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トピックス医療保険のオンライン資格確認導入

医療機関は省力化・事務経費削減、薬剤や特定健診情報の閲覧も可能に
オンライン資格確認等システム

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病院では最大105万円を補助、8月から導入作業に着手を

2020年度診療報酬改定と、新型コロナウイルスへの緊急対応で幕を開けた2020年度ですが、2021年3月からは医療保険の「オンライン資格確認」が導入される予定です。オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができる仕組みのことです(図表1)。このシステムを円滑に導入するためには、医療機関・保険薬局でレセプトコンピューターや電子カルテシステムなど既存システムの改修が必要になりますが、その初期導入経費については「医療情報化支援基金(以下、支援基金)」による補助金が活用できることになっています。

2020年11月ごろには補助申請の受付が始まる予定ですが、厚生労働省は補助の内容や利用開始のスケジュールなどを明らかにし、ホームページ上で周知を図っています(図表2)。

(図表1) オンライン資格確認とは

出典:厚生労働省 オンライン資格確認導入の手引き(一部抜粋、改変)

(図表2) オンライン資格確認の利用開始に向けたスケジュール

出典:厚生労働省 オンライン資格確認導入の手引き(一部抜粋、改変)

医療情報化支援基金、2020年度予算では768億円

医療分野においてもICTを積極的に活用し、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築していくことが急務とされるなか、医療機関等のICT化を支援する目的で、「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(以下、医療介護総合確保法)」(2019年10月1日改正・施行)に基づき創設されたのが支援基金です。厚生労働省予算には、2019年度に300億円、2020年度に768億円が計上されています(図表3)。

支援基金の対象事業は、①オンライン資格確認の導入に向けた医療機関・保険薬局のシステム整備の支援、②電子カルテの標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等導入の支援-の2つです。そのスキームとしては、消費税財源を活用した支援基金が社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)に造成され、システム整備を行った医療機関等は支払基金に対し申請を行い、一定の要件を満たすシステム整備と判断されれば、その整備費用の一部が支援基金の資金によって補助されることになります。

支援基金の対象事業のうち、①オンライン資格確認の導入については、医療保険の被保険者番号を個人単位化し、マイナンバー制度のインフラを活用して、個人単位で資格情報などのデータを一元管理するとともに、マイナンバーカードの健康保険証としての利用を進めることがねらいです。「骨太方針2018」で2020年度の本格運用開始が明示され、2019年6月にデジタル・ガバメント閣僚会議が定めた「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」には、2022年度中に概ねすべての医療機関等で導入するとの目標が盛り込まれました。

マイナンバーカードによるオンライン資格確認は、顔認証付きカードリーダーで患者の顔とカードの顔写真を照合した上で、カードのICチップ内の電子証明書を読み取ります。その電子証明書から患者(カード保有者)を特定し、個人単位被保険者番号と資格情報などを管理する支払基金・国保中央会(保険者が委託)から、患者に紐付けられた最新の資格情報が医療機関等に提供されるというものです。その際、医療機関等の窓口ではマイナンバーカードを預からず、マイナンバーを使用することもないので、マイナンバーと診療情報が紐付くことはありません。

では、導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。医療機関や保険薬局では、カードリーダーにかざすだけで医療保険の資格確認ができるので省力化が図られ、請求誤り等が減って事務コストが削減されることが期待されます。一方、被保険者は就職、転職、転居に関係なく、マイナンバーカードを健康保険証として継続的に利用でき、高額療養費の限度額認定証や高齢受給者証などの書類を医療機関の窓口に持参する必要もなくなります。また、支払基金・国保中央会では個人単位被保険者番号を資格情報のほか、薬剤情報や特定健診情報などとも1対1で管理するため、医師は薬剤情報や特定健診情報を、薬剤師は薬剤情報を患者の同意のもとで確認でき、被保険者もマイナポータルで自分の薬剤情報や特定健診情報を確認できるようになります(図表4)。

(図表3) 医療情報化支援基金(マイナンバーカード保険証利用等)について

出典:厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会(第123回2019年12月25日)(一部抜粋、改変)

(図表4) 医療機関・保険薬局で変わること

出典:厚生労働省 オンライン資格確認導入の手引き(一部抜粋、改変)

(参考)電子カルテシステムの普及状況の推移

出典:厚生労働省 電子カルテシステム等の普及状況の推移(一部抜粋、改変)

診療所の改修補助は32.1万円が上限 カードリーダーは無償配布の予定

支援基金による医療機関・保険薬局への補助対象となるのは、マイナンバーカードの読取・資格確認等のソフトウェア・機器の導入、ネットワーク環境の整備、レセコン、電子カルテ等の既存システムの改修費用などです。電子カルテシステムの改修は、資格確認だけでなく、薬剤情報や特定健診情報の閲覧のための改修を含みます。

補助率は、病院と大型チェーン保険薬局(グループで処方箋の受付が月4万回以上の保険薬局)が事業費の2分の1で、診療所と大型チェーン保険薬局以外の保険薬局が4分の3です。たとえば、病院が顔認証付きカードリーダーを3台導入する場合は95.1万円を上限に補助します。大型チェーン保険薬局が1台導入する場合は21.4万円、それ以外の保険薬局や診療所では32.1万円がそれぞれ上限となります(図表5)。

なお、顔認証付きカードリーダーの導入については、支援基金の補助金交付対象1台9.9万円を上限に補助するなどとしていますが、今国会に提出されている「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」が成立した場合には、支払基金で一括調達し、医療機関・保険薬局に無償配布する予定です。

オンライン資格確認や特定健診情報の閲覧は2021年3月から、薬剤情報の閲覧は2021年10月から開始されます。厚労省は、医療機関等が2020年8月ごろから導入作業を進めれば、オンライン資格確認の開始に間に合うとしています。

また、顔認証付きカードリーダーの申込、オンライン資格確認等システムの利用申請、支援基金の補助申請は、2020年6月ごろに支払基金が開設する専用ポータルサイトで受付が行われます。補助申請の手続きについては、支払基金が今後周知し、11月ごろに開始される見込みです。

コロナ禍での時限的な初診からのオンライン診療・服薬指導解禁や、キャッシュレス化・セルフレジの導入など、今後医療業界でもICT化は一気に進んでいくことが予想されます。メリット・デメリットの両面があるICT化ではありますが、それらのバランスをどのようにとって導入していくのかが、今後の鍵となっていきそうです。

(図表5) 支援基金による医療機関・保険薬局への補助

出典:厚生労働省 オンライン資格確認導入の手引き(一部抜粋、改変)

(編集:株式会社日本経営 2020年6月作成)

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