A.おっしゃる通り、2016年4月診療報酬改定では地域包括ケアシステムを中心に地域医療の有機的推進にポイントがおかれていると言って良いと思います。まずは『顔の見える』関係づくりが急務ではないでしょうか。
「かかりつけ」機能の強化も盛り込まれていますが、「かかりつけ」医は日常的にかかりつけの患者を診るとともに、必要に応じて専門医療機関への紹介(転医)、在宅対応、介護との連携などが想定されます。これは病院や他診療科診療所との連携、医療介護連携の担い手としての役割を診療所に求めるものと言えます。
では病院との関係(病診連携)はどうあるべきなのでしょうか。
まず2016年診療報酬改定における急性期の動向を見てみましょう。簡単に言えば急性期は重症患者に集中し、医療資源の集中投入で短期に退院させ、できるだけ早期に在宅に復帰させなければならないという事が示唆されています。これは病床稼働率の低下を招きかねず、急性期病院においては紹介患者を増やしていくためにも診療所との連携強化に注力することを前提とした動きが必要となってきます。
特に急性期病院連携室、場合によって幹部医師の来院も増えていく可能性が高いのではないでしょうか。「かかりつけ」を担う診療所としては、これを機会として捉え、紹介した患者見舞いを兼ねての医局訪問など、こちらから出向くことをできる範囲で行っていくことも必要になってきます。最近では「顔の見える」関係づくりを実践されておられる診療所開業医も多くなっています。
2020年代には外来患者数がピークアウトすると予想されています。超高齢化と人口減少が、より在宅移行を促進していくでしょう。その中で「かかりつけ」も在宅展開を迫られるわけですが、在宅において24時間対応や急性増悪時のバックベッドは欠かせないものとなります。その時、地域の病院、特に在宅療養支援病院(在支病)との関係が重要になってきます。地域の病院は訪問看護や介護事業も手掛けて医療介護連携に強いところが多く存在します。地域の病院との連携グループ化により在宅対応を円滑的に実践して行く事が求められると共に、大変重要になってきます。
機能強化型(連携型)在支病・在支診は診療報酬上の評価も付加されています。これを利用して在宅医療機能を強化し、多職種連携に発展させている地域もあります。その他、地域の病院との関係強化に、合同で地域包括ケアシステムについて、あるいは地域全体で「かかりつけ」となるための勉強会を企画しても有効でしょう。
まずは『お互いが顔を合わせる』機会を持って動いていくことが、連携のための関係強化へ続く第一歩ではないでしょうか。
(医療ジャーナリスト:富井 淑夫 編集:株式会社日本経営エスディサポート)