A.地域の中小病院や開業医の先生方に期待されているのは、かかりつけ医としての役割です。
地域の超高齢化を支える仕組みとして「地域包括ケアシステム」の構築が言われていることは、医師会などからも聞いておられると思います。この「地域包括ケアシステム」において、地域の中小病院や開業医の先生方に期待されているのは、かかりつけ医としての役割です。日本医師会も2016年4月から「かかりつけ医機能研修事業」をスタートさせています。かかりつけ医の役割、機能を果たすことは、クリニック経営の火急の課題になっているのは言うまでもありません。
地域包括診療料・加算は算定基準の緩和、認知症地域包括診療料・加算の新設などが今改定で行われました。元々この診療料・加算は、患者が受診している全ての通院医療機関や処方薬を把握し管理すること、在宅医療の提供、24時間対応などを要件とするハードルの高いものでした。今改定でも基本的に算定が難しい基準である印象は拭えません。
しかし、今後の進むべき方向性は見えてきたのではないでしょうか。まず認知症ケアが重要であるとのメッセージ、また「かかりつけ薬剤師、薬局」が新設。後者はかかりつけ医と連携しての残薬の取組みを促す内容となっており、前者の認知症ケアにおいても減薬の取組みが大きな課題であることは言うまでもありません。「かかりつけ」の普及を図ることは一筋縄ではいきませんが、まずは2025年に700万人を超えると言われる認知症の方々のケアを充実させるところから、かかりつけ医を機能させていこうという方向性が見えます。さらには、新設された小児かかりつけ診療料も少子化問題が深刻化する中で、小児医療充実が優先課題として位置付けられていることを示しています。
今後は、かかりつけ医としてのスキルを一段と磨いていくことが求められるのではないでしょうか。医師会の研修制度のことは先で触れましたが、2017年度には研修が始まる見込みの「総合診療専門医」制度の動きにも注目が必要です。
地域包括診療料・加算は、今すぐに算定しましょう、と簡単には言えないかもしれませんが、まず届出はしておき準備だけは進めておくべきではないでしょうか。
(医療ジャーナリスト 冨井 淑夫 / 編集:株式会社日本経営エスディサポート)