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- 便秘:運動(vol.1)
がん治療では、多くの人が便秘で悩まされています。
便がコンクリートのように硬くなったり、便秘と下痢を繰り返すこともあります。少しでも症状を軽くすることができるように、寝た状態や座った状態でもできる簡単な運動をいくつかご紹介いたします。
便秘の主な原因
抗がん剤の副作用
ビンクリスチン、パクリタキセルなどの抗がん剤により、自律神経が障害されて、便秘が起こることがあります。
症状を和らげる薬の副作用
吐き気止め、医療用麻薬、一部の抗うつ剤などは、吐き気や痛みを抑えるだけでなく、腸の動きも抑えるために、便秘になりやすくなります。
腹部の手術後の運動量の不足
手術の後は運動量が減ってしまう方が多いようです。運動不足になると腹筋が衰えて腸の動きが鈍るため、便秘になりがちです。
精神的ストレス
がん患者さんは、治療や生活に多くの不安を抱えています。また、仕事やお金の面などでも起こるストレスは計り知れません。このようなストレスによる自律神経のバランスの乱れが、便秘につながります。
食事や水分摂取量の減少
がんによる不調はもとより、抗がん剤や放射線治療などの副作用で食欲が減退することもあります。それによって栄養や水分量が減り、より排便しづらくなります。
カルシウムやカリウムのバランス異常
血中のカルシウムやカリウムのバランスが崩れると、身体に支障が生じます。高カルシウムだと胃腸の収縮が弱まり、低カリウムだと消化管の機能が低下します。
日常生活における注意点
バランスの良い食事を心がけ、水分をしっかり摂るようにしましょう。
排便の習慣をつくりましょう。朝目覚めたら水分を摂って、便が出なくてもいいので、必ずトイレに行きましょう。毎朝同じ時間に排便しようとする…その習慣で便が出るようになることがあります。
ストレスをためないことも大事です。副交感神経が優位なときに腸の運動は活発になります。映画を観る、音楽を聴く、旅行に行くなど、どんなことでもいいので趣味を持って、豊かな気持ちで生活を送れるように心がけましょう。
きつめの運動より、心地よいと感じる程度の運動(有酸素運動)のほうが、副交感神経が優位になります。また、日常で階段を使うように心がけたり、ウォーキングなら20~30分を目安に歩くようにしましょう。
腹部を温めることが大切です。腹巻きを巻いたり、お風呂にゆっくりつかって、手の指でお腹をマッサージしましょう。
※両手の指を重ねて、腸を押すようにしながら、大腸の形に沿って、便の動く方向にマッサージします。
普段の生活では、背筋を伸ばすことを心がけましょう。また、時々お尻の穴を閉めながらお腹を膨らます呼吸(腹式呼吸)をするだけでも、横隔膜や骨盤底筋を動かし、腸に刺激を与えることができます。姿勢を正すことで腸管が潰されずに、便の流れも良くなります。
寝た状態でできる運動
腹式呼吸をしましょう。
- ①.仰向けに寝て、膝を立てます。両手はお腹の上において、口からお腹の中の空気をしっかり吐ききります。
- ②.鼻から、お腹が膨らむことを意識しながら息を吸いましょう。
3~5回が目安です。やり過ぎると過呼吸になることがあるので注意しましょう。
腹筋を使いましょう。
- ①.仰向けに寝て、膝を立てます。両手を胸で交差させます。
- ②.肩から上半身を起こして、息を吐きながら肩甲骨を床から離し、5~10 秒間その形をキープします。
- ③.息を吸いながらゆっくり元に戻します。
筋力をつけることが目的ではないので、10回程度繰り返します。腰や手足が痛い時は無理をしない程度にしましょう。
体幹をねじりましょう。
- ①.仰向けに寝て、膝を立て、両手は力を入れずに横に広げます。
- ②.息をお腹いっぱいに吸います。
- ③.息を吐きながら、お尻だけを上げます(約10秒間)。
- ④.③のお尻を戻したら、そのまま膝だけを左にねじります。
その姿勢を10 秒間キープしましょう。 - ⑤.膝を真上に向けて、姿勢を戻します。
- ⑥.⑤の膝だけを右にねじります。その姿勢を10秒間キープします。
①~⑥は、自然に呼吸しながら行いましょう。
腹部に圧を与え、骨盤を動かしましょう。
- ①.仰向けに寝て、膝を立てます。次に、両膝を胸に寄せ、両手で抱えます(10 秒間)。
- ②.①の最初に戻り、膝を両手で抱える動作を10回繰り返します。
座った状態でできる運動
腹式呼吸をしましょう。
- ①.膝の上に手をおき、背中を丸めながら、口からお腹の中の空気をしっかり吐ききります。
- ②.背筋を伸ばしながら、鼻から息を吸います。
①~②を2~3回繰り返します。
体幹をねじりましょう。
- ①.胸の前で両手を交差させ、腰から上だけを右にねじります(重心は真ん中においておくように注意します)。その姿勢を10秒間キープしましょう。
- ②.正面を向きます。
- ③.腰から上だけを左にねじります(重心は真ん中においておくように注意します)。その姿勢を10 秒間キープします。
①~③を2~3回繰り返します。呼吸は鼻から吸って、口から吐くように意識しましょう。
骨盤体操をしましょう。
- ①.膝の上に手をおきます。ゆっくり10数えながら、腰から背中を丸めていき、口からお腹の中の空気をしっかり吐ききります。
- ②.10数えながら鼻から息を吸い、背筋を伸ばしていきます。
これを2~3回繰り返します。
側腹部を伸ばしましょう。
- ①.左手を膝の横におき、右手を耳の上に広げます。
- ②.ゆっくり10 数えながら息を吐き、左手のほうに曲げていきます。この時、体は正面を向くように意識しましょう。
- ③.息を吸いながら、元の姿勢に戻ります。
これを4 回繰り返します。 - ④.右手を膝の横におき、左手を耳の上に広げ、①の続き~③を行い、これを4回繰り返します。
腸腰筋を動かしましょう。
- ①.姿勢を正して座り、両手を両脇におきます。
- ②.腰を曲げないようにしながら、右脚だけを上げます。この姿勢を10秒ほどキープします。
- ③.①に戻り、②と同じように左脚だけを上げ、10秒ほどキープします。
①~③を2~3 回繰り返します。
体幹をねじりましょう。
- ①.両足を伸ばして座ります。
- ②.左脚だけ曲げて、伸ばしたままの右脚と交差させます。
左脚のかかとは、右脚の真横におきます。 - ③.体を左側にひねり、両手を床につき10秒ほどキープしながら息を吐きます。
- ④.息を吸いながら①に戻ります。
- ⑤.右脚だけ曲げて、伸ばしたままの左脚と交差させます。
右脚のかかとは、左脚の真横におきます。 - ⑥.体を右側にひねり、両手を床につき10秒ほどキープしながら息を吐きます。
これを2~3回繰り返します。