「生活習慣病管理料」は現場実態を踏まえた修正にとどめるべき 診療側
中央社会保険医療協議会・総会は10月中旬、かかりつけ医機能の評価や生活習慣病の管理などについて議論しました。この中で支払側は、かかりつけ医機能報告の創設を踏まえた「機能強化加算」の抜本的な見直しや、「生活習慣病管理料(Ⅰ)」の評価適正化などを提案。これらに反対する診療側との間で意見が激しく対立しました。
この日の総会は、(1)かかりつけ医機能の評価、(2)生活習慣病の管理に関する評価、(3)外来機能の分化の推進について意見交換。
(1)では、かかりつけ医機能の評価である「機能強化加算」の施設基準をかかりつけ医機能報告の報告項目に合わせて見直すかどうかが、争点の一つとなっています。
(2)の「生活習慣病管理料(Ⅰ)、(Ⅱ)」では、▽受診頻度や検査頻度が2カ月に1回より少ない患者は包括評価の「管理料(Ⅰ)」、それ以外の患者は検査等が出来高算定できる「管理料(Ⅱ)」の算定が多い傾向がある、▽6カ月間に1度も血液検査の実施がない「管理料(Ⅱ)」算定患者が一定数存在することなどが議論されています(図表1)。
(図表1)生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の算定状況

出典:令和7年10月17日 厚生労働省中 央社会保険医療協議会 総会(第621回)総-1 一部抜粋編集
支払側の委員は、「(関係学会の)ガイドライン(GL)に基づくタイミングで検査を実施することが質の高い管理を行う上で非常に重要な視点だ」とGLに沿った診療の実施を要件化する必要性を指摘。検査頻度が低い患者で算定が多い「管理料(Ⅰ)」については、「検査をはじめとする医療資源投入量を詳細に分析して、実態に合った評価に適正化することを強く求める」と訴えました。
生活習慣病の管理については2024年度改定では、「特定疾患療養管理料」の対象からの生活習慣病の除外や「生活習慣病管理料(Ⅱ)」の新設など大幅な見直しが行われました。診療側の委員は、「医療機関は現在も2024年度改定の対応に難渋しているところであり、次回改定は臨床現場の実態を踏まえた修正を優先すべきだ」と主張。医師は患者の状態の変化に応じて適切な受診や検査のタイミングを判断しているとし、個々の患者に応じた柔軟な管理を可能にする観点からも、医療資源投入量に応じた評価の適正化などに異議を唱えました。
2026年度調剤報酬改定 議論のポイント
中央社会保険医療協議会の総会で進められている調剤報酬に関する議論から、2026年度調剤報酬改定のポイントを確認します。
■薬局、薬剤師を取り巻く状況
薬局数は年々増加しており、2019年度は約6.3万件。東京都や大阪府など都市圏で増加している一方で、都道府県によっては減少しているところもあり、特に、処方箋発行枚数に対する薬局数に着目すると、大都市に集中している傾向が見られるとしています。
薬局薬剤師数については、18都道府県で偏在指数が1.0を超えていましたが、病院薬剤師数については、薬剤師偏在指標が1.0を超える都道府県はなかったとしています。
「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」においては、地域における薬局・薬剤師の役割が整理され、地域における薬局の機能としては、「地域・拠点で確保すべき機能」と「個々の薬局に必要な機能」に大別され、地域の医療提供体制を担う医療提供施設である薬局のあり方が示されています(図表2)。
(図表2)地域における薬局・薬剤師の役割・機能

出典:令和7年9月10日 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第616回)総-2 一部抜粋編集
■調剤医療費
2024年度の概算医療費は48兆円で、そのうち調剤医療費は8.4兆円。その内訳は薬剤料が約6.1兆円、技術料は約2.3兆円となっています。
2022年度改定で、調剤報酬の評価体系の見直しが行われ、調剤料の一部が薬学管理料に再編されたため、直接的な比較はできないものの、見直し後は技術料の約5割が薬学管理料で占められ、対人業務へのシフトが進んでいるものと考えられます。
■服薬指導に関する評価
2022年度改定で薬学管理料として新設された「調剤管理料」については、算定回数および総額は、調剤日数が多くなるほど大きくなっており、29日分以上の区分が最も多くなっています。また、「服薬管理指導料」の算定回数の推移は、処方箋枚数の推移と同様の傾向であり、患者が3月以内に同じ薬局を利用した場合の算定回数は全体の約75%となっています。
薬局薬剤師による患者フォローアップの方法は、「電話」という回答が最も多く、フォローアップを実施することが多いのは、「糖尿病患者」との回答が最多となっています。患者のフォローアップが必要な吸入薬指導加算、特定薬剤管理指導加算2、調剤後薬剤管理指導加算の算定回数は、新設された2020年度以降、概ね増加傾向にあるとしています(図表3)。
(図表3)フォローアップに関する薬剤管理指導の算定状況

出典:令和7年9月10日厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第616回)総-2 一部抜粋編集
■かかりつけ薬剤師に関する評価
かかりつけ薬剤師指導料およびかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数・届出薬局数は増加傾向で、届出薬局数は保険薬局全体の6割となっています。一方で、全処方箋の受付回数に占める割合は約1.8%に留まっています。
■重複投薬・多剤投与、残薬解消等に関する評価
医師への疑義照会により処方内容が変更され、重複投薬・相互作用等防止加算を算定した割合は、2018年以降同程度で推移。残薬解消等の服薬支援である「外来服薬支援料1」、減薬の取り組みである「服用薬剤調整支援料」の算定回数は増加傾向にあるとしています。
■医療機関等への情報提供、連携等に関する評価
「服薬情報等提供料」は、全体としては2021年度以降の算定回数が増加していますが、「服薬情報等提供料2」については、2024年度改定時の算定要件の見直しにより、伸びが鈍化しています。
■薬局の体制に関する評価
これまでの改定で、大型門前薬局の見直し、大規模グループ薬局の店舗数に応じた基本料の見直し、調剤基本料2の処方箋受付枚数要件の見直しを行ったことにより、基本料1以外の薬局は34.2%となっています。
地域支援体制加算1~4のいずれかを届け出ている薬局は38.4%であり、調剤基本料1の薬局では約4割、調剤基本料1以外の薬局では約3割が届出をしています(図表4)。
後発医薬品の使用促進に伴い、後発医薬品調剤体制加算の算定回数は増加傾向にあり、特に、後発医薬品調剤体制加算3の算定回数・届出薬局数は増加しています。
(図表4)地域支援体制加算の現状等

出典:令和7年9月10日 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第616回)総-2 一部抜粋編集
■論点
これらの現状を踏まえて次回改定の論点としては、地域の医薬品供給拠点の役割を一層充実させる観点から、「調剤技術料(調剤基本料、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算等)における評価」の検討を進めるとしています。
また、薬剤師の対人業務を拡充させる観点から、「薬学管理料(調剤管理料、かかりつけ薬剤師指導料等)における評価について」も見直しを検討していく考えが示されています。
その他、敷地内薬局についての論点や、在宅医療においては薬剤師と医師との同行訪問への評価についての論点などが示されており、今後更なる検討が進められることになります。
長期収載品の患者負担引き上げを提案 医療保険部会で厚労省
社会保障審議会・医療保険部会は11月上旬、薬剤給付のあり方について議論しました。
調剤医療費の分析データによると、後発医薬品の使用割合(数量ベース)は2024年10月の長期収載品の選定療養化を境にそれまでの80%台から90%以上に上昇(図表5)。後発医薬品の使用促進に一定の効果があったとみられていますが、その後は横ばいでの推移が続いています。
(図表5)令和6年度 調剤医療費(電算処理分)の動向<後発医薬品割合(数量ベース)の推移>

出典:令和7年11月6日 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会(第202回)資料1-2 一部抜粋編集
■患者負担を価格差の1/2、3/4、全額に引き上げる3案を提示
後発医薬品の限定出荷・供給停止など供給不安は依然として続いているものの、厚労省はさらなる使用促進を図る観点から、患者希望で長期収載品を使用した場合の負担水準を、現行の先発医薬品と後発医薬品の価格差の1/4から1/2、3/4または価格差の全額(1/1)にまで引き上げることについて、部会に検討を求めました。
この提案にある委員は、「後発医薬品の処方が可能なケースで長期収載品を処方する場合は(価格差を)全額患者負担とすることを大きな方向性とすべきだ」と指摘。別の委員は選定療養の対象範囲の拡大も必要だとし、選定療養の対象外である医療上の必要がある場合について、「厳格な精査等、内容を整理して具体的な見直し案を示してほしい」と厚労省に要請。一方で、「後発医薬品の安定供給に向けた取り組みを着実に対応した上で検討を進めるべきだ」など、供給不安が続く中での患者負担引き上げに慎重な意見もみられ、議論が進められています。
■OTC類似薬の保険給付見直し、複数委員が選定療養化を提案
OTC類似薬の保険給付の見直しでは、▽子どもや慢性疾患患者、低所得者の患者負担への配慮▽OTC類似薬の範囲が主な論点となりました。
OTC類似薬の保険給付からの完全除外を求める意見はなく、出席している委員からは「OTC薬で代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象として選定療養で追加の自己負担を求めるか、償還率を変える方法についても具体的に検討すべきだ」との提案がありました。ある委員も保険給付からの除外で患者負担が高くなる逆転現象が起きないよう、「保険の枠内に置きつつ、保険外併用療養のように別途負担を求める仕組みも考えられるのではないか」と述べました。
一方で、別の委員は、相互作用の発生や重篤な疾患の発見が遅れる可能性などを危惧し、保険給付からの除外に改めて反対姿勢を表明。「医療用医薬品として医師が処方しているものを費用の問題でOTCの方に寄せることについて、国民の理解はなかなか得られないのではないか」とし、委員からは慎重な議論を求める意見が相次ぎました。
OTC類似薬の範囲では、「単一の成分で同じ適応傷病名を持っているOTC薬がある医療用医薬品を交付する場合の保険給付のあり方をどうするかに絞って議論する必要があるのではないか」と委員から意見があがりました。
※本稿は2025年11月19日時点の情報に基づき作成いたしました。
(制作・編集:株式会社日本経営 2025年11月作成)
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