2018年3月5日の2018年度診療報酬改定(以下、本改定)の告示に至るまでの中央社会医療保険協議会(以下、中医協)の外来医療に関する議論では、病診連携・機能分化の視点から多くの検討が行われてきました。論点を大きく整理すると、①紹介状のない患者等の大病院受診時定額負担の対象病院の見直し、②かかりつけ医機能推進の観点から主治医機能の地域包括診療料等を算定する患者の同意や在宅医療の提供に係る要件の見直し、③継続的に医学管理を行っている患者に対するICTを活用した診療(オンライン診療)を対面診療と異なる診療のあり方として評価する―の3点です。外来診療を巡る議論はこの3つを重要なテーマとして推移してきた経緯がありますので、ここではこれらの議論を踏まえて、訪問診療等も含めた主にクリニックに影響を与える重要な改定項目等をピックアップし、医療現場の反応等も交えながら紹介させて頂きます。
医療制度トピックス
外来診療を巡る議論 主治医機能に実績評価を導入
主治医機能に実績評価を導入 在宅移行と外来受診抑制を目指し、加算算定の視野を拡大
かかりつけ医機能の視点からは、2014年度改定で導入された『地域包括診療料・加算』、前改定で導入の『認知症地域包括診療料・加算』に関して大きな見直しが行われました。一つ目は医師配置に関する要件で、常勤医師換算2名の医師が配置され、そのうち1名以上が常勤医であれば可という形へと緩和されました。現状、院長(常勤医)1名体制のクリニックが圧倒的に多くを占める中、常勤医と非常勤医の組み合わせで要件をクリアすれば届出が可能になったことで、今後これらの算定を目指すクリニックが増えていくことは容易に予想されます。二つ目は、現行1段階の評価が2段階になること。地域包括診療料1(認知症も含む)では「訪問診療を提供した患者のうち、当該医療機関での外来診療を経て、訪問診療に移行した患者数が10名以上」「直近の1ヶ月に初診、再診、往診または訪問診療を実施した患者のうち、往診または訪問診療を実施した患者の割合が70%未満」の2つが算定要件として設定されました。加算点数の要件変更では、在宅療養支援診療所(以下、在支診)以外の診療所でも加算1(認知症も含む)が取り易くなる一方、外来診療を行わない在宅専門診療所は加算1(認知症も含む)の届出が難しくなります。
また従来の加算点数では、在宅医療の提供に対して、24時間対応の院内掲示を義務付けられていましたが、在支診以外は、連携先医療機関の協力を得て行う24時間の往診等の体制確保で算定可能に。要するに、自己完結での「24時間対応」から「他の医療機関との連携による24時間往診体制」の確保でも算定が認められるようになりました。
これら『地域包括診療料・加算』『認知症地域包括診療料・加算』に共通するのは、「外来から訪問診療に移行した患者数に加え、1ヶ月間に受診した全患者のうち往診または訪問診療を実施した患者の割合」で点数に差を付けたこと。実績要件(70%未満)を満たせない医療機関は2の算定に留まることになります。つまりこれらには、一定の外来診療を提供しながら、そこから患者の状態に応じて訪問診療に移行する役割が求められます。「かかりつけ医」は当初から在宅患者だけを対象にする在宅専門診療所等とは、明確に一線を画しており、「外来診療から在宅まで」の役割を担う医療機関を「かかりつけ医」としていきたいのではないでしょうか。改定された診療報酬点数を見ると、既に診療料(認知症も含む)を算定していた医療機関は実績要件をクリア出来なくても従来と同じ点数は算定可能です。大きく要件緩和されたことを考慮すると「実質プラス」と考えて良いでしょう。加算(認知症も含む)も以前から算定していたクリニックの殆どは、1の算定が可能と思われます。これら主治医機能にハードルの低い2を導入したのは、各地域で「かかりつけ医」の裾野を拡げるための誘導策であるのは明らかです。
実際に近年、これらの届出は増えておらず、診療料(認知症も含む)は合計しても全国で197施設、加算(認知症も含む)の合計も5,000施設強に留まっています(2016年7月時点)。前者の算定要件にある「全受診医療機関の把握」「一元的な服薬管理」を実施している医療機関は約3割で、「在宅医療への対応」についても負担を感じる医師が約5割を占めるというデータが、2017年の中医協でも報告されました。主治医機能の要件緩和は今に始まった話ではなく、地域包括診療料・加算の創設された2014年度改定では「常勤医3名」(加算は三択要件)が必要でした。前改定では「常勤医2名」に変更、本改定から「常勤換算2名」になりました。厚生労働省は当初、主治医機能に何らかのステータスを与え、他の一般内科クリニックと差別化したい意図があったのだと思います。確かに、きちんと体制が整備されたクリニックや(200床未満の)病院が「かかりつけ医」の役割を果たさなければ、地域医療は円滑に機能しません。あえて厳格な施設基準や要件設定を導入したと考えられます。しかし、期待していた程に届出が伸びず、現在のペースでは2025年の地域包括ケア構築の目標年次に間に合いません。次々と要件緩和を推進する方針転換は、「背に腹は代えられない」決断だったのかもしれません。
地域包括診療料/認知症地域包括診療料
- 新設
- 地域包括診療料11,560点
地域包括診療料21,503点
- 新設
- 認知症地域包括診療料11,580点
認知症地域包括診療料21,515点
[施設基準(抜粋)]
- (1)オンライン診療料が算定可能な患者に対して、リアルタイムでのコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な情報通信機器を用いてオンラインによる診察を行った場合に算定。ただし、連続する3月は算定できない。
- ・診療所の場合
- (イ)時間外対応加算1の届出
- (ロ)常勤換算2名以上の医師の配置、うち常勤医師が1名以上
- 現行常勤の医師を2名以上
- (ハ)在宅療養支援診療所
- (2)診療料1を算定する場合には、以下の全てを満たしていること
- (イ)外来中心の医療機関であり、当該医療機関での外来診療を経て訪問診療に移行した患者数が10人以上であること。
- (ロ)直近1ヶ月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が70%未満であること。
地域包括診療加算/認知症地域包括診療加算
- 新設
- 地域包括診療加算125点
地域包括診療加算218点
- 新設
- 認知症地域包括診療加算135点
認知症地域包括診療加算228点
[施設基準(抜粋)]
- (1)在宅医療の提供及び当該患者に対し24時間の往診等の体制を確保していること。(在宅療養支援診療所以外の診療所については連携医療機関の協力を得て行うものを含む。)
- (2)以下のいずれかの要件を満たしていること。
- ア. 時間外対応加算1又は2の届出
- イ. 常勤換算2名以上の医師の配置、うち常勤医師が1名以上
- 現行常勤の医師を2名以上
- ウ. 在宅療養支援診療所
- (3)加算1を算定する場合には、以下の全てを満たしていること
- (イ)外来中心の医療機関であり、当該医療機関での外来診療を経て訪問診療に移行した患者数が3人(在宅療養支援診療所の場合は10人)以上であること。
- (ロ)直近1ヶ月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が70%未満であること。
「かかりつけ医」のハードルを下げる一方、加算を充実
この他、『地域包括診療料・加算』『認知症地域包括診療料・加算』を算定する患者が、入院・入所した場合に、入院・入所先の医療機関と医薬品の適正使用に係る連携を行った場合の新機軸として、『薬剤適正使用連携加算』が新設されました。医薬品の適正使用が意味するのは「減薬」です。介護老人保健施設や一部の病院等は病床種別によって薬剤料が包括化されているケースも見られ、減薬へのインセンティブは高いため、減薬すれば30点が加算されます。算定要件の一つにも「入院・入所先の医療機関で減薬しており、減薬後の処方内容について退院・退所後1ヶ月以内に当該医療機関等から情報提供を受けていること」との文言があることから、この加算が目指すことの本質が見えてきます。
更に「かかりつけ医」機能や在宅医療に係る診療報酬を届出しているクリニックや200床未満の病院に対して、専門医療機関等、受診の要否の判断等を含めた初診時における診療機能を評価する『初診料 機能強化加算』が新設されました。主治医機能に関わる診療報酬が創設されてから4年が経ちましたが、厚生労働省は主治医機能のハードルを低くした一方で、今後加算点数等を更に充実させて、「かかりつけ医」制度を推進させていくでしょう。
この他、小児科のかかりつけ医機能を評価する『小児かかりつけ診療料』の要件で「患者・家族からの電話等の緊急の相談事等に対して原則、算定医療機関は常時対応しなければならない」とされていましたが、本改定から「在宅当番医制等により地域における夜間・休日の小児科外来診療に定期的に協力する」「#8000事業に定期的に協力する」のいずれかの要件を満たす常勤小児科医であれば「夜間・休日の相談等に係る要件について、地域の在宅当番医等を案内することでも可」との要件緩和が導入されます。これにより多忙な「常勤小児科医・1名体制」の小児科医院でも算定し易くなりました。『地域包括診療料・加算』『認知症地域包括診療料・加算』と同じ文脈の「かかりつけ医」に関する人員配置要件の弾力的運用になります。
地域包括ケアを進める“一里塚”訪問診療の新機軸
訪問診療では、4つの新設項目がポイントとなります。一つ目は『在宅患者訪問診療料Ⅰ』です。現行の「在宅時医学総合管理料(以下、在総管)」「施設入居時等医学総合管理料(以下、施設総管)「在宅がん医療総合診療料」の算定要件を満たす医療機関の依頼に応じて、他の医療機関が訪問診療を行った場合に算定出来る診療報酬です。糖尿病内科や皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、口腔内科等、合併症を抱える在宅患者のニーズに応えられるよう他科の専門医療機関にも訪問診療への参加を促し、在宅医療の横のグループ診療を進めることが狙いです。一連の治療に関しては神経難病等の患者を除き、半年以内に限り、月1回を限度として算定出来ます。前改定で在総管や施設総管等に、在宅患者の重症度・居住場所・患者数に応じて、顕著な傾斜配分が導入され、単一建物の診療人数によって評価が大きく下がることになりましたが、これと同じ流れです。『在宅患者訪問診療料Ⅰ』は同一建物居住者以外が830点と高点数であるのに比べて、同一建物居住者の場合は178点と大きく減額されます。
二つ目の新機軸は『在宅患者訪問診療料Ⅱ』で、併設する介護施設の入居者への訪問診療の評価を新設します。現行の在宅患者訪問診療料でも、同一建物居住者以外の場合は(現行833点)と、同一建物居住者の場合(現行203点)と大きく傾斜配分が行われていましたが、併設する特定施設、認知症グループホーム、あるいは住宅型有料老人ホーム等、介護施設の入居者に対する訪問診療に関しても、訪問と外来の中間的な考え方を取り除き、併設する介護施設入居者の場合として、患者一人につき週3回までを限度に144点に減額する報酬が新設されました。実際に特定施設等を併設する医療機関は少なくないので、厳しい改正のポイントとなります。
三つ目は『包括的支援加算』です。これは、通院が特に困難であったり、関係機関との連携に支援を必要とする一定の状態にある患者に対して、患者の状態に応じたきめ細やかな評価を導入すべく在総管・施設総管に加算するもので、月1回の訪問診療を行っている場合の在総管・施設総管を適正化することが目的です。対象患者は要介護2以上や、認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅡb以上等、細かい条件が設定されています。この新設を前提に、月2回以上の訪問診療の在総管及び施設総管の適正化や、月1回の訪問診療(機能強化型在支診以外の医療機関)の充実が図られており、訪問診療の頻度や単一建物の診療人数等によって、これら管理料の点数は細かく傾斜配分されています。ある訪問診療医は、「支援加算新設は訪問患者の状態を精査し、“月2回以上”の患者に対しては重症患者等に限定し、それ以外の患者は“月1回”に受診抑制するのが狙いで、訪問診療にも救急医療におけるトリアージのような仕組み作りを進めたいのではないだろうか」と指摘しています。実際に本改定では、「月2回以上」の訪問診療について「定める状態以外」(重症以外)の患者に対しては在総管・施設総管のいずれもが100点のマイナス。しかし、「要介護2以上」や「月4回以上の訪問看護」等の包括的支援加算の要件を満たせば150点の加算が算定出来るので、50点のプラスになっています。
四つ目は『継続診療加算』で、これは在支診以外のクリニックが外来、または訪問診療を継続的に提供してきた患者に対して、医療機関単独、あるいは連携先医療機関との協力の下に24時間の往診体制等を確保した上で、訪問診療を実施した場合に、在総管及び施設総管に加算される報酬点数です。訪問看護が必要な患者に対しては、当該医療機関または連携する訪問看護ステーションによる訪問看護を提供していることも条件の一つになっています。2017年の中医協で、訪問診療を実施するクリニックでは、在支診と在支診以外の医療機関の数が拮抗。往診を実施するクリニックではむしろ、在支診以外の届出が上回っているとのデータが公表されました。加えて、在支診以外のクリニックでは「今後、在支診の届出を行う意向がない」が83.4%にも達し、「24時間対応や夜間・深夜体制が困難」の回答理由が多数を占めました。これらの課題から、厚生労働省は本改定で在支診以外のクリニックが在宅医療の裾野を拡げていくことをテーマにした誘導策を検討したのだと思います。『継続診療加算』だけでなく主治医機能の『地域包括診療加算1』要件に、在支診以外は連携医療機関の協力を得て、在宅医療の24時間体制を確保すれば可と緩和されたのも誘導策の一つです。『在宅患者訪問診療料Ⅰ』は、主に在支診以外を想定した他科や専門クリニックによる在宅のグループ診療拡大を促すものであり、『継続診療加算』は在支診と在支診以外の在宅医療を提供するクリニックによる横のグループ診療を促進するものとの見方が出来ます。
2025年の地域包括ケア実現に向けて、各地域で24時間・夜間・深夜対応の可能な機能強化型在支診を中心に、その周辺に在支診以外の専門クリニックやかかりつけ医等が、在宅医療の輪に参画。在宅患者の特性や状態、介護者の有無等の条件に応じて、役割分担をしながら在宅医療を支えていく構図が見えてきます。訪問診療に係るこの4つの新機軸は、各地域で地域包括ケアを進めるための“一里塚”になっていくでしょう。
薬剤適正使用連携加算
地域包括診療料・認知症地域包括診療料 地域包括診療加算・認知症地域包括診療加算新設薬剤適正使用連携加算30点
(退院又は退所の日を含む月の翌月までに1回)
[算定要件]以下の全ての要件を満たした場合に算定可能
- ア. 地域包括診療料等を算定する患者が、入院・入所に際して処方内容を調整するに当たり、患者の同意を得て、入院・入所先の医療機関等に対し、処方内容、薬歴等について情報提供していること(情報提供の手段は問わない)。他
初診料 機能強化加算
新設初診料 機能強化加算80点
[算定要件]
地域包括診療加算、地域包括診療料、認知症地域包括診療加算、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に限る。)、施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に限る。)を届け出をしている保険医療機関(診療所又は200床未満の保険医療機関に限る。)において、初診を行った場合に、所定の点数に加算する。
在宅患者訪問診療料Ⅰ
2 他の医療機関の依頼を受けて訪問診療を行った場合新設同一建物居住者以外830点/同一建物居住者178点
[算定要件]
在総管、施設総管又は在宅がん医療総合診療料の算定要件を満たす他の医療機関の依頼を受けて訪問診療を行った場合に、一連の治療につき6月以内に限り(神経難病等の患者を除く)月1回を限度として算定する。
在宅患者訪問診療料Ⅱ
新設在宅患者訪問診療料Ⅱ144点(1日につき)
併設する介護施設等の入居者の場合
[算定要件]
在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、その同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合に、当該患者1人につき週3回を限度として算定する。
包括的支援加算
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料新設包括的支援加算150点(月1回)
[対象患者]以下のいずれかに該当する患者
- (1)要介護2以上に相当する患者
- (2)認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡb 以上の患者
- (3)月4回以上の訪問看護を受ける患者
- (4)訪問診療時又は訪問看護時に処置(簡単な処置を除く)を行っている者 他
継続診療加算
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料新設継続診療加算216点(1月に1回)
[算定要件]
- (1)当該保険医療機関の外来又は訪問診療を継続的に受診していた患者であること。
- (2)算定患者ごとに、当該医療機関単独又は連携する医療機関との協力のもと、24時間の往診体制及び24時間の連絡体制を構築すること。
- (3)訪問看護が必要な患者については、当該保険医療機関、連携する医療機関又は連携する訪問看護ステーションによる訪問看護を提供していること。
オンライン診療4つの新設項目には厳格な運用要件
注目された『オンライン診療料』、『オンライン医学管理料』の他、(施設入所者を除く)在宅患者を対象にした『在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料』や、精神科の在宅患者を対象にした『精神科在宅患者支援管理料 精神科オンライン在宅管理料』が新設されました。遠隔診療に関しては、以前から「医師 対 医師」の遠隔画像診断、遠隔病理診断の診療報酬評価があり、「医師 対 患者」では電話を用いた診察に対する再診料等が存在しました。それから一歩前進しICTを活用し医師と患者が離れた場所でありながら患者の状態を把握し、診療を行うと同時に患者の外来通院あるいは医師の訪問診療等、対面による診療行為を補完するものとして、【問診→モニタリング→診察】までの一連の医療行為が改めて評価されました。医学管理料はオンラインで患者の状態を把握するものに対して、診療料は診療を行うことへの評価です。オンライン診療の項目要件はそれぞれが複雑かつ詳細に設定されており、厳格に運用されます。実験的にオンライン診療に取り組んでいる医療機関を除けば、これら要件をすぐに満たせるクリニックは極めて少なく、届出をするための体制整備には、一定の時間が必要と思われます。
ただ、都心部のある若手開業医は「慢性疾患90日処方の場合、3ヶ月に一度の対面診療だけだと医師・患者関係は希薄になり易い。テレビ電話でも毎月“顔を見て対話する”ことで、お互いの信頼関係は醸成し易くなるのではないか」と期待を寄せています。実際に、診療圏が広く患者が遠方からでも受診する糖尿病や循環器系等の専門に特化したクリニックは、生活習慣病の療養指導等に対しオンライン診療と対面診療を組み合わせることで、外来受診回数が減少し患者の利便性が増すでしょう。心療内科クリニック等が行うカウンセリング等も、遠隔診療との親和性が高いとの報告もあります。加えて、医療機関側には遠方を理由に、患者が近隣の内科系クリニック等に「かかりつけ医」を変更する心配もなくなりますし、「90日処方」よりはオンライン診療でレセプト件数も増えることになり経営的にもプラスです。
厳格な運用が求められ、算定要件のハードルが高いのは事実ですが、医療機関・患者双方のメリットが大きいことから、オンライン診療の医療現場における環境整備や普及は、予想以上に早く進展するかもしれません。
オンライン診療料 他
新設オンライン診療料70点(1月につき)
[算定要件]
- (1)オンライン診療料が算定可能な患者に対して、リアルタイムでのコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な情報通信機器を用いてオンラインによる診察を行った場合に算定。ただし、連続する3月は算定できない。
- (2)対象となる管理料等を初めて算定してから6月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限り算定する。ただし当該管理料等を初めて算定した月から6月以上経過している場合は、直近12月以内に6回以上、同一医師と対面診療を行っていればよい。
- (3)患者の同意を得た上で、対面による診療(対面診療の間隔は3月以内)とオンラインによる診察を組み合わせた療養計画を作成し、当該計画に基づき診察を行う。
- (4)オンライン診察は、当該保険医療機関内において行う。また、オンライン診察を行う際には、厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って診療を行う。
- (5)オンライン診療料を算定した同一月に、第2章第1部の各区分に規定する医学管理等は算定できない。また、当該診察を行う際には、予約に基づく診察による特別の料金の徴収はできない。
[施設基準]
- (1)厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って診療を行う体制を有すること。
- (2)オンライン診療料の算定患者について、緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制を有していること。
[オンライン診療料が算定可能な患者]
以下に掲げる管理料等を算定している初診以外の患者で、かつ、当該管理料等を初めて算定した月から6月以上を経過した患者。
特定疾患療養管理料/小児科療養指導料/てんかん指導料/難病外来指導管理料/糖尿病透析予防指導管理料/地域包括診療料/認知症地域包括診療料/生活習慣病管理料/在宅時医学総合管理料/精神科在宅患者支援管理料
新設オンライン医学管理料100点(1月につき)
[算定要件]
- (1)オンライン医学管理料の対象となる管理料を算定している患者に対し、リアルタイムでのコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な情報通信機器を用いてオンラインによる医学管理を行った場合に、前回対面受診月の翌月から今回対面受診月の前月までの期間が2月以内の場合に限り、次回対面受診時に所定の管理料に合わせて算定。
- (2)対面診療で管理料等を算定する月においては、オンライン医学管理料は算定できない。
- (3)対象となる管理料等を初めて算定してから6月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限り算定する。ただし当該管理料等を初めて算定した月から6月以上経過している場合は、直近12月以内に6回以上、同一医師と対面診療を行っていればよい。
- (4)患者の同意を得た上で、対面による診療(対面診療の間隔は3月以内)とオンラインによる診察を組み合わせた療養計画を作成し、当該計画に基づき診察を行う。
- (5)オンライン診察による計画的な療養上の医学管理は、当該保険医療機関内において行う。また、当該管理を行う際には、厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って診療を行う。
新設在宅時医学総合管理料オンライン在宅管理料
100点(1月につき)
新設精神科在宅患者支援管理料精神科オンライン在宅管理料
100点(1月につき)
(医療ジャーナリスト 冨井 淑夫 )
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※記載内容は、2018年3月5日告示時点での見解です。今後の疑義解釈やQ&A等により変更となる場合がございます。
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制作・編集:株式会社日本経営