閉じる

医療・介護ニュース

パーキンソン病の新しい発症メカニズム発見-富山大が成果発表、酸分泌抑制剤で輸送疎外も

2023年04月28日 13:57

印刷

 富山大はこのほど、薬学部薬物生理学研究室の藤井拓人助教、酒井秀紀教授らの研究グループが、パーキンソン病の病因分子の一つである「PARK9」が、水素イオンとカリウムイオンを輸送するタンパク質であることを発見したと発表した。パーキンソン病の発症メカニズムや治療方法の解明に向け、新たな道を切り開くことが期待できるという。【新井哉】

 パーキンソン病患者の脳には、「α-シヌクレイン」と呼ばれる病原(変性)タンパク質の異常な凝集体が「ゴミ」のように蓄積しており、運動に関わるドパミン神経細胞が死に至ると考えられている。

 研究グループは、「PARK9」が、細胞内における「ゴミ処理場」(不要・異常タンパク質を分解する場)のリソソームに存在し、水素イオンとカリウムイオンを輸送するタンパク質として機能することを発見。この機能はパーキンソン病患者で報告されている変異によって著しく低下することが分かった。パーキンソン病患者の脳内では「PARK9による水素イオンとカリウムイオンの輸送機能が低下している」との考えを示している。

 また、PARK9のイオン輸送機能が、消化性潰瘍や逆流性食道炎の治療薬として使用されている酸分泌抑制剤で阻害されることを見い出した。PARK9の輸送機能が阻害されると、リソソームの分解能力(ゴミ処理能力)が低下し、「α-シヌクレイン」の異常な蓄積が引き起こされたという。

 PARK9による水素イオンとカリウムイオンの輸送機能は、α-シヌクレインが脳内に蓄積することを防ぐ重要な役割を担っており、パーキンソン病患者では、その機能が低下することでα-シヌクレインの異常な蓄積が引き起こされることが示唆されると説明している。この研究の成果は、英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。

出典:医療介護CBニュース