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- 皮膚障害:ケア(vol.8)
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がん化学療法を行うと、使用する薬剤によっては、ざ瘡様皮疹
、乾皮症
、爪囲炎
、手足症候群、爪や皮膚への色素沈着などさまざまな皮膚障害がみられます。皮膚障害が重症化すると、痛みなどの症状や外見的な変化により、日常生活への支障が生じます。またバリア機能が崩れた皮膚から感染が起こる可能性もあります。スキンケアをはじめとする適切な対処で症状の悪化を抑えることができますが、重症化した場合には、抗がん剤の減量や休止で対応します。
治療をスムーズに進めるためにも、セルフケアは欠かせません。今回は皮膚障害に対するセルフケアの重要性と症状に合わせたケアの方法を解説します。
がん化学療法看護認定看護師
皮膚障害の主な症状と起こしやすい薬
殺細胞性抗がん剤
- ■フッ化ピリミジン製剤
- 手足に赤い斑点や水疱ができる「手足症候群」(フルオロウラシル、カペシタビンなど)
- 顔や四肢末端、爪が黒くなる「色素沈着」(フルオロウラシル、S-1など)
- ■タキサン系の抗がん剤(ドセタキセル、パクリタキセル)
- 爪が薄くなり浮いてくる、爪に線が入ったり爪先が欠けるような「爪の変化」
分子標的薬
- ■EGFR阻害薬(セツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィチニブなど)
- ニキビのような「ざ瘡様皮疹 」
- 皮膚が乾燥する「乾皮症 (皮膚乾燥症)」
- 巻き爪のように爪の横の皮膚が腫れて痛む「爪囲炎 」など
- ■マルチキナーゼ阻害薬(ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブなど)
- ニキビのような「ざ瘡様皮疹」
- 手足に赤い斑点や水疱ができる「手足症候群」
日常生活のアドバイス
スキンケア(洗浄・保湿)を行いましょう!
皮膚の機能をできるだけ健康に保つため、毎日のスキンケアを欠かさないようにしましょう。また、皮膚障害の治療として使用するステロイド外用剤や保湿剤も、1日1回は、皮膚を洗浄し洗い流すことが大切です。石鹸をよく泡立て、手と皮膚の間に泡を挟むようにして優しく洗い、ぬるま湯で石けんの成分を完全にすすぎ落として洗浄します。タオルで押さえるようにして水気を拭き、乾燥しないうちに保湿剤をたっぷり塗りましょう。
保湿剤の塗布量の目安
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塗る量を守りましょう!
皮膚障害に対してはステロイド外用剤が処方されます。症状が出てきたらすぐにつけ始めましょう。少なすぎると十分な効果が得られないので、医療従事者に指導された量を守ってしっかりつけるようにします。保湿剤とステロイド外用剤の順番はどちらが先でもかまいませんが、保湿剤を全体に塗ったあとで患部にピンポイントでステロイド外用剤をつけると良いでしょう。
注意:ステロイド外用剤は市販のものではなく、医師に処方されたものを使用しましょう!
皮膚への刺激を避けましょう!
圧迫・摩擦などの刺激は皮膚を傷つける恐れがあります。締め付けの強い衣類やヒール、窮屈な靴などは避けるようにしましょう。時計やアクセサリーなども刺激になることがありますので、異常があればすぐに外しましょう。
症状に応じた対処方法
ざ瘡様皮疹
ひどいニキビのような発疹が顔、胸、背中などを中心に全身にできます。頭皮や耳の中にできることもあります。基本的なケアは、洗浄、保湿の後にステロイド外用剤を塗ります。悪化防止のために紫外線対策をしましょう。
乾皮症
皮膚がカサカサして粉をふいたり、うろこのようになってかゆみを生じます。ひどくなるとひび割れて痛みを伴います。指先の皮膚に亀裂ができることもあります。保湿効果の高い保湿剤を使用しても症状を抑えることが難しい場合は、ステロイド外用剤を併用することもあります。
爪囲炎
爪の横の皮膚が爪を巻き込むように盛り上がり、出血や痛みを伴います。手に起こると細かい作業が難しくなり、足に起こると靴が履けなくなったりします。爪と指の間に血液などが固まっている場合は、よく洗浄してからステロイド外用剤を塗りましょう。
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爪囲炎で肉芽 が盛り上がってきたときは、肉芽を爪から引きはがすように引っ張りつつ、テープで固定すると少し楽になります。
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爪を切るときは深爪にならないよう注意しましょう。先の白い部分を四角く残すスクエアカットにすると巻き爪を起こしにくいです。
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手足症候群
手のひらや足の裏に紅斑や色素沈着が起き、悪化すると水疱ができて痛みを伴います。手に出来ると家事やパソコンなど手を使う作業がつらくなります。足に生じると痛みで歩行が困難になるため、圧迫の少ない靴やスニーカーを履いたり、歩く機会を減らすなど工夫しましょう。保湿剤とステロイド外用剤で対処します。
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色素沈着
顔や手足の皮膚、爪が黒くなったり、シミのような斑点ができます。痛みなどの症状は特にありません。爪の色素沈着を隠すためにマニキュアをする人もいます。リムーバーは皮膚に刺激を与えるため、できるだけ使用を控えましょう。マニキュアを毎回リムーバーで落とさなくてすむように、ピンクやベージュなどの薄い色にし、はがれたら重ね塗りすると良いでしょう。保湿と紫外線対策を忘れずに行いましょう。
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Q&A
Q石鹸や保湿剤はどんなものを選べばいいのですか?
A特別なものを用意する必要はなく、使い慣れたものがあればそれでかまいません。洗浄は1日1回以上、保湿剤はできれば1日2〜3回、最低でも1日1回はしっかりと塗るようにしましょう。
Qメイクをしても大丈夫ですか?
Aメイクはいつも通りにしてかまいません。手持ちの化粧品がしみたりしなければ、無理に買い替える必要はありません。メイクをした日は、夜には必ずきれいに落とし、洗顔・保湿をしてください。
Qステロイド外用剤を塗らずにメイクをしてしまいました。
塗らなくて良いですか?
Aステロイド外用剤は、メイクの上からつけても効果が薄れることはないので塗りましょう。
Qひげは剃ってもいいですか?
A清潔を保つため、できるだけひげ剃りを行うようにします。刺激が少ない電気カミソリが望ましいです。
Q外出するときに気をつけることはありますか?
A日焼け止めを塗ったり、日傘や帽子などで紫外線対策をしましょう。メイクも紫外線防止には有効な手段といえます。
Q爪の先がギザギザして、部分的に欠けてしまった場合、どうしたら良いですか?
A抗がん剤による皮膚障害の1つとして、爪がもろくなります。爪切りは、はさみタイプのものを使用するまたは爪用のやすりを使って整えます。ギザギザした爪は衣服やタオルがひっかかりやすく、爪にも負担がかかるので、絆創膏などで覆うことで、布に引っかかるのを防ぎます。
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