一般入院基本料」等の算定病棟では、土日祝日に行うリハビリを含む「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(120点/1日)」を新設。入院患者全員に対して、入院後48時間以内にADL、栄養状態、口腔状態を評価し、計画に基づくリハビリ・栄養管理・口腔管理に取り組んだ場合、計画作成日から14日を限度として算定。施設基準では専従または専任の常勤リハビリ専門職や、専任の常勤管理栄養士の病棟配置等を求め、入院中の安静臥床によるADL低下の防止を目指します。重症患者に対する早期からのリハビリ提供を促進する狙いから「急性期リハビリテーション加算(50点/1単位)」も新設。▽発症、手術、急性増悪から7日目、▽治療開始日-のうち、早い日から起算して14日を限度に、所定点数に加算されます。

(参考資料)患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価

(参考資料)患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価

出典:厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料等について 医科全体版( 一部抜粋、改変)

病院/回復期・慢性期

【地域包括ケア病棟】
救急搬送後直接入院を評価 緊急入院受け入れの負担等を考慮

高齢救急搬送患者の受け入れが期待される地域包括ケア病棟は「在宅患者支援病床初期支援加算」について、救急搬送患者や下り搬送患者を受け入れた場合の算定区分を新設。介護老人保健施設(以下、老健)からの入院は580点、介護医療院や自宅等からの入院は480点とし、いずれも通常での入院時よりも100点高い設定となります。

「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」は、適切な在宅復帰支援を推進する観点から、入院期間に応じた評価に見直し。包括範囲における医療資源投入量が入院期間の長期化に伴って減少していく点に着目し逓減制を導入し、入院40日以内の報酬を40歳未満の勤務医や事務職員等の賃上げ対応措置として2,838~2,102点(現行、2,809~2,076点)に引き上げる一方で、41日目以降の報酬は2,690~1,992点にそれぞれ100点以上減額します(図表3)。施設基準でも、在宅医療等実績の適切な評価を行うため、▽訪問看護の実績に介護保険の訪問看護(予防給付含む)を追加、▽在宅復帰率の対象患者から「短期滞在手術等基本料1」の対象手術を実施した患者と、「短期滞在手術等基本料3」の算定患者を除く-等の見直しが行われます。

(図表3)在宅患者支援病床初期加算の見直しと、地域包括ケア病棟の施設基準のイメージ

(図表3)在宅患者支援病床初期加算の見直しと、地域包括ケア病棟の施設基準のイメージ

出典:厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料等について 医科全体版( 一部抜粋、改変)

【療養病棟】
中心静脈栄養、処置等の医療区分3への該当は開始から30日まで

「療養病棟入院基本料」は、医療区分を9区分(疾患・状態3区分×処置等3区分)に精緻化し、これに3つのADL区分を組み合わせた27分類に、スモンに関する3分類を加えた合計30分類の評価に再編。不適切なリハビリの実施を是正する観点から、医療区分・ADL区分とも1の入院料27(現行、入院料I)に該当する患者では1日2単位を超える「疾患別リハビリテーション料」を包括範囲に含める一方、適切な経腸栄養の管理を評価する「経腸栄養管理加算(300点/1日)」を新設します。また、中心静脈栄養については注射を実施している状態を明確化。広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻もしくは急性膵炎を有する患者を対象とする場合、または中心静脈栄養を開始した日から30日以内に実施した場合の評価区分と、それ以外を設けます。

【回復期リハビリテーション病棟】
「回復期リハビリテーション病棟入院料」の「運動器リハビリテーション料」を1日6単位に制限へ

より質の高いアウトカムに基づいた視点では、「回復期リハビリテーション病棟入院料(以下、回リハ入)」の「体制強化加算1、2」を廃止。また、「運動器リハビリテーション料」の算定患者を対象から外し、1日当たりの提供単位数を6単位までに制限します。さらに、▽栄養状態の評価にGLIM基準を用いること(「回リハ入2~5」は、望ましい)、▽FIMの定期的な測定(2週間に1回以上)と診療録への記載-等を要件として求めます。「回リハ入1、2」については施設基準として、▽専従の社会福祉士等の配置(経過措置 2025年5月31日まで)、▽適切な口腔ケアの提供と受診勧告、▽地域貢献活動に参加することが望ましい、▽FIM測定に関わる職員を対象とした研修会の実施(「回リハ入1、3」のみ/経過措置 2024年9月30日まで)-等も追加となっています。

【精神科医療】
精神科地域包括ケア病棟新設で地域移行を後押し

精神科医療では、精神疾患患者の地域移行や地域定着を推進する観点から、▽多職種の重点的な配置、▽在宅医療の提供実績、▽自宅等への移行率の実績、▽診療内容に関するデータの提出-等の施設基準を設定した精神科地域包括ケア病棟を新設し、「精神科地域包括ケア病棟入院料(1,535 点/1日)」を設定。また、入院早期から入退院支援を行った場合の評価「精神科入退院支援加算(1,000点/退院時1回)」を新設し、「精神科措置入院退院支援加算(300点/退院時1回)」を注加算として統合します。算定対象は、退院困難で入院中の場合、在宅での療養を希望する患者となります。

【認知症関連】
身体的拘束を最小化へ

その他、認知症関連では、身体的拘束最小化の取り組み推進について、「認知症ケア加算」の点数を引き上げるとともに、身体的拘束の実施日の有無による点数を見直し(拘束を実施した日には、所定点数を40%に減算)。また、かかりつけ歯科医との認知症患者の情報共有・連携等の評価が「歯科疾患管理料 総合医療管理加算」へ追加され、歯科医等との連携も強化されます。

なお、身体的拘束では、入院料の通則において、「組織的に身体的拘束を最小化する体制」を整備する基準を3月5日付で規定しています。

長期収載品の一部 選定療養化へ

後発医薬品の使用を促す長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の選定療養化が進められます(2024年10月1日から施行)。

選定療養の対象になる品目は、長期収載品のうち、▽後発医薬品の上市から5年以上経過(市場に後発医薬品がほとんどない等、置換率が極めて低い場合(1%未満)は対象外)、▽後発医薬品の上市から5年を経過していない場合は後発医薬品への置換率が50%以上-のいずれかに該当するもの(厚生労働省の試算によると、約710成分の長期収載品が選定療養の対象になる見込み)。選定療養の適用となるのは、▽患者の希望で医師が長期収載品を銘柄名処方した場合、▽一般名処方だが、患者の希望で長期収載品を調剤した場合-等が該当します。なお、対象品目であっても、▽医師が医療上の必要性を認める銘柄名処方(後発医薬品への変更不可)の場合、▽薬局に後発医薬品の在庫が無い等、患者に後発医薬品を提供することが困難な場合-については、これまでと変わらず保険給付の対象になります。

後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の1が選定療養となり、残額の30%と選定療養の消費税分との合計を患者から徴収します(図表4)。

(図表4)長期収載品 選定療養適用のイメージ(3割負担の場合)

(図表4)長期収載品 選定療養適用のイメージ(3割負担の場合)

出典:告示を基に作成

医療・介護・保険薬局の連携

【介護との連携】
協力医療機関の往診、入院調整を評価 障害福祉サービスとの連携も

本改定では、医療と介護のスムーズな連携への評価が多く設定されます(図表5)。在宅療養支援診療所(以下、在支診)等や、地域包括ケア病棟は、介護保険施設の求めに応じて協力医療機関となることが望ましい-と要件化されます。

新設の「協力対象施設入所者入院加算(以下、入院加算)」は、介護保険施設入所者の急変時に協力医療機関の医師が診察をした上で入院させた際に算定可能です(往診を行った場合は600点、それ以外の場合は200点/入院初日)。施設基準では、▽緊急時に入所者が入院できる病床の常時確保、▽在支診等または地域包括ケア病棟・病室を持つ医療機関であること、▽介護保険施設と平時からの連携体制を構築-等の要件を満たすことを求めます。また、協力医療機関の医師が、介護保険施設入所者の急変時に往診を行った場合の「介護保険施設等連携往診加算(200点)」を新設。算定にあたっては、入院加算と同様、介護保険施設との連携体制構築に加え、介護保険施設から24時間連絡を受ける担当者を予め指定し、その連絡先を介護保険施設に提供しておく必要があります。

医療保険の疾患別リハビリテーションから、介護保険の訪問・通所リハビリへのスムーズな移行を促す対策も講じます。脳血管疾患等、廃用症候群、運動器の各リハビリテーション料の算定要件や施設基準において、患者が他のリハビリを提供する医療機関や訪問・通所リハビリに移行する場合は、移行先の医療機関・事業所にリハビリ実施計画書等を文書で提供することを要求(「心大血管疾患リハビリテーション料」は他の医療機関への移行のみを対象に同様の規定を新設/現行の「リハビリテーション計画提供料1、2」は廃止)。さらに訪問・通所リハビリの利用予定がある患者に対し、退院時の共同指導を行う際には、リハビリ事業所の医師等の参加を求めることが望ましい旨を、「退院時共同指導料2」の要件に追加します。

その他、かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療料・加算」では、サービス担当者会議や地域ケア会議への参加実績、ケアマネジャーとの相談等に関する施設基準を追加。有床診療所での「介護障害連携加算(「介護連携加算」より名称変更)」では、肢体不自由児(者)を対象として追加し、介護保険の訪問リハビリテーション、訪問栄養食事指導および障害福祉サービスの医療型短期入所の提供実績を基準として追加します。

(図表5)医療と介護の連携推進

(図表5)医療と介護の連携推進

出典:厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料等について 医科全体版( 一部抜粋、改変)

【保険薬局との連携】
「調剤後薬剤管理指導加算」は「指導料」に格上げ、慢性心不全を対象に追加

薬剤師が地域の医療機関と連携して行う、調剤後のフォローアップ業務の推進では、現行の「服薬管理指導料」の「調剤後薬剤管理指導加算」を廃止し、「調剤後薬剤管理指導料」に変更。対象になる糖尿病薬の範囲拡大と、対象患者へ慢性心不全患者の追加を行います。点数設定は糖尿病患者、慢性心不全患者とも60点(月1回/「服薬情報等提供料」との併算定は不可)。算定要件では、▽調剤後に電話等による使用状況や副作用の有無等を確認、▽必要な薬学的管理と指導の継続的な実施、▽処方医に必要な情報を文書で提供-を求めます。なお、「調剤後薬剤管理指導料」が対象とする業務や、「吸入薬指導加算(30点/3カ月に1回)」が評価する吸入薬に関する情報提供、服薬指導は、かかりつけ薬剤師が通常行う業務の範囲には含まれないことから、いずれの報酬とも「かかりつけ薬剤師指導料」患者での併算定を認めます。

「服薬情報等提供料2」リフィル処方箋調剤後の処方医への文書での情報提供を評価

さらに保険薬局と医療や介護等の多職種連携推進(図表6)では、薬剤師が行う情報提供の評価として「服薬情報等提供料2」の評価を細分化。薬剤師が必要性を認め、▽医療機関に必要な情報を文書により提供した場合、▽リフィル処方箋での調剤後、処方医に必要な情報を文書により提供した場合、▽ケアマネジャーに必要な情報を文書により提供した場合-は、1ヵ月につき各20点が算定可能です。その他、介護保険施設への適切な薬剤提供や服薬管理等を推進するため、「服薬管理指導料3」の対象患者を特別養護老人ホームの利用者限定から、ショートステイ等の利用者に拡大(処方箋受付1回につき月4回まで)。

また、「外来服薬支援料2」で新設された「施設連携加算(50点/月1回)」では、▽特別養護老人ホーム等と協働した保険薬局の薬剤師が、患者の入所時に施設職員と協働し患者が服薬中の薬剤を含めた服薬管理の支援-等が算定要件となります。なお、「施設連携加算」の具体的業務内容等では、▽施設入所時に服用薬剤が多い、▽新たな薬剤処方もしくは薬剤の用法や用量が変更、▽副作用等の体調の変化について施設職員からの相談-等の留意事項通知が付記されています。

(図表6)保険薬局を中心とした医療と介護との連携推進

(図表6)保険薬局を中心とした医療と介護との連携推進

出典:厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料等について 調剤版( 一部抜粋、改変)

保険薬局/調剤

【後発医薬品】
関連項目は軒並み引き上げ 「地域支援体制加算」要件を厳格化、7点の引き下げ

調剤報酬では、リフィル処方箋や長期処方の推進、電子処方箋等の普及によって効率的な処方体系の整備が進むことを見込み、「処方箋料」が適正化されます。一方、後発医薬品の使用促進に関連する加算「処方箋料」の「一般名処方加算(以下、加算)」では「加算1」を10点(現行7点)、「加算2」を8点(現行5点)に引き上げるとともに、医薬品の供給状況等を踏まえつつ、一般名処方の趣旨を患者に十分説明することの院内掲示とホームページへの掲載を施設基準に追加。同様に「後発医薬品使用体制加算1~3」は40点ずつ、「外来後発医薬品使用体制加算1~3」は3点ずつの引き上げを実施。いずれも、▽医薬品の供給不足が生じた場合に治療計画や処方の変更に対応できる体制の整備、▽医薬品の供給状況次第で薬剤を変更する可能性があることを院内掲示とホームページへ掲載-等を施設基準に追加します。

「地域支援体制加算」では、「地域支援体制加算1」の施設基準で新たに「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」の合計算定実績を満たすことを必須とするなど、保険薬局のかかりつけ機能を適切に評価する方向で要件を厳格化します(図表7)。また、「調剤管理料」の「重複投薬・相互作用等防止加算」では、薬剤師から処方医への照会で残薬調整により処方が変更された場合は、残薬調整時が20点(現行30点)に減算となります。算定する場合は、残薬および重複投薬が生じる理由を分析するとともに、必要に応じてその理由を処方医に情報提供することが必要です。

(図表7)地域支援体制加算の見直し(赤字:変更・新規の要件)

(図表7)地域支援体制加算の見直し(赤字:変更・新規の要件)

出典:厚生労働省 2024年度診療報酬改定説明資料等について 調剤版( 一部抜粋、改変)

【敷地内薬局】
罰則強化、地域支援体制加算等の減算割合90%に

いわゆる敷地内薬局については、「調剤基本料」での対応を一層厳格化するとともに、特別な関係にある医療機関に情報提供を行った場合には「薬学管理料」等における一部加算の算定が不可となります。敷地内薬局が属するグループ薬局全体の「調剤基本料」を一律に引き下げる案は見送り、2026年度改定に向けて議論を継続することになりました。

(編集:株式会社日本経営)
※本稿は2024年3月5日時点の情報に基づき作成いたしました。
今後の疑義解釈やQ&A等により変更となる場合がございます。

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