閉じる

トピックス

循環器病対策推進基本計画

PDFで見る(17.6MB)PDF

基本計画・推進計画は6年ごとに見直し、健康寿命延伸と医療・介護費軽減へ

いよいよ「循環器病対策推進基本計画(以下、基本計画)」が策定される見込みです。それを受けて都道府県は、「都道府県循環器病対策推進計画(以下、推進計画)」を作成することになっており、予防から医療・福祉の提供体制の充実、研究推進までの幅広い総合的な対策が動き出すことになります。厚生労働省は2020年3月に、循環器病対策推進協議会(以下、協議会)に基本計画の骨子案を提示しており、2020年7月16日での協議会において、循環器病対策推進基本計画(案)が大筋了承。今後は、パブリックコメントを経て、閣議決定する方針です。都道府県では、早ければ今年中に第1期の推進計画をまとめ、2021年から具体的な取り組みが始まる予定です。

2018年12月、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(以下、循環器病対策基本法)が成立しました。それまでを振り返ると、2008年に日本脳卒中協会は「脳卒中対策基本法」の法制化を目指して活動を始めましたが、東日本大震災や政局が影響し、ようやく2014年に議員立法。しかし個別疾患に対して基本法を作ることへの批判もあり、継続審議の結果、廃案となりました。その後、日本循環器学会などの申し入れを受け、心疾患を合わせた包括的な基本法の法制化に取り組むことになった経緯があり、関係者にとっては10年越しの悲願だったことは周知のことかと思います。

循環器病対策基本法は、予防推進と医療提供体制の整備・強化に取り組むことで、国民の健康寿命の延伸と医療・介護費の軽減を目指すものです。基本理念には、▽予防および発症時の迅速・適切な対応の重要性の国民啓発▽適切な医療・福祉サービスを居住地域にかかわらず等しく受けられる体制の整備―が掲げられています(図表1)。また、循環器病対策基本法では、国が協議会を設置し、その意見を聴いて基本計画を策定、それを基に都道府県が推進計画を策定することを求めています。これらの両計画は、取り組みの効果への評価を踏まえ、少なくとも6年ごとに見直すことを定めています。

(図表1) 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(循環器病対策基本法)の概要

出典:厚生労働省 第5回 循環器病対策推進協議会 参考資料2(一部抜粋、改変)

基本計画は全体目標と個別の具体策 急性期から在宅まで包括支援体制を

2020年7月に大筋了承された基本計画の骨子案では、循環器病対策基本法の基本理念に照らし、①循環器病の予防や普及啓発、②保健、医療、福祉サービス提供体制の充実、③循環器病の研究推進―の達成を通じて、「健康寿命の延伸、循環器病の年齢調整死亡率の減少」を目指すことを全体目標としています(図表2)。そして、3つの目標ごとに、それらを達成するための個別具体策を盛り込んだものとなっています。

このうち、①の「循環器病の予防や普及啓発」では、子どもから高齢者までライフステージに応じて、健やかで心豊かに生活できるよう、生活習慣(運動、栄養、禁煙など)や社会環境の改善を通じて、子どもの頃からの生活習慣病の予防や普及啓発を推進。また、予防や発症早期の対応などについて分かりやすく伝えるため、SNS(Social Networking Service)などを活用した効果的な情報発信やマスメディアとの連携等の多様な手段を用いる―としています。

②の「保健、医療、福祉サービス提供体制の充実」については、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、社会福祉士、介護支援専門員などの多職種が連携して、予防、重症化・再発予防、相談・生活支援などの総合的な取り組みを進める包括的な支援体制の必要性を指摘。循環器病は、発症後に迅速な治療を行えるかどうか、治療後はリハビリテーションの提供や重症化・再発予防など、多職種によるアプローチが重要であることから、患者の予後やADL(Activities of Daily Living)等の維持向上を図るため、発症後早急に適切な治療を開始する高度急性期・急性期から、回復期・慢性期までの病床の機能分化・連携、在宅医療の推進などにより、地域の実情に応じた切れ目のない医療提供体制を構築する―としています。

③の「循環器病の研究推進」では、患者のニーズや安全性の確保を踏まえつつ、産学連携や医工連携も図りながら、循環器病の病態解明、新たな治療法や診断技術の開発、リハビリテーション、個人の発症リスク評価や予防法の開発、政策立案などに関する研究を推進するとしています。厚生労働省では、「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業」(図表3)を実施しているところであり、2020年度予算でも「循環器病の医療体制構築に資する自治体が利用可能な指標等を作成するための研究」や「循環器病領域における治療と仕事の両立支援に関する研究」などへの支援を行っています。今後も一次予防から治療、診断までを網羅し、体系的な研究の推進により健康寿命の延伸を目指していくことになります。

(図表2) 循環器病対策推進基本計画の構成(案)

出典:厚生労働省 第4回 循環器病対策推進協議会 資料1(一部抜粋、改変)

(図表3) 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業

出典:厚生労働省 第5回 循環器病対策推進協議会 参考資料2(一部抜粋、改変)

診療情報の大規模データベースを臨床に活用、急性期の診療情報をセンターに集約

また骨子案では、上記①~③の個別施策を実施するにあたり、その基盤として、診療情報の収集提供体制を整備し、循環器病の実態解明を目指すことも盛り込んでいます。具体的には、急性期医療現場での活用や診療提供体制の構築、予防(一次・二次・三次)などの公衆衛生に活用することを目的として、国立研究開発法人国立循環器病研究センターや関係学会を交えて脳梗塞、脳出血、くも膜下出血-等の診療情報を収集・活用する公的な枠組みを構築するというものです(図表4)。これは、2019年7月に「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」が取りまとめた報告書を踏まえたもので、対象医療機関の診療情報(当初は急性期入院)を新設するセンターに集約し、大規模データベースを構築。対象医療機関がアクセスして臨床に活用することを柱としています。

予防・治療・研究の総合的な対策が法制化される中で、それだけではなく情報収集やその利活用も重要施策に位置付けられています。前号でご紹介した「オンライン資格確認システム」と同様、「データヘルス改革」を視野に入れた施策であることは言うまでもありません。今後の動向に注目が集まります。

(図表4) 非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会 報告書(2019年7月)概要 診療情報の収集・活用のイメージ

出典:厚生労働省 第5回 循環器病対策推進協議会 参考資料2(一部抜粋、改変)

(編集:株式会社日本経営 2020年9月作成)

本資料の内容に関する一切の責任は株式会社日本経営に帰属します。また、この資料のいかなる部分も一切の権利は株式会社日本経営に所属しており、電子的又は機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ無断で複製又は転送等はできません。使用するデータ及び表現等の欠落、誤謬等につきましてはその責めを負いかねます。なお、内容につきましては、一般的な法律・税務上の取扱いを記載しており、具体的な対策の立案・実行は税理士・弁護士等の方々と十分ご相談の上、ご自身の責任においてご判断ください。