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トピックス

持続可能な地域医療提供体制へ~公立病院経営強化プラン

2022年3月、総務省から「公立病院経営強化の推進について」の通知が発出されました。この通知は「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会」がまとめた「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン(以下、ガイドライン)」に基づき、「公立病院経営強化プラン」を策定することを求めるものです。

公立病院は多くの自治体にとって大きな財政的な負担になっており(図表1)、その課題を軽減するために2007年度「公立病院改革ガイドライン」に基づく「公立病院改革プラン」、2014年度「新公立病院改革ガイドライン」に基づく「新公立病院改革プラン」が策定され再編が行われてきました。この結果、2008年度から2020年度にかけて193の公立病院が再編に取り組み、公立病院数は943から853に減少、病床数も228,280床から203,882床に減少しています。また、2020年度には94病院が地方独立行政法人に移行、79病院が指定管理者制度に移行しており、地方公営企業法の全部適用が382病院、一部適用が298病院となるなど経営の見直しが着々と進んでいます。

(図表1)公立病院の全病院数に占める経常損失・経常利益を生じた病院数の割合

(図表1)公立病院の全病院数に占める経常損失・経常利益を生じた病院数の割合

出典:総務省 公立病院経営強化ガイドライン等に関する説明会(2022年4月)資料1 (一部抜粋、改変)

しかし、人口の減少や高齢化など公立病院の抱える課題は重く、今回のガイドラインは、さらに機能分化・連携や経営形態の見直しを求めるとともに、働き方改革や新型コロナウイルス感染症など新興感染症への対応を求めるものとなっています。今号では、「公立病院経営強化プラン」を中心に、今後の地域医療との関わりを見ていくことにしましょう。

公立病院経営強化ガイドラインの問題意識

ガイドライン策定の背景となっている公立病院の課題をまとめると、次のようになります。

  • 公立病院は、地域における基幹的な公的医療機関として、地域医療の確保のため重要な役割を果たしているが、経営状況の悪化や医師不足等のために経営維持が困難化しているところが多い。
  • 公立病院改革プラン及び新公立病院改革プランを策定してきたが、依然として、医師・看護師等の不足、人口減少や少子高齢化の急速な進展に伴う医療需要の変化、医療の高度化といった経営環境の急激な変化等に対応できていない病院も多い。
  • 新型コロナウイルス感染症対応における公立病院の役割の重要性は再評価された。特に機能分化・連携強化の取組により、新たに基幹病院となったところや経営形態を地方独立行政法人化したところは円滑に対応できた。
  • 「新経済・財政再生計画 改革工程表 2021(2021年 12 月 23 日 経済財政諮問会議決定)」で各都道府県における第8次医療計画(2024年度~2029年度)の策定作業と併せて、2022年度及び2023年度において、「地域医療構想に係る各医療機関の対応方針の策定や検証・見直しを求める」とされ、公立病院にもその対応が求められている。
  • 医師の働き方改革により時間外労働規制が医師にも原則として適用されることとなったため、公立病院の医師不足が深刻化する。
  • 第8次医療計画から「新興感染症等の感染拡大時における医療」が記載事項に追加され、公立病院も平時から取り組む必要がある。

公立病院経営強化プランの策定義務

公立病院を設置する地方公共団体は公立病院経営強化プランを22年度又は23年度中に策定することになりました。公立病院経営強化プランは、地域医療構想と整合的でなくてはなりませんし、すでに新公立病院改革プランに基づき、再編・ネットワーク化や経営形態の見直し等に取り組んでいる場合であっても、策定が必要となります。

具体的な記載項目には、(1)役割・機能の最適化と連携の強化(地域医療構想や地域包括ケアシステムの構築に向けて果たすべき役割・機能、機能分化・連携強化)、(2)医師・看護師等の確保と働き方改革(不採算地区病院等への医師派遣の強化や医師の働き方改革への対応など)、(3)経営形態の見直し(独立行政法人化や地方公営企業法の全部適用など)、(4)新興感染症の感染拡大時等に備えた平時からの取組、(5)施設・設備の最適化(施設・設備の適正管理と整備費の抑制、デジタル化への対応)、(6)経営の効率化等(経営指標の数値目標設定)―が挙げられています(図表2)。

(図表2)各地方公共団体に策定を求める「公立病院経営強化プラン」の主なポイント

(図表2)各地方公共団体に策定を求める「公立病院経営強化プラン」の主なポイント

出典:総務省 公立病院経営強化ガイドライン等に関する説明会(2022年4月)資料1 (一部抜粋、改変)

公的病院や民間病院、かかりつけ医機能を担う診療所等との連携強化も含めた幅広い視点で検討を

このうち(1)の「機能分化・連携強化」については、限られた医療資源の効率的活用を実現する観点から、「特に、地域において中核的医療を行う基幹病院に急性期機能を集約して医師・看護師等を確保し、基幹病院以外の病院等は回復期機能・初期救急等を担うなど、双方の間の役割分担を明確化するとともに、連携を強化することが重要」との考えを強調しました。その際には、公立病院同士にとどまらず、公的病院や民間病院、かかりつけ医機能を担う診療所等との連携強化も含めた幅広い視点で検討を進めるよう促しています。

なお、総務省は今後、経営強化プランに基づく取組を支援するための財政措置として、▽機能分化・連携強化に伴う施設・設備の整備費について、病院事業債(特別分)を充当できる対象経費を拡充▽医師派遣等に係る特別交付税措置について、看護師等の医療従事者の派遣や診療所への派遣を対象に追加し、派遣元に対する措置を拡充―などを実施する考えです。

前述の課題を踏まえたガイドラインでは「今後の公立病院経営強化の目指すところは、公・民の適切な役割分担の下、地域において必要な医療提供体制の確保を図り、その中で公立病院が安定した経営の下でへき地医療・不採算医療や高度・先進医療等を提供する重要な役割を継続的に担っていくことができるようにすること」としています。つまり公立病院が生き残っていくための「経営強化が求められる」と言い換えることができるでしょう。そのため、ガイドラインでは「各公立病院が担うべき役割・機能を改めて見直し、明確化・最適化」が必要だとしています。

また、医師・看護師等の確保を経営強化プランに盛り込むこととなっていますが、現実的な取組の記載ができない病院は経営形態の見直しが求められています。経営強化プラン策定の過程で、地方独立行政法人化や指定管理者制度などへの移行が進められる可能性もあるでしょう。経営強化プランによる機能分化に対応した施設・設備の適正管理と整備費の抑制やデジタル化への対応も求められています。経営強化の取組により、持続可能な地域医療提供体制を確保していくことが期待されています。

具体的対応方針の策定と再検証 2022・23年度中に民間医療機関を含む全病院で実施を

総務省からの「公立病院経営強化の推進について」の通知発出と前後して、厚生労働省は地域医療構想の今後の進め方について整理した医政局長通知を都道府県知事宛に送付しました。22年3月上旬の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」での方針決定を踏まえたもので、民間医療機関を含む全医療機関に対して2022・23年度中の具体的対応方針の策定、検証・見直しの実施を求めています。

通知では、都道府県における「第8次医療計画」(24~29年度)の策定作業が23年度までかけて進められる際には、病床の機能分化・連携に関する議論を行う必要があるため、地域医療構想についてもこの作業と併せて22・23年度中に公立・公的・民間医療機関の具体的対応方針の策定や検証・見直しを行うと明記。このうち公立病院については、総務省のガイドラインに沿って病院ごとに策定される「公立病院経営強化プラン」を具体的対応方針とし、地域医療構想調整会議で協議する取扱いを示しています。

地域医療構想調整会議における議論の活性化を図るための具体案も記載。例えば高度急性期・急性期機能を担う病床の協議では、厚生労働省の診療実績の分析には含まれていない胆嚢摘出手術や虫垂切除手術などの実施状況、抗がん剤治療などの内科的診療の実績、医療機関同士の距離―などのデータを必要に応じて参照することや、重点支援区域に対して行われる国の技術的支援の活用などを推奨しました。

検討状況の定期的報告と公表も求められ、22年度については、22年9月末と23年3月末時点の検討状況(図表3)を所定の様式に記入し、厚生労働省に報告。都道府県のホームページ等でも報告内容を公表すること-としています。また、重点支援区域は本来、都道府県からの申請を受けて厚生労働省が選定する運用となっていますが、厚生労働省が今後、全都道府県に対して申請の意向を聞く予定であることを明らかにしました。

(図表3)地域医療構想調整会議における検討状況の国への報告様式【案】

(図表3)地域医療構想調整会議における検討状況の国への報告様式【案】

出典:厚生労働省 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(第3回)資料2 (一部抜粋、改変)

2025年度が近づき、今後急速に医療ニーズが増大することは周知の事実です。期限が迫る中、地域医療構想の実現に向けて、公立・公的病院のみならず、民間病院も含めた全病院に対して、「地域での機能・規模が妥当なものとなっているのか?」といった再検証が求められています。今後の病院再編に向けて自院はどうあるべきなのか、地域でのあり方が問われています。

(編集:株式会社日本経営 2022年6月作成)

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