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地域医療の実現のために

地域の心不全患者さんを多職種が顔の見える連携で支える
〜シンプルな基準&使いやすい手帳でより良い心不全療養の実現を〜

NPO法人和歌山心不全アラート

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  • 谷本 貴志 先生 和田 直子 先生 加賀 裕輝 先生 阪口 将登 先生 長谷川 浩平 先生
    和歌山県立医科大学 教育研究開発センター 准教授 
    谷本 貴志 先生(写真・左から1番目)
    日本赤十字社和歌山医療センター 看護部/IT推進室 
    和田 直子 先生(写真・左から2番目)
    シニアCOOP和歌山北ケアプランセンター、
    和歌山県介護支援専門員協会 
    加賀 裕輝 先生(写真・左から3番目)
    角谷リハビリテーション病院 診療技術部療法士科 
    阪口 将登 先生(写真・左から4番目)
    紀三井寺カイセイ薬局 
    長谷川 浩平 先生(写真・左から5番目)

特定非営利活動法人(NPO法人)和歌山心不全アラートは、「地域において心不全・心疾患をもつ患者の方々と医療・介護従事者に対して、地域共通のツールを用いた心不全多職種地域連携を促進することにより、心不全療養の質向上および連携の促進に寄与する」ことを目的に活動する、多施設・多職種のメンバーで構成された団体である。2020年に任意団体「和歌山心不全地域連携の会」として活動を開始し、翌年には地域共通の心不全受診基準と支援・連携ツールを作成、それらを地域に広めるための講演会や勉強会をこれまで多数開催してきた。2024年6月にNPO法人化したが、任意団体の発足当初から変わらない精力的な活動とそこにある各メンバーの思い、今後の展望などについて、和歌山心不全アラート代表・谷本貴志先生(医師)、副代表・和田直子先生(看護師)、理事・加賀裕輝先生(介護支援専門員)、理事・阪口将登先生(理学療法士)、理事・長谷川浩平先生(薬剤師)にお話を伺った。

01地域の多職種が集結したNPO法人和歌山心不全アラート

谷本先生:もともと私が任意団体「和歌山心不全地域連携の会」(以下、会)を設立しようと思ったのは、将来的に和歌山県も心不全パンデミックの到来が予測されるなかで、心不全療養に対する他施設の取り組みを把握して良いものは広く共有したかったこと、そして、患者さんの長い療養生活を支えていくためには地域の医療・介護に関わる多職種と顔の見える連携が必要だと感じたことがきっかけでした。

和田先生:2020年の会発足の前、他施設の方と一緒に和歌山県立医科大学(以下、大学)に集まり、谷本先生から活動の趣旨を説明してもらったのを覚えています。当初の参加者は、谷本先生が日頃から連携のあった急性期病院を中心とした医師や看護師が主だったと記憶しています。その後、会が発足して心不全地域連携の話を進めていくうちに自然と多職種がメンバーに加わっていきました。

谷本先生:多職種の参加は当初から意識しており、地域連携で欠かせない存在として訪問看護師や介護支援専門員(ケアマネジャー)などにも声をかけました。ケアマネジャーに関しては、大学病院の患者支援センターに活動の相談をした際に"地域連携のキーとなる職種"の1つと教えてもらい、私のように急性期病院で勤務しているとケアマネジャーの方と話す機会がほとんどないので、会で知り合いになれて非常に良かったです。なお、第1回の会合にはお声がけした医療ソーシャルワーカーや和歌山市地域包括支援センターから保健師などの参加もありました。

加賀先生:ケアマネジャーの存在に注目してもらえたのは大変有り難いです。おそらく、この類の団体でケアマネジャーが理事などのコアメンバーに入っているのは全国的にも珍しいと思われます。ケアマネジャーのコアメンバーとして私は2代目ですが、前任者とは職場が同じで折に触れて会の話を聞いていましたし、会が2021年から開催している年2回の講演会「Wakayama HF ALERT」(後述)には毎回参加していたので、自分にできることはないだろうかとよく思っていたものです。

谷本先生:会では、地域における心不全療養の質向上と多職種連携促進を目指して、2021年に地域共通の心不全受診基準「和歌山心不全アラート」と支援・連携ツール「和歌山心不全手帳」を作成し(後述。図1、図2参照)、両者を地域で運用してもらうために講演会や勉強会を多数開催してきました。そして、手帳の発行に費用が必要などの実務上の事情もあり、今後の活動をより持続的で安定したものとする目的で、2024年6月に会をNPO法人化しました。和歌山県から法人設立の認証を受けたことは信頼度の高い団体である証として私たちが今後活動していくうえでもプラスになります。設立の手続きや準備にはいろいろ苦労がありましたが、私としては会の活動を一緒に行ってきた20名弱のコアメンバーの多くが法人理事の役を引き受けてくれたのが大変嬉しかったです。なお、法人化にあたっては、NPO法人北海道心不全医療連携アカデミー〔2022年設立。理事長:石森直樹先生(北海道大学病院 客員研究員)〕と連携し、その活動を参考にさせてもらいました。

谷本 貴志 先生

谷本 貴志 先生

02地域共通のシンプルな受診基準「和歌山心不全アラート」システム

谷本先生:和歌山心不全アラート(以下、アラート)は、地域において心不全の悪化にいち早く気づき、適切な受診につなげるためのシステムです。患者さんの日々の体重、労作時または安静時の息切れ・息苦しさ、倦怠感をチェックした結果、"黄色"アラートであればかかりつけ医に、"赤"アラートであれば急性期病院の救急外来に連絡して受診するように促しています(図1)。

和田先生:アラートの作成は、まずは全国さまざまな地域の心不全手帳をできるだけ集め、受診基準をどのように記載しているか把握するところから始めました。和歌山県は高齢化の状況が全国11位、近畿府県内では1位(2025年1月1日現在)1)で、単身および夫婦のみの高齢者世帯が多いという地域性があります。そのような世帯の患者さんでも自分で受診の判断ができるように、ごくシンプルな基準を目指して他地域での信号機を模した事例を参考に会で話し合いを重ね、図1の形となりました。

図1 和歌山心不全アラート
図1和歌山心不全アラート

〔和歌山心不全手帳 第2版(https://wakayama-hf.org/_src/30994/document_no2.pdf
2026年1月13日閲覧)提供:NPO法人和歌山心不全アラート〕

谷本先生:当初、隣の大阪府の「大阪心不全地域医療連携の会」で発案された心不全ポイントというシステムをそのまま和歌山県に導入することも検討しました。しかし、症状の有無など複数の項目について点数(心不全ポイント)化して合計点で評価するシステムのため、高齢化が進んでいる和歌山県の患者さんには利用困難な方が多いかもしれず、和歌山県では視覚に訴える"黄色"信号か"赤"信号かで分かりやすくしようという話になりました。

和田先生:アラートの運用を開始して4年半近く経ちますが、患者さんが「黄色の症状なので」と言って受診したり、訪問看護師やケアマネジャーの方から「最近、黄色の症状が目立つ」と受診相談の電話をもらったりする例を多数経験しており、アラートが地域の受診基準として一定の確立をしていると感じます。

和田 直子 先生

和田 直子 先生

谷本先生:以前は、患者さん・家族は心不全の悪化による臨時受診のタイミングが分からず、体調の悪さを感じても次の定期受診まで我慢してしまう例も多くありました。現場の医師として、なぜもっと早く受診しなかったのかと残念な思いがあり、アラートで受診基準をシンプルに示すことには患者さんが迷わず受診できるようにしたいという目的もありました。また、地域の多職種は心不全以外にもさまざまな病気を抱える患者さんに関わっているので、心不全の場合はどこに注意すればよいのかを簡潔に関係者に伝えたいという意図もありました。

阪口先生:私は回復期リハビリテーション病院の理学療法士として入院や外来の患者さんと関わっています。現場では、循環器疾患を専門としていない医療従事者やリハビリスタッフが患者さんの指導にあたる場面も多く、心不全悪化のサインや受診の目安をどのように伝えるかに悩むことも少なくありません。そのようなスタッフにとっても、アラートのシステムは非常に分かりやすくて役立っています。

加賀先生:心不全がある利用者さんと一緒に、そもそも黄色アラートにならないように日々の生活のなかで気をつけようと共通の目標を設定しやすいのも大きなメリットで、心不全悪化時の早期受診だけでなく悪化予防の面でも効果的なシステムだと感じています。

03和歌山心不全手帳①:地域共通の患者さん支援&多職種連携ツール

和田先生:私たちはアラートのシステムと併せて、地域における患者さん支援および多職種連携のためのツールとして和歌山心不全手帳(以下、手帳)も作成しました(図2)。作成にあたっては、心不全診療ガイドラインで疾病管理に必要とされている内容を網羅できるようにしつつ、手帳としての分かりやすさ・使い勝手の良さを重視しました。例えば、「心不全の管理のコツ」の頁は、患者さんが読みやすい形式を検討した結果、Q&Aでの記載としました。また、手帳全体を通して、アラートの"赤"と"黄色"に関わる箇所は各々の色付けをして視認性を高め、説明に使う言葉も難しくならないように配慮しました。そのほか、文字のフォントやサイズ、記入欄の大きさなどの細部についても、患者さんに試作版を実際に使用してもらって意見を聞き、修正を重ねました。そのようなさまざまな工夫をし、作成に1年余りかけて第1版を発行しました。

図2 和歌山心不全手帳
図2和歌山心不全手帳

〔和歌山心不全手帳 第2版(https://wakayama-hf.org/_src/30994/document_no2.pdf
2026年1月13日閲覧)提供:NPO法人和歌山心不全アラート〕

*全頁PDFを上記URLからダウンロード可能(無断転載禁止)

谷本先生:患者さん・家族、そして多職種に心不全管理のポイントを広く知ってほしいとの思いから、アラートの"赤"と"黄色"は手帳のなかで何度もくり返し使用して目に入るようにしています。また、表紙には和歌山県のPRキャラクターである「きいちゃん」(紀州犬がモチーフ)が登場しており、地域で安心して使用してもらうのに一役買っていると思います。NPO法人化後の2025年には第2版も発行し、これまでの総発行数は5,000冊に達しました。患者さんが手帳を1冊使い切るには「自己管理表」の記入を1年間続ける必要がありますが、2冊目、3冊目と使用を続けて長期の心不全管理につながっている方もいます。

長谷川先生:私は薬剤師として、患者さん退院後の在宅療養の場面で手帳を見る機会が多いのですが、もし手帳がなかったらおそらくすでに再入院していたであろう方の顔が何人も浮かびます。

阪口先生:私も再入院を防げている例を経験しています。約6年間リハビリテーション(以下、リハビリ)に通っている重症度の高い心不全患者さんで、以前は年に1回ほど入院をしていましたが、手帳を使い始めてからの直近2年間は入院していません。

長谷川先生:この手帳は心不全でチェックするポイントがよく絞られていて、患者さんだけでなく在宅で関わる私たち多職種にとっても分かりやすいツールだと感じます。また、自己管理表のメモ欄には私たちも適宜記入ができるので、薬剤師としては訪問時の患者さんの様子を看護師やケアマネジャー、ヘルパーらと日々共有した連携ができ、さらにその情報を診察機会が限られる医師にも共有できるツールとして活用しています。

加賀先生:看護師からヘルパーへ、ヘルパーからケアマネジャーへなど、各職種が他職種に向けて利用者さんの情報をさまざまに書き込むので、"この一冊があればその方の心不全の状態がよく分かる"ツールになっていると言えます。そして、例えば利用者さんの炭酸飲料の摂取状況について、それだけをわざわざ報告しづらいのが正直なところですが、手帳に書き残しておきさえすれば医師をはじめ皆さんが見てくれて、「心不全が悪化しないように摂取量を控えましょう」という話につながります。ケアマネジャーの立場からすると、循環器領域に限らず、医師や看護師、薬剤師などの医療従事者には少し遠慮しがちなところがあるので、このコミュニケーションツールの存在は本当に有り難いですし、手帳を使い始めてからコミュニケーション自体のハードルも下がったと感じます。紙媒体でアナログではありますが、その"紙のSNS"的な使い方が地域の高齢者の在宅医療・介護にマッチした印象です。

加賀 裕輝 先生

加賀 裕輝 先生

04和歌山心不全手帳②:使用者の声を受け、より使いやすいツールへ

長谷川先生:地域の保険薬局で働く薬剤師の立場から少し話しますと、外来の心不全患者さんに関しては比較的状態の安定している方が多いこと、また外見上は状態の変化がよく分からないこともあって、以前は「特にお変わりないですね」と処方薬を渡すだけで済ませてしまいがちだったかと思います。しかし、会に参加して、それでは不十分だと改めて学ぶとともに、やはり薬剤師が率先して服薬コンプライアンス向上に貢献していかなければと考え、手帳の活用においては服薬中のフォローアップがしっかりできることを特に重視しています。なお、2024年度の診療報酬改定において調剤後薬剤管理指導料2が薬学管理料として新設され、慢性心不全も算定対象となったことで心不全をしっかり勉強しようと考えを新たにした薬剤師も多数いたと思います。私自身は、会に参加し始めたのが薬学管理料の新設が発表される少し前で、結果的に非常に良いタイミングで勉強させてもらえて有り難かったです。

阪口先生:私は手帳の第1版が完成した直後から会に関わり始めました。第1版の自己管理表には"運動"の記入欄がなかったので、心臓リハビリの観点から追加を提案しました。心不全の悪化を予防するうえで、身体活動量は心不全症状や服薬の確認などとともに重要です。手帳に日々の血圧や体重だけでなく運動の記入欄もあることで、心不全が悪化しない生活習慣を患者さんが意識することにつながり、さらに優れたツールになったと感じています。

阪口 将登 先生

阪口 将登 先生

和田先生:第1版を実際に地域で使い始めて、多職種からもいろいろな意見をもらいました。例えば運動関係では、「自宅でできるトレーニング」の頁を患者さんが見ながらできるように充実させたいとの声や、どのくらいまで運動して大丈夫なのかという質問があったので、阪口先生とも相談して、第2版では"簡単にできる足の運動"の紹介や、主観的な運動強度の指標としてBorg(ボルグ)スケールを掲載して運動のしすぎに注意する解説を加えました。その他、「あなたの自己管理の目安」の頁を4頁に増やし、手帳を使う1年の間に目安体重の見直しが複数回あっても対応できるようにしました。また、「心不全の緩和ケア」の頁も追加しています。これは、日本では"緩和ケア=がん"というイメージが医療従事者のなかでもまだ根強くあると感じ、心不全にも緩和ケアは必要だと知ってもらうために入れました。手帳の作成は、第一には心不全患者さんの教育・支援のためですが、地域の多職種に心不全を知ってもらうためでもありました。

05講演会や各職種のネットワークでアラート&ツールを地域に広める

谷本先生:アラートも手帳も、実際に地域で活用してもらうために普及活動には力を入れてきました。アラート・手帳の運用開始当初から続けている活動として、地域の医療・福祉・介護従事者を対象にしたWakayama HF ALERTという講演会を年2回行っており、2025年12月の開催で第10回を迎えました。この講演会では、多職種が参加してそれぞれが学びを得られるように、毎回テーマを変えてさまざまな職種の方に登壇してもらっています。また、運営についても多職種のメンバーが交代で役割を担っています。参加者に占める医師の割合が2割弱と少ないのも特徴と言えます。なお、NPO法人化の前は職種別の小規模勉強会も熱心に行っていましたが、一定の役目をいったん終えたと判断し、これからは多職種グループでの勉強会を必要に応じて企画していければと考えています。そのほか、ホームページやX(旧 Twitter)での日頃の情報発信はもちろん、市民向けのイベント(図3)も開催するなどして広報に努めています。

図3 市民向け健康セミナー
図3市民向け健康セミナー

左:案内チラシ、右上:◯×クイズ大会の様子、右下:フレイル予防体操コーナーの様子
(提供:NPO法人和歌山心不全アラート)

和田先生:普及活動においては、当法人の理事に多職種がいることが一番の強みになっていると感じます。どの職種にも自分の専門分野の活動母体があり、薬剤師には長谷川先生から、理学療法士には阪口先生からという具合に、それぞれのネットワークを使って声をかけたり案内を流したりしてもらえるので動きやすいです。

長谷川先生:2024年度の診療報酬改定の際、どのように動けば心不全での地域連携ができるのか、そして先述の調剤後薬剤管理指導料2を算定できるのかが分からない薬剤師が多い現状を受けて、私が地域の薬剤師会で講演する機会がありました。そこではアラートと手帳の紹介も行い、薬剤師にとって重要な多職種連携としてすでに浸透しつつあるがん領域においてCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events、有害事象共通用語規準)が用いられている例を挙げ、心不全において多職種間での患者評価の共通のものさしとして非常に有用なのがこのアラートだと説明しました。また、薬剤師会でも市民向け健康増進イベントを毎年開催されますが、そこに、当法人が多職種で参加させてもらい、医師による講演や看護師による携帯型心電計での測定体験を実施したところ、参加した市民、そして薬剤師からも大変好評を得られました。今後も薬剤師会などでの活動を通じて地域の多職種連携の場を広げていきたいです。

長谷川 浩平 先生

長谷川 浩平 先生

阪口先生:私は和歌山心臓リハビリテーション研究会の理事も務めており、2025年7月に行った研究会では当法人とのジョイントセッションを企画しました。その際、谷本先生が登壇することでアラートの意義や活用方法について講演してもらうことができました。ただし、参加する療法士の多くは所属が急性期や回復期の病院という現状があり、地域で訪問リハビリに従事する療法士や介護スタッフにどのように広げていくかが今後の大きな課題だと感じています。

加賀先生:ケアマネジャーを上手く使ってもらうのも一法かもしれません。ケアマネジャーが作成するケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)に"手帳への書き込みを行う"と記載すれば、利用者さん本人を含め関係者全員が自然と手帳を使う流れになるためです。手帳を配付した際にはケアマネジャーにも一声かけておくと有効だと思います。

谷本先生:その方法はぜひ関係者に広く知らせ、地域で普及させていきましょう。現在、アラートと手帳は和歌山市内をメインに普及しており、そのほかの地域ではまだ一部ですが、将来的には和歌山県全域に広げていきたいというのが当法人の思いです。手帳の名前を「和歌山"市"心不全手帳」とはせず、表紙に県のキャラクターを採用しているのは私たちの決意の表れであり、そのためにまずは和歌山市での実績づくりを頑張っているところです。

06地域でのより良い心不全療養を目指し、今後も活動を続けていく

和田先生:アラートと手帳をさらに広げるために、当法人の活動としては、まずは講演会Wakayama HF ALERTを今後も継続していくのが大事だと考えています。一方で、心不全看護認定看護師として活動するなかで、県の内外のさまざまな場においてアラートを紹介し、手帳を実際に手に取って見てもらう機会を意識的につくってきました。どこでどのようにつながりが生まれて広がっていくか分からないので、普段からコツコツと活動することを大切にし、今後も続けていければと思います。

長谷川先生:私も保険薬局の一薬剤師として、調剤後薬剤管理指導料2の新設を良いきっかけに、もっと多くの保険薬局が心不全の地域連携に積極的に関わっていけるようにアラートと手帳の活用を働きかけていきたいです。また、地域における患者さんのかかりつけ医は循環器が専門でない場合もあるため、そこで薬剤師が適切なフォローアップを提供することで心不全連携・療養への貢献度も高めていけるのではないかと考えています。

加賀先生:心疾患は他疾患に比べてケアが難しいとのイメージをもっているケアマネジャーもたくさんいると思います。正直、私も以前はそうでした。しかし、現場で連携を始めてみると訪問看護師をはじめ、多職種の皆さんがいろいろ教えてくれますし、必要な知識は利用者さんと一緒に学んでいけば良いので、難しそうと苦手意識をもつ必要はありませんでした。心疾患は、ケアマネジャーの経験値を共有する目的で厚生労働省が作成した「適切なケアマネジメント手法」の疾患別ケアにも入っており、ケアマネジャーとして関わることが求められていますし、何よりも利用者さんのためになるので、全国の仲間にもぜひ一歩踏み出して地域の心不全連携に加わってほしいです。

*要介護高齢者本人と家族の生活の継続を支えるために、各職域で培われた知見に基づいて想定される支援を体系化し、その必要性や具体化を検討するためのアセスメント/モニタリングの項目を整理したもの(文献2より引用)

阪口先生:現状、心不全患者さんの多くが急性期病院を退院後にそのまま在宅療養へ移ります。私は回復期リハビリテーション病院の理学療法士という立場から、その現状に直接貢献できていないという思いがあります。一方、重症度が高く当院へ移ってくる患者さんのなかには、手帳をもっていても上手く活用できていない例も目にします。急性期の短い入院期間のなかで患者さんに心不全管理を十分理解してもらうのは難しいと考えられます。その点、回復期のリハビリでは療法士は患者さんとじっくりコミュニケーションがとれる強みがあるので、運動以外についても患者さんが理解を深められるように関わっています。実際、数週間〜数カ月のリハビリを経ると自己管理能力がアップする方が多く手応えを感じますので、回復期に入院しない患者さんの場合、今後はぜひ外来リハビリを導入してもらい継続して関われるようにしていきたいです。そのほか、当法人としては、手帳やアラートの活用で実際にどのくらい再入院を防げたのか、生命予後は改善したのかなども今後検証を行って学術的な情報発信もしていく必要性があると思っています。

谷本先生:私自身、医師として多職種でのこれまでの活動を経験してみて、心不全患者さんを長く支えていくには地域の多職種の力が本当に重要だとつくづく実感しています。ぜひ現場で活躍されている医師には、心不全は急性期の治療だけでなく、地域での療養・管理が大切なことをよく知ってもらいたいです。そして、患者さんのやる気を維持し、多職種連携が円滑に進むように、手帳があれば必ず確認し、患者さんや多職種が記載した内容を見て対応をお願いします。

最後に、図4に挙げたのは当法人の活動において私たちが大事にしている考えです。患者さんと地域のためになるのはもちろんですが、自分たちも楽しく活動して成長できる場であることを願い、"「いいもの」はきっと残る、「いい活動」はなくならない" を合言葉に、より良い心不全療養の実現を目指して今後も多職種のメンバーで前進し続けたいと思います。

図4 2025年度の活動計画
図42025年度の活動計画

(提供:NPO法人和歌山心不全アラート)

<参考>

  • 1)和歌山県:令和7年度和歌山県における高齢化の状況
    https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/040300/siryo/index_d/fil/R7.pdf(2026年1月13日閲覧)
  • 2)日本総合研究所:「適切なケアマネジャージメント手法」の手引き.p1,2021〔令和2年度厚生労働省老人保健事業推進費補助金(老人保健健康増進等事業)、適切なケアマネジャージメント手法の普及促進に向けた調査研究事業〕
    https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/r2fukyu_betsushiryo.pdf(2026年1月13日閲覧)

(開催日:2025年12月8日 開催場所:オンライン)

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