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医療制度トピックス

現場で活かす医療制度トピックス Vol.6

INDEX

・国が推進する地域フォーミュラリの普及と自治体の役割
・医療データクリップ「令和7年 社会医療診療行為別統計の概況」

国が推進する地域フォーミュラリの普及と自治体の役割

■骨太の方針や医療費適正化計画を受け、都道府県へ地域フォーミュラリの協力依頼を発出
わが国において「フォーミュラリ」の厳密な定義はありませんが、厚生労働省発出文書の中では、「地域フォーミュラリ」とは「地域の医師、薬剤師等の医療従事者とその関係団体の協働により、有効性、安全性に加えて、経済性等も含めて総合的な観点から最適であると判断された医薬品が収載されている地域における医薬品集及びその使用方針」とされています。ただし、取り上げられているのはあくまで推奨薬であり、医師の処方を制限するものではありません。
2025年と2026年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)では、「地域フォーミュラリの全国展開」が明記され、普及促進策を検討した上で地域フォーミュラリ策定の取り組みを推進する方向性が示されました。また、第4期医療費適正化計画(2024~2029年度)でもフォーミュラリに関する医療関係者への周知等、必要な取り組みを行うこととされています。こうした流れの中で、厚生労働省は2026年3月30日付で「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(協力依頼)」の通知を発出し、各都道府県に対して、2026年度中に「地域フォーミュラリ策定に向けて検討する場」の設置要請を行いました。この他、2026年度診療報酬改定でも、地域支援・医薬品供給対応体制加算等の施設基準の中に「地域フォーミュラリへの参画が望ましい」旨が記載される等、現在、様々な政策により取り組みが後押しされている状況です。
地域フォーミュラリは、人口減少や高齢化等により厳しさを増す地域医療において、医療の質向上や薬剤の安定供給、薬剤費の適正化の他、医療制度の効率化や持続可能性の向上といった効果が見込まれており、患者・国民はもちろん、医療機関・医療従事者、地域行政、医療保険者等にとってもメリットが期待されています(図表1)。

【図表1】地域フォーミュラリのメリット

【図表1】地域フォーミュラリのメリット

出典:厚生労働省「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(協力依頼)」(2026年3月30日) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001683947.pdf (2026年9月15日閲覧)

■地域フォーミュラリを策定しているのは12府県
2025年5月、厚生労働省は全国の地域フォーミュラリの現状を把握するため、47都道府県を対象に、都道府県が把握している範囲の地域フォーミュラリの策定状況についてアンケート調査を実施しました。その結果、1件以上のフォーミュラリを策定済み又は策定中と回答があった都道府県は、12府県(約25%)にとどまっており(図表2)、厚生労働省は「意義や効果等の理解が広まっておらず、導入は極めて限定的」としています。一方で、2026年3月30日付通知により、都道府県に対して2026年度中の「地域フォーミュラリ策定に向けて検討する場」の設置が要請されたことから、今後、策定が進む可能性もあります。

【図表2】都道府県別策定状況

【図表2】都道府県別策定状況

出典:厚生労働省「地域フォーミュラリの作成状況の調査結果」(2025年9月17日) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001563615.pdf (2026年9月15日閲覧)

■医療関係者が協働して作成・運用し、適宜更新
厚生労働省が示している地域フォーミュラリの策定プロセスは図表3の通りで、疾患・領域別に使用・推奨医薬品を指定することとなるフォーミュラリは、医師や薬剤師をはじめとする関係者が協働して作成・運用することが求められています。なお、フォーミュラリを導入すべき領域については特に規定されておらず、地域の医療事情等を踏まえて可能な範囲で策定すればよいとされています。

【図表3】フォーミュラリの策定プロセス

【図表3】フォーミュラリの策定プロセス

出典:厚生労働省「フォーミュラリの運用について」(2023年7月7日) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001561816.pdf (2026年9月15日閲覧)
   厚生労働省「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(協力依頼)」(2026年3月30日) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001683947.pdf (2026年9月15日閲覧)

■山形県酒田市における地域フォーミュラリの効果
①後発医薬品による医療費の削減
地域フォーミュラリによる医療費適正化の要因の1つに、後発医薬品への置き換えがあります。2018年度から地域フォーミュラリを開始した山形県酒田市(人口約10万人)で後発医薬品が推奨薬となっているアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とプロトンポンプ阻害剤(PPI)の医療費削減効果について、NDBデータを基に分析したところ、ARBの薬剤費は、地域フォーミュラリ導入前の2017年は2億6,700万円でしたが、2024年には7,500万円まで減少しており、2億円弱の医療費削減効果がありました(図表4)。また、PPIについても、2017年は2億6,000万円だった薬剤費が、2024年には1億6,700万円となり、1億円弱の削減効果が生じていました。ただし、当該期間は全国的に後発医薬品の使用が促進されており、地域フォーミュラリ以外の影響も含まれていることには留意が必要です。

【図表4】ARBとPPIの使用金額の推移 ※2024年度NDBデータを分析。

【図表4】ARBとPPIの使用金額の推移

出典:厚生労働省「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(協力依頼)」(2026年3月30日) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001683947.pdf (2026年9月15日閲覧)

②ARBの平均処方種類数の低下
酒田市では2018年度からARBの地域フォーミュラリを開始しており、既にフォーミュラリリストが地域に浸透しています。2024年度NDBデータに基づき、酒田市の2024年度における薬局別のARBの処方種類数を全国と比較したところ、全国平均は29種類だったのに対し、酒田市の平均は23種類でした。
処方種類数別の分布を見ると、ARBを35種類以上処方している薬局は、全国では32.7%でしたが、酒田市の薬局では10.2%にとどまっています(図表5)。また、酒田市ではARBの処方種類数29種類以下の薬局が76.2%を占めていました。

【図表5】ARBを処方している調剤薬局におけるARBの処方種類数(割合)

【図表5】ARBを処方している調剤薬局におけるARBの処方種類数(割合)

出典:厚生労働省「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(協力依頼)」(2026年3月30日) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001683947.pdf (2026年9月15日閲覧)

医療データクリップ「令和7年 社会医療診療行為別統計の概況」

厚生労働省の「令和7(2025)年 社会医療診療行為別統計の概況」から、後発医薬品の使用状況について紹介します。

■後発医薬品の使用割合は「院外処方」が最多
2025年8月審査分のレセプトにおいて、薬剤点数に占める後発医薬品の点数割合は総数が20.0%で、「入院」が15.2%、「院内処方」が19.4%、「院外処方」が20.1%となっていました(図表6)。また、薬剤種類数に占める後発医薬品の種類数の割合は86.7%で、内訳は高い方から「院外処方」88.6%、「入院」79.5%、「院内処方」75.8%となりました。
後発医薬品の薬効分類別の薬剤点数の構成割合を見ると、「入院」では抗生物質製剤、「院内処方」と「院外処方」では循環器官用薬が最も多くなっており、それぞれの薬効分類における薬剤点数の20%前後を占めていました(図表7)。

【図表6】後発医薬品の使用状況(入院・院内処方・院外処方別)

【図表6】後発医薬品の使用状況(入院・院内処方・院外処方別)

【図表7】後発医薬品の主な薬効分類別の薬剤点数の構成割合(入院・院内処方・院外処方別)

【図表7】後発医薬品の主な薬効分類別の薬剤点数の構成割合(入院・院内処方・院外処方別)

出典:厚生労働省「令和7(2025)年社会医療診療行為別統計の概況」(2026年6月26日) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa25/dl/gaikyou2026.pdf (2026年9月15日閲覧)

  • ・統計の集計対象は、全国の保険医療機関・保険薬局から社会保険診療報酬支払基金支部及び国民健康保険団体連合会に提出され、2025年8月審査分として審査決定された診療報酬レセプト・調剤報酬レセプトのうち、NDBに蓄積されているもの
  • ・診療報酬レセプト(医科)の総数は8,996万9,318件、調剤報酬レセプトの総数は6,048万6,804件
  • ・「薬剤種類数に占める後発医薬品の種類数の割合(%)」は、[後発医薬品の種類数÷(後発医薬品のある先発医薬品の種類数+後発医薬品の種類数)×100]
  • ・「入院」及び「院内処方(入院外・投薬)」の集計対象は、診療報酬レセプト(医科)のうち、診療行為「投薬」に薬剤の出現するレセプト(「処方箋料」算定、「投薬」「注射」を包括した診療行為、DPC/PDPSに係るレセプトは除く)で、後発医薬品の割合は「投薬」における薬剤に占める割合
  • ・「院外処方(薬局調剤)」の集計対象は、調剤報酬レセプトのうち、薬剤の出現するレセプト
  • ・「薬効分類」は、構成割合の多い順に10分類を掲載

(2026年9月作成)

  • ・本資料は2026年9月15日時点の情報を基に作成しています。詳細については、出典元の資料をご確認ください。
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