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地域医療の実現のために
リフィル処方箋の運用実態から見る地域包括ケアと薬局の役割
〜小児科領域における導入効果と安定供給時代における薬局機能の強化に向けて〜
一般社団法人 沼津薬剤師会
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一般社団法人 沼津薬剤師会 会長 板井 和広 先生
「経済財政運営と改革の基本方針2026(いわゆる骨太方針2026)」にも明記され、医療機関の負担軽減や患者の利便性向上につながる「リフィル処方箋」。今回はその運用実態や、吸入剤をはじめとする医薬品の安定供給を軸に、地域医療の現状と未来像について、沼津薬剤師会会長の板井和広先生にお話を伺いました。医薬品の出荷調整に伴う在庫共有やフォーミュラリへの対応など、経営・実務上の課題が山積する昨今、これからの地域医療への貢献や未来の薬局のあり方について、経営者、そして地区薬剤師会会長としての包括的な視点から紐解いていただきました。
目次
01リフィル処方箋の導入と地域医療への影響
●リフィル処方箋導入のきっかけ
板井先生:近隣の小児科クリニックが2022年4月からの制度開始とともにリフィル処方箋を導入しました。この地域においては小児科の開業医が少なく慢性的に混雑しているため、医療資源の有効活用と医師の負担軽減による一人ひとりの診察時間確保が目的でした。
●地域医療への影響
板井先生:医療機関においては症状が安定している患者さんの受診回数が減ることで、急性期対応などにより多くの時間を割けるようになりました。また、共働きや幼い兄弟がいる家庭においては、受診に伴う通院負担が軽減されることで実質的な生活支援につながります。さらに、薬剤師が服薬状況や副作用、症状の変化を継続的に確認し、必要に応じて医療機関への情報提供や受診勧奨を行うことで、地域全体で包括的に患者さんを支える体制が構築できるようになりました。
02リフィル処方箋における患者さんへの説明とメリット
●患者さんへの説明
板井先生:リフィル処方箋による調剤では、患者さんが2回目以降の来局(リフィルでの調剤)を失念してしまうケースが想定されます。そのため当薬局では、「リフィル処方箋に関する説明文書」(図)を作成し、これを用いて患者さんに仕組みや注意事項を丁寧に説明しております。また、薬局側でも来局予定日をカレンダー等で管理・把握し、期限が迫っている患者さんには事前にご連絡を差し上げるなど、継続的なサポート体制を構築いたしました。
●患者さんのメリット
板井先生:先にも述べましたとおり、患者さんをサポートするご家族の方々、また小児科に受診している患児の保護者の方々にとっては、症状が安定している場合に毎回医療機関を受診しなくても薬を受け取れるため、通院にかかる時間的・身体的負担を軽減できる点が大きなメリットです。特に小児科領域では、保護者が仕事を調整したり、他の兄弟姉妹を連れて受診したりする負担が大きいため、再診回数の減少は家庭生活の安定にも直結します。また、薬局で継続的に服薬状況や副作用の有無を確認することで、患者さんやご家族がより安心して治療を継続できる環境を提供できることも挙げられます。
03リフィル処方箋運用における課題と改善策
板井先生:リフィル処方箋の運用開始当初、外用剤において、投与日数が不明な処方箋が発行される事例がありました。そのため、その都度疑義照会にて確認を行っていましたが、導入が進むにつれて問い合わせるケースも少なくなっていきました。
04薬局の経営面への影響
板井先生:薬局経営の面では、リフィル処方箋への対応により、患者さんの来局予定管理や期限切れ防止の連絡、服薬状況・副作用の確認、医療機関への情報提供など、通常の調剤業務に加えて継続的なフォローアップ業務が必要となります。そのため、薬剤師や事務スタッフの業務負担の軽減、および管理体制の整備が課題となっていました。
一方で、例えば90日分の長期処方を行うよりも、30日処方(リフィル3回)とすることで、患者さんのフォローアップが管理しやすくなり、継続的な接点も確保されます。これにより、かかりつけ薬局としての信頼関係を構築しやすくなり、地域医療における薬局の存在価値を高める契機となりました。
リフィル処方箋を適切に運用することは、単なる処方箋応需にとどまらず、患者さんの治療継続を支援する薬局機能の強化につながると考えています。また、調剤機会(処方箋受付回数)の確保は、経営面における技術料収入などの安定・向上にもプラスに働くと期待されます。
05薬局の在庫管理への影響
板井先生:近年、医薬品卸への返品ルールが納品から2ヶ月ないし3ヶ月以内と厳格化されています。例えば90日処方でかつ特定の少数の患者さんにしか使用しない薬剤や高額医薬品の在庫を抱えることは、薬局経営にとって大きな負担となるケースがあります。リフィル処方箋は次回来局時期を把握しやすいため、需要予測に基づいた適切な発注・在庫管理が可能となり、医薬品の供給不安定時においても患者さんへの継続的な投薬を支えやすくなります。
06吸入剤の特徴と後発医薬品
板井先生:地域医療への貢献という観点から、10年ほど前に沼津薬剤師会と基幹病院で連携して「医薬連携吸入連絡会」を立ち上げ、その取り組みは現在も続いています。
吸入剤の後発医薬品への切り替えにおいて、先発医薬品と後発医薬品との間でデバイスの構造や操作性における決定的な相違は特段認められていません。吸入操作や使用感そのものに大きな差異はなく、患者さんが混乱を来すような影響は少ないと考えています。細かな相違点を挙げるとすれば、初回使用時などの空打ち(作動確認)の回数が異なる程度であり、これについても適切な吸入指導を行うことで臨床上大きな問題とはなりません。
一方で、今回の切り替えにおいて顕著な影響を与えたのは、デバイスの性能差よりもむしろ、近年の医薬品供給面における安定性の差です。どれほどデバイスが酷似していても、必要な時に安定して製品が供給されなければ、患者さんへの継続的な治療維持に支障を来すだけです。吸入剤特有の課題としては、デバイスの優劣以上に、製造販売元による確実な安定供給体制が担保されているか否かが、後発医薬品を採択・継続する上での実質的な焦点であったと感じています。
07医薬品の安定供給と地域フォーミュラリ
板井先生:医薬品の出荷調整はここ数年続いており、本来の薬局業務に多大な支障を来しています。沼津薬剤師会では、セキュリティに配慮した独自のデータ連携基盤を基にした在庫共有システムを導入しており、会員同士でリアルタイムな情報共有を行っています。地域フォーミュラリの整備は、効率的な在庫管理や供給不安定時における代替薬の迅速な検討にも寄与すると考えられるため、今後早急に進めていく必要があると考えています。
08地域における薬局の将来展望
板井先生:地域医療における薬局は、単に処方箋に基づいて薬剤を交付する場ではなく、患者さんの治療継続と生活を支える身近な医療拠点としての役割を担うべきであると考えます。特にリフィル処方箋の運用においては、こうした継続的なフォローアップの積み重ねが、医療機関と患者さんを繋ぐ「結節点」としての機能を薬局にもたらします。
今後は、地域フォーミュラリや在庫共有システム、医療DXの活用を進めながら、薬局間のみならず、医療機関、行政、多職種が密に連携し、「地域全体で患者さんを支える体制」を構築していくことが重要です。このように、これからの薬局には、「薬を渡す場所」から「地域住民の健康を継続的に支える拠点」へと発展していくことが求められています。
(開催日:2026年7月21日 開催場所:オンライン)



