全サービスでLIFEを活用し、科学的介護を目指す
厚生労働省は2021年3月15日、2021年度介護報酬改定を官報告示しました。全体で0.70%のプラスとなった改定財源を活用して全サービスの基本報酬を原則、引き上げるとともに、このうち0.05%分は新型コロナウイルス感染症への対応として、21年4月から9月末までの間、基本報酬に0.1%の上乗せを行います。
今改定は、①感染症や災害への対応力強化、②地域包括ケアシステムの推進、③自立支援・重度化防止の取組の推進、④介護人材の確保・介護現場の革新、⑤制度の安定性・持続可能性の確保―の5つが柱となっています。今号では、全体の改定内容に触れながら、②地域包括ケアシステムの推進について注目します。
全サービスに関する事項では、感染症のまん延や災害への日頃からの備えとして、業務継続に向けた計画の策定や研修、訓練(シミュレーション)の実施を義務化(3年間の経過措置あり)。業務の効率化と負担軽減を図るため、運営基準で求められる各種会議の開催では、テレビ電話などのICTの活用を広く許可し、高齢者の状態やケアの内容などのデータベース「CHASE」とリハビリテーションに関する情報のデータベース「VISIT」を、21年4月より「LIFE」(科学的介護情報システム)に名称を統一。4月からの一体的運用開始に向け、両データベースを活用した計画の作成と事業所単位でのPDCAサイクルを推進することで、ケアの質の向上に結びつけます。
その他、主だった個別項目を見ると、介護医療院では療養病床に1年以上入院していた患者を受け入れた場合の評価として、「長期療養生活移行加算」(60単位/日・入所から90日間に限り算定可能)を新設。介護療養型医療施設からの転換促進策では、介護療養型医療施設に対して半年ごとに移行計画の提出を求めることとし(初回の期限は21年9月末)、提出がない場合は次の期限までの間、「移行計画未提出減算」として、基本報酬を1日10%減算する介護療養型医療施設の基本報酬(療養型医療施設サービス費)の引き下げを実施。18年度改定時に創設された「移行定着支援加算」は廃止されます。
介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院の共通事項では、入所者の自立支援・重度化防止の取組の評価として、「自立支援促進加算」(300単位/月)を新設。「口腔衛生管理体制加算」と「栄養マネジメント加算」は廃止して基本報酬に組み込むこととされ、栄養ケア・マネジメントを行わない場合は1日14単位を減算します(3年間の経過措置あり)。「低栄養リスク改善加算」も廃止されますが、代わりに入所者全員への丁寧な栄養ケアの実施や体制強化等を評価する「栄養マネジメント強化加算」(11単位/日)が新設となりました(図表1)。
介護人材の確保では、「介護職員等特定処遇改善加算」における平均の賃金改善額の配分について、「経験・技能のある介護職員はその他の介護職員の2倍以上」とするルールを、単に「その他の介護職員より高くする」に緩和。「介護職員処遇改善加算」の(IV)・(V)は、上位区分の算定が進んでいることから、1年の経過措置期間の後、廃止することになりました。
(図表1)介護保険施設における口腔衛生の管理や栄養ケア・マネジメントの強化(施設系サービス)
出典:厚生労働省 第199回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1 令和3年度介護報酬改定の主な事項について・参考資料1 令和3年度介護報酬改定における改定事項について(一部抜粋、改変)
今改定の5つの柱の2つ目「地域包括ケアシステムの推進」では、(1)認知症への対応力向上に向けた取組の推進、(2)看取りへの対応の充実、(3)医療と介護の連携の推進、(4)在宅サービスの機能と連携の強化、(5)介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化、(6)ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保、(7)地域の特性に応じたサービスの確保―の項目が示されました。