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医療制度トピックス『令和』時代に向けて

「令和」時代のコミュニケーションとは?
AIやロボットの台頭とヒューマンコミュニケーション力の向上

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新元号が5月から「令和」になりました。新時代の医療業界、これから何がどのように変化していくことになるのでしょうか。AIやロボットの普及はますます加速し、私たちの業務範囲も大きく変化していく中、何に重きを置くべきなのでしょうか。「令和」時代に向けたレポートをお届けします。

改元に伴う対応

改元日以降の日付が「平成」「令和」いずれでも
必要な読替えをして届出受理を

改元に伴い、電子カルテ、医事・会計等のシステム改修に着手されているかと思われますが、2019年4月22日に発出された厚生労働省通知(保医発0422第2号)では、「旧様式による用紙(診療録や処方箋、各種の申請・届出書類)については、合理的に必要と認められる範囲内で、当分の間、例えば、訂正印や手書きによる訂正等により、これを取り繕って使用することができることとする」とされています。
 国民生活への影響をできる限り少なくする観点から「▽改元日前に「令和」により改元日以降の日時が表記されている場合、▽改元日以降に「平成」により改元日以降の日時が表記されている場合-のいずれについても、必要な読替えを行った上で、これを受理する」としており、医療機関等から患者等に交付する文書でも、同様に有効なものとして取り扱うことができます。

対象となる様式

  • 診療録(医科・歯科)
  • 処方箋
  • 保険医療機関、または保険薬局の指定申請様式
  • 保険医療機関指定変更申請書
  • 保険医又は保険薬剤師の登録申請様式
  • 保険医又は保険薬剤師の登録票
  • 診療報酬請求書
  • 診療報酬明細書
  • 調剤報酬請求書
  • 調剤報酬明細書
  • 訪問看護療養費請求書

(制作・編集 日本経営株式会社)
(更新:2019年6月)

AIやロボットが普及すると
医療事務はなくなるのか?!

現在、日本は超少子高齢社会を迎えています。その結果、生産人口が減少する中、どのように労働力の確保を図るかが重要命題となっていますが、一方、政府が進める働き方改革では、先進国で最も低いと言われる我が国の「生産性向上」を目指して、AIやロボットの推進を後押ししています。

日本における重点開発領域について
(「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」での議論)

①我が国における医療技術の強みの発揮、②我が国の保健医療分野の課題の解決(医療情報の増大、医師の偏在等)の両面から、AI開発を進めるべき6領域を選定。6領域を中心に、AIの研究開発を加速化させる。

AIやロボットが普及すると医療事務はなくなるのか?!

出典:厚生労働省 第 7 回 保健医療分野 AI 開発加速コンソーシアム 参考資料 2 (2019 年 4 月 17 日)(一部抜粋、改変)

医療事務はなくなる仕事?

そのような中、AIやロボットの普及が進むことで、10年~20年後にはさまざまな職種がなくなるといわれています。野村総合研究所が発表した「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」(※)では、その職業として「医療事務員」が挙げられています。その理由としては、「必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できた」と記載されています。

(※)

野村総合研究所の「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業(2015年発表)では、AIやロボットの普及が進んでも、10年~20年後に生き残る職業の考え方として、

  • 芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業
  • 他者との協調や他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業

は、人工知能等での代替は難しい傾向がある、としています。

すでに医療事務の業務内容は自動化されつつある

大病院ではほとんど電子カルテの導入が進みました。残った診療所・中小病院での普及は時間の問題でしょう。電子カルテが普及することで、医療事務のメイン業務であった「カルテを解読しレセコンに入力する(レセプト入力)」業務はなくなりつつあります。さらには、自動受付機が普及したり、保険証にICチップが埋め込まれたりすれば、受付や保険証を登録する仕事もなくなります。さらに、自動精算機の普及で、会計業務もなくなっていくことでしょう。
 レセプト点検業務ですら、支払基金が2020年よりコンピュータチェックの割合を高め、AIを導入することを発表しています。その後、チェックシステム自体も全国の医療機関に公開するとしていますから、いずれは医療機関側もコンピュータチェックの導入が進んでいくことでしょう。
 受付、レセプト入力、会計、レセプトチェックという医療事務業務が、急速にシステムにとって代わられてきているのです。医療事務という仕事は、このまま現在のスキル・経験に則り、新たな業務にチャレンジしなければ、徐々に業務範囲は縮まっていき、いずれはなくなってしまう可能性は大いにあると思われます。

社会保険診療報酬支払基金
(2019年1月審査分、医科電子レセプト)
請求1万点当たり原審査査定点数におけるコンピューターチェックの効果(単月点検分)

すでに医療事務の業務内容は自動化されつつある

出典:社会保険診療報酬支払基金 Press Release (2019年3月18日)(一部抜粋、改変)

クラーク(医師事務作業補助者)は生き残る仕事?!

その定義で医療の世界を考えると、診療現場では医師や看護師など、直接診療行為に携わっているスタッフは、サービス志向性が高いため残る可能性が高いことが分かります。一方で、いわゆるバックオフィス業務はどんどんAIやロボットに置き換わっていくのではないでしょうか。
 現在注目されている「医療クラーク」や「ベシュライバー」という仕事は、医師と協調し、患者の様態を理解して、電子カルテに代行入力する業務であり、医療事務よりもサービス志向性が高いために、生き残っていく仕事と言えるでしょう。

時代の変化に対応するために、新たな業務にチャレンジする

医療以外の分野でも、受付や会計の業務が実際に消滅しつつあります。
 例えば、駅で切符を切る光景はほとんど見られなくなりました。切符を購入するのも自動発券機にほとんど移りました。飲食店では、iPadなどのタブレットで直接注文することが多くなってきています。ホテルの会計も自動精算機の普及が着実に増えています。
 自らの周囲の変化をみれば、今はその職業があっても10年後にはなくなっているという感覚が分かるのではないでしょうか。「あの時、未来の変化に向けて勉強しておけばよかった」とならないように、例えば、これからの職種である「医療クラーク」や「ベシュライバー」という仕事にチャレンジしてみるのもひとつでしょう。

間接業務から直接業務へ

長らく、医師や看護師を支えてきた医療事務という仕事は、特殊な業務であると位置づけられ、資格を取ることで手に職がつけられると、人気の職種でした。しかし、徐々にコンピュータ化が進むことで特殊性は減少して行き、技術の希少性がなくなりつつあります。
 令和の新時代を迎え、AIやロボットが普及が加速する中、継続して医療の現場で働いていくためには、できるだけ直接的な診療の現場に入る仕事に移行していく必要があるのではないでしょうか。

(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 / 編集 株式会社日本経営)
(更新:2019年6月)

コミュニケーションとデジタル化

ご存知のように、政府は患者が「かかりつけ医」や「かかりつけ薬剤師」を持つことを推奨しており、患者が気軽に相談できる医療機関として診療所や保険薬局を位置付けています。これからの「令和」時代では、患者から診療所や保険薬局が信頼いただくことができるかが大切になっています。信頼は密接なコミュニケーションから生まれます。診療所にとって、今、「コミュニケーション」は大切なテーマとなっています。

医療機関同士のコミュニケーションはアナログからデジタルへ

医療機関のコミュニケーションには、大きく二つに区分できます。一つ目は、診療所と病院、診療所と保険薬局、診療所と訪問看護ステーションといった「医療機関同士」のコミュニケーションです。
 コミュニケーションを行う上で、長らく書類によるやり取りが行われてきました。例えば、診療所が患者を病院に紹介する場合は、「診療情報提供書」を発行します。また、診療所が処方を保険薬局にオーダーする場合は「処方箋」を発行します。診療所が訪問看護ステーションに患者の訪問看護を依頼する場合は、「訪問看護指示書」を発行します。このように、医療機関同士のコミュニケーションは、従来「紙」を用いて行われてきました。
 しかしながら、これらの書類は、電子カルテやレセコンなどIT機器の普及が進んでいることを受けて、デジタルでやり取りすることで業務の効率化を図る動きが見られます。2025年の完成を目標に進められている「地域包括ケアネットワーク」の推進を受けて、2016年にこれらの書類をデジタルでやり取りすることが、一定のルールの下で認められました。一定のルールとは、地域連携ネットワークやプライベートネットワークなど、セキュリティレベルの高いネットワーク環境が求められています。今、医療機関同士の情報共有をデジタルでやり取りする時代がやってきているのです。

患者に支持されるためのコミュニケーション力

二つ目は、医師と患者、薬剤師と患者といった「対患者」とのコミュニケーションです。これについては、政府がかかりつけ医やかかりつけ薬剤師を推進しているように、診療所や保険薬局については、コミュニケーション力を高め、いかに患者に指名されるようになるかが大切になっています。
 患者との密度の高いコミュニケーションを図るためには、医師、薬剤師のみならず、事務スタッフなど全スタッフの接遇やコミュニケーション能力が重要になります。
 昨今、接遇やコミュニケーションについて、医療機関でも重視されるようになってきました。また、患者満足度と医師による説明は、待ち時間以上に相関関係にあるという調査結果があるように、説明力、すなわちコミュニケーション力は大変重要になっています。医療はサービス業であり、コミュニケーションや接遇は基本のスキルです。しかし、他のサービス業に比べて命を預かる現場ですから、プライバシーに最高レベルの配慮を払い、丁寧に患者の立場になってコミュニケーションを行うことが求められています。
 地域住民から支持される診療所になるためには、先に挙げたICT化を進めることで、「ネットワークコミュニケーション」を行うためのインフラを整備し、接遇力やコミュニケーション力を高めることでヒューマンコミュニケーションを向上させていく必要があるのです。

(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 / 編集 株式会社日本経営)
(更新:2019年6月)

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