増大する医療費への対応とセーフティネット機能の維持の観点から高額療養費制度を見直し
高額療養費制度の見直しのポイント(2026年8月〜、2027年8月〜)
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①月単位の自己負担限度額の見直し
・1人当たり医療費増を踏まえた月単位の自己負担限度額の引き上げ -
②長期療養者への配慮
・「多数回該当」の負担額の据え置き
・「年間上限」の導入 -
③低所得者への配慮
・住民税非課税ラインを若干上回る層の「多数回該当」の負担額の引き下げ
・住民税非課税区分の月単位の自己負担限度額の引き上げ率の緩和 -
④応能負担に基づく制度設計
・所得区分の細分化 -
⑤70歳以上の外来特例の見直し
・自己負担限度額の引き上げ
■月単位の自己負担限度額引き上げも「年間上限」を導入
高額療養費制度は、医療費の自己負担が家計に対して過重にならないよう設けられた制度です。8年ぶりとなる今回の見直しの背景には、高齢化の進展や医療の高度化、高額薬剤の開発・普及等により、医療費全体が増大していることがあります。セーフティネット機能として高額療養費制度を将来にわたって堅持していくためには制度改革が必要として、1人当たりの医療費増を踏まえて、月単位の自己負担限度額が引き上げられます。
ただし、治療が長期間にわたり、継続して医療費を負担しなければならない長期療養者の経済的負担に配慮し、2つの対応が取られます。1つは、「多数回該当」の負担額の据え置きで、もう1つは年単位の自己負担限度額を定めた「年間上限」の導入です。この「年間上限」の導入によって、月単位の自己負担限度額が引き上げられ月単位では制度の対象外となり「多数回該当」に該当しなくなっても、年間上限額に達した後は、自己負担が不要になります。
また、低所得者にも配慮し、住民税非課税ラインを若干上回る年収層の「多数回該当」の負担額が引き下げられ、住民税非課税者の月単位の自己負担限度額の引き上げ率が緩和されます。
さらに、応能負担という考え方に基づいた見直しも行われます。従来の区分は対象所得の幅が広く、例えば、年収400万円と年収750万円の患者の月単位の自己負担限度額は同じで、かつ、1段上の所得区分になると限度額が2倍程度に増加する設定でした。そこで、所得区分の変更による限度額の急増・急減が生じないようにするため、所得区分の細分化が行われます。
70歳以上のみを対象に設けられている「外来特例」も見直されます。加齢に伴って疾病リスクが増し、受診機会が増えるという高齢者の特性を考慮して、年収約370万円未満の所得層には「外来特例」が設定されています。しかし、医療費全体が増加している中で、現役世代の保険料負担を軽減するという観点から見直しは避けられないとして、限度額が引き上げられます。ただし、低所得者に対しては、限度額の据え置きや「年間上限」の導入といった配慮が行われています。
具体的な自己負担限度額は図表1の通りで、見直しは2026年8月と2027年8月の2回に分けて実施されます。
【図表1】自己負担限度額の見直し

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html (2026年7月15日閲覧)
■2026年8月の見直しでは所得区分は従来通り
2026年8月からの見直しでは、従来の所得区分が維持された上で、全ての所得区分の月単位の自己負担限度額が引き上げられます。ただし、「多数回該当」の負担額は据え置かれます。また、70歳以上の非課税者に対しても「多数回該当」が導入され、「多数回該当」の対象月の限度額は見直し前と同額に設定されています。
新設の「年間上限」については、8月~翌年7月が対象期間とされ、月額平均で見た場合に、「多数回該当」と同程度の自己負担となるよう設定されています。
70歳以上を対象とした「外来特例」の限度額については、表の一番下の「一定所得以下」以外は引き上げられます。ただし、非課税者には外来の年間上限が導入され、年間の最大自己負担額は据え置かれています。
■2027年8月の見直しでさらに引き上げられる所得層も
2027年8月からは所得区分が細分化され、所得層によっては月単位の自己負担限度額がさらに引き上げられます。ただし、月単位の自己負担限度額が引き上げられた所得区分も、「多数回該当」の負担額は据え置きとなります。
一方で、住民税非課税ラインを若干上回る年収層である「年収約200万円未満」の所得区分は、「多数回該当」と「年間上限」の負担額が引き下げられます。このうち、「年間上限」については、対象の所得区分に該当することが確認できた者に対しては、2026年8月~2027年7月の期間も41万円が適用され、2027年8月以降に償還払いが行われます。
「外来特例」も、所得によってはさらに引き上げられますが、年収約200万円未満や非課税等の場合は、据え置きや「年間上限」の導入による配慮がなされています。
事例1 単月のみ高額療養費に該当する場合
- ・40歳代・男性・標準報酬30万円(年収約410万円)の患者(3割負担)
- ・主な傷病・治療:胃がん・内視鏡手術
- ・総医療費約295.5万円(3割負担分 約88.7万円)
この事例の場合、今回の見直しにかかわらず高額療養費制度が適用されるのは、医療費の3割が62.9万円になる2月のみとなります。
対象となる2月の自己負担額を見ると、制度見直し前は10.2万円でしたが、見直し後は月単位の自己負担限度額の引き上げによって10.8万円となり、6,000円の負担増となります。
年間の自己負担額については、見直し前が約36.0万円、見直し後が約36.6万円となります。
【図表2】患者負担の変化

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html (2026年7月15日閲覧)
事例2 自己負担限度額の見直しにより多数回該当から外れてしまう場合
- ・年収約370~約510万円の患者(3割負担)
この事例の場合、見直し前は、受診した月の全てで自己負担限度額を超えていたため、高額療養費制度が適用されていました。また、適用4回目の12月からは「多数回該当」の対象となったことで自己負担はさらに軽減され、年間の自己負担額は約55.2万円でした。
一方、見直し後は、月単位の自己負担限度額の引き上げにより、限度額に達するのは8月の1回のみとなり、「多数回該当」から外れます。しかし、「年間上限」の導入により、3月の自己負担額は年間上限額に達するまでの支払いとなり、その後の自己負担は不要となるため、年間の自己負担額は53.0万円となり、負担は見直し前より2.2万円減少します。
【図表3】患者負担の変化

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html (2026年7月15日閲覧)





