閉じる

医療制度トピックス

医療機関のウェブサイト広告規制の対象に
規制見直しで取り締まり強化

PDFで見る(2.36MB)PDF

ウェブサイトの広告規制の見直し

医療機関でも、ウェブサイトを活用して集患を行うことが一般的になりました。ですが、一部医療機関のウェブサイトでは、その内容に関して、虚偽または誇大広告などのトラブルが年々増加しており、それを受けて2018年6月よりウェブサイトが医療広告の規制対象となるガイドラインが変更になりました。

口コミは自発的なもののみ、依頼したものは広告とみなされる

最近、医療機関でも「Google等の口コミ」を気にされることが多くなりました。サイトの口コミ情報を参考に医療機関を選ぶことがが、当たり前になってきたことを感じられている方々も多いのではないでしょうか。

このような口コミの内容について今回のガイドラインでは、患者自らが書き込んだものの場合、広告規制の対象とはならないとされています。一方で、医療機関が依頼したコメントは、そこに金銭のやり取りがある場合はもちろんのこと、なかったとしても規制の対象となってしまいます。要はその情報が、患者自らが自発的に作り出したものなのか、医療機関の依頼で強制的に作り出されたものなのかの違いによって規制するかどうかを線引きしているのです。

この線引きは、なかなか第3者では判断が難しいところですが、サイトパトロールの結果、明らかに医療機関側の依頼と分かるものは、行政指導が入り、改善命令が行われることになります。

医療機関のウェブサイトの取り締まりを強化するため、広告規制の対象に

そもそも医療機関のウェブサイトは、広告ではなく広報として位置づけられ、広告規制の対象外となっていました。ウェブサイトは、患者さんが自らの意思で訪れるという性格上、誘引性や認知性という観点から考えられていました。しかし、主に美容分野では、ウェブサイトに掲載されているビフォーアフターの写真と治療結果が異なったり、記載よりも高い料金を請求されたりといったトラブルが増えており、こうした不適切な記載について行政が指導しても、従来の医療ウェブサイトに関するガイドラインには法的拘束力がなかったため、なかなか是正されないという問題がありました。

そのようなことから、病院やクリニックのウェブサイトも、法的拘束力のあるガイドラインの規制対象とする必要があったのです。

広告が禁止されている内容

従来の「医療広告ガイドライン」や「医療機関ホームページガイドライン」などでも禁止されており、新ガイドラインでも引き継がれた内容をご紹介します。

●「虚偽広告」事実と異なる情報
たとえば「絶対安全な手術です」のような医学的にありえない表現は禁止されています。広告に示された内容が虚偽である場合、患者に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受ける恐れがあることから、罰則付きで禁じられています。
●「比較優良広告」
他の病院やクリニックなどと比較して優れていると宣伝する広告も禁止されています。たとえば、「最高の医療」や「日本一」などの表現は、それが事実であっても禁止されます。
●「誇大広告」
提供する医療の内容や施設について、事実より良いものであると印象付けるような広告も禁止されます。たとえば、医師数について「○年○月現在」と添えて記載した場合でも、その後医師数が大きく減少した場合は誇大広告として扱われます。
●「患者の体験談」
医療機関が治療内容や効果について、患者自身の体験談や家族からの伝聞に基づく体験談を医療機関のウェブサイトなどで紹介することも禁止されています。これは個人が運営するウェブサイト、SNSの個人ページ、口コミサイトへの体験談の掲載については、医療機関が便宜を図って掲載を依頼することなど、誘引性が認められない場合は、広告に該当されないとされています。
●「治療前治療後の写真」
いわゆるビフォアー・アフターの写真は、治療結果は個々異なることから、誤認される恐れがある写真などについては、医療に関する広告としては認められません。
●「公序良俗に反する内容」
こちらも禁止ですが、この点で規制される内容を掲載している医療機関はまずないでしょう。

その他、レントゲンや内視鏡といった医療機器については、一般的な名称、それらの写真・映像、導入台数または導入日時については広告することは可能です。ただし、未承認の医療機器や、医療機器が特定可能となる販売名や型式番号については広告を行うことができないとされています。

サイトの見せ方ではなく、サービス内容で差別化を図る

今回施行されたガイドラインの内容を見ると、医療機関のウェブサイトにおいて、「誘引性」と言う観点によって、広告規制が行われるかどうかが判断されることになります。その情報によって、患者さんが誤解する内容は、それは仮に正しい事実であっても広告不可となってしまいます。そこで、これからはサイトの見せ方、表現の仕方を競うのではなく、医療機関としての利便性が差別化になるということを考える必要があるのではないでしょうか。

例えば、予約システムを導入して待ち時間緩和を行ったり、2018年の改定で評価されたオンライン診療に取り組むことも、取り組むこと自体が患者さんにとって利便性をPRすることになります。 これからは、広告ではなく具体的な入り口をウェブサイトに設置していくことが大切でしょう。患者様の利便性を高め、患者様から選ばれるように仕向ける事は何の問題もありません。

<広告規制のポイント>
掲載内容 具体例
「虚偽広告」 「絶対安全な手術です」等の記載
「比較優良広告」 「最高の医療」や「日本一」等の記載
「誇大広告」 事実より良いものであると印象付ける「医師数の水増し」「施設写真」等の記載
「患者の体験談」 口コミなど自発的なものは除外
「治療前治療後の写真」 ビフォアー・アフターの写真
※ただし、治療・手術等の正確かつ十分な情報提供を行っており、
「患者等を誤認させるおそれはない」場合は、除外
その他、レントゲンや内視鏡といった医療機器については、一般的な名称、それらの写真・映像、導入台数または導入日時については広告することは可能ですが、未承認の医療機器や、医療機器が特定可能となる販売名や型式番号については広告を行うことができません。

<参考>
※厚生労働省 医療法における病院等の広告規制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
※医療に関する広告についてのご相談は、医療機関を所管する自治体の窓口にお問合せください。

(2018年12月 MICTコンサルティング 代表 大西 大輔/株式会社日本経営 編集)