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医療・介護ニュース

自閉スペクトラム症モデルマーモセット開発に成功-国立精神・神経医療研究センターの研究グループ

2021年09月27日 16:20

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 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と国立研究開発法人日本医療研究開発機構はこのほど、NCNP・神経研究所微細構造研究部の一戸紀孝部長、渡邉惠研究員、中垣慶子研究員らの研究グループが自閉スペクトラム症(自閉症)モデルマーモセットの開発に世界で初めて成功したと発表した。【新井哉】

 これまでマウス・ラットの自閉症モデル動物に対しては治療効果のある薬物があったが、それらの薬物はヒトにおいて有効と認められなかった。マウス・ラットはヒトと進化的に遠いことが原因ではないかと考えられるようになり、ヒトに近い霊長類・コモンマーモセット(南米原産の小型のサル)の自閉症モデルの開発が世界中で行われてきたという。

 抗てんかん薬のバルプロ酸は、妊娠中の母親に投与されると子どもの自閉症リスクを上げることが知られているが、これはバルプロ酸が形成時期の脳の正常な遺伝子発現を変化させる特徴を持っているためであると考えられている。そこで、研究グループは、妊娠中のマーモセットに同様な処置をすることにより、自閉症モデルマーモセットを作出することに成功。このモデルマーモセットは、自閉症の言語発達の障害を思わせる鳴き声の発達異常を示した。また、遺伝子発現変動がヒトのそれと高い相関を持ち、遺伝子改変などで作成されたマウス・ラットのモデルよりもヒト自閉症をよく再現していることも分かった。

 さらに研究グループは、ヒトでは幼児期に当たる若い自閉症モデルマーモセットの詳細な解析から、ヒト自閉症の子どもの脳回路が不安定で、そのため学習した行動様式の定着が困難である可能性を示したとしている。この研究の成果は、英国のオンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

出典:医療介護CBニュース