施設の取り組み

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第21回 人間的な魅力と高度な専門性を武器に、地域の患者さんの健康をサポート

健康サポート薬局制度は、薬局が地域に出ていくタイミングと捉える

2015年10月に厚生労働省より提言された「患者のための薬局ビジョン」において、病気の予防や健康の維持・増進に貢献する「健康サポート機能」が求められ、翌年の調剤報酬改定では「かかりつけ薬剤師指導料」が新設されるなど地域包括ケアシステムの完成に向けて薬局が持つべき機能のあり方が変化してきている。そのような中、総合メディカル株式会社が運営するそうごう薬局では、従来より患者さんとのコミュニケーションを強化し患者支援に取り組んできた。
「弊社は医療機関の経営コンサルティングを通して地域医療のお手伝いをしてきた会社です。薬局でも同様に、地域に貢献していくことは基本的な方針です。今般の調剤報酬の改定や健康サポート薬局の制度ができたことは、我々が取り組んできたことが国の考える方向とも合致し、いよいよ薬局が地域に出ていくタイミングが来たのだと捉えています」と薬局企画部長の下新原統志氏は話す。
「これからの薬剤師には、処方箋に記載された情報に基づいて調剤した薬を渡すだけではなく、患者さんとの接点を増やし、治療に対する気持ちや悩みを聞き出し対応していくことが求められます。そのためには、人間的な魅力を備えたかかりつけ薬剤師であることが第一です」(下新原氏)。
また、「患者のための薬局ビジョン」のなかで地域住民の健康をサポートするとともに薬局に求められているのが、高度薬学管理機能であり、そうごう薬局ではその点についても、専門知識を持つ薬剤師の育成に取り組んでいる。その1つががんと糖尿病の患者さんに対する薬局でのサポートである。

レジメン開示と症例検討で情報の共有を行う薬薬連携勉強会

そうごう薬局天神中央店では、「がん」と「糖尿病」の2つの専門チームを設け、店舗の薬剤師はいずれかのチームに所属する。さまざまな疾患があるなかで、この2つに絞ったのは、がん患者さんは治療面だけでなく心理面でのサポートも必要であり、糖尿病も同様に治療過程で行動変容を促すなど、長期間にわたり一人の薬剤師が継続的に患者さんとの接点を持ち続ける必要がある疾患であるためだ。
増加する外来でのがん治療においては、院外の薬局が処方箋を応需し、患者さんに応対することになる。そこには情報の共有が必要であり、地域がん診療連携拠点病院でもある近隣の福岡県済生会福岡総合病院の薬剤師と2011年から薬薬連携勉強会を開始した。
天神中央店の外来がん治療認定薬剤師である吉田志保氏は 「病院の薬剤部も薬局との連携の必要性を感じていたようです。薬局では患者さんにどのような応対をしているのか、薬局が必要としている情報は何なのかが分かるよう、まずは『顔が見える関係』を構築し、情報共有できる場を設けるところから始めようと勉強会がスタートしました」と振り返る。
勉強会の内容は、福岡県済生会福岡総合病院のレジメンの開示と、病院と薬局で基本的な服薬指導を統一するための症例検討である。
「勉強会前はレジメンについて情報が提供されておらず、患者さんが病院でどのような治療を受けているのかが分かりませんでした。化学療法が点滴だけの場合、処方箋には支持療法薬しか記載されませんので、がんの患者さんと分かっても薬局で行うべき副作用のフォローやモニタリングなどが十分ではありませんでした」(吉田氏)。今では処方箋の備考欄にがん種番号とレジメン名が記載されるようになり、同病院のホームページにてその番号に対応したレジメン内容が開示されるようになった。抗がん剤の催吐リスクなども分かるようになっているため、制吐薬の処方漏れなども発見でき、鑑査にも役立っているという。
さらに、「 病院と薬局での説明に相違があると患者さんが混乱するため、症例検討を通じて経口抗がん剤や支持療法など基本的な服薬指導の擦り合わせを行っています」(吉田氏)。
また、薬局内での情報共有手段として、症例毎に「症例検討シート」を作成し、患者さんの基本情報や検査値、レジメン、治療経過のみならず、患者さんの精神状態なども記入できるようにし、情報を共有している。
薬局内での明確な情報共有に加え、病院との情報共有が可能になったことで、より充実した服薬指導が可能になった。

患者さんと直接話をすることで、より有益なサポートが可能に

同店では、患者さんががん治療を受けていると分かった時点で、がんチームに属する薬剤師が必ず担当する。がん患者さんが来局すると、服薬状況と副作用症状について確認するための「事前状況確認シート」を毎回記入してもらう。このシートは服薬ができているか、副作用症状の有無を確認するためのもので、この情報を基に担当薬剤師が詳細の聞き取りを行う。副作用と一言で言っても抗がん剤の副作用は多様で、発現のタイミングも異なる。また何らかの症状があっても患者さんが副作用と捉えていない場合もあり、それを放置すると重篤化する危険性もある。
「患者さんと直接お話をすることによって、副作用が明らかになることがあります」と吉田氏。
聞き取った情報は「スクリーニングシート」に落とし込み、患者さんのセルフケアへの理解度や実施状況、副作用の重症度などを評価して薬局内で情報共有できるようにしている。さらに、緊急性はないが医師に情報提供が必要と判断した場合は患者さんの状況を「トレースレポート」で主治医にフィードバックするようにしている。
「病院での血液検査結果をすすんで見せてくださる患者さんもいます。継続的に検査値を確認することで見えてくる患者さんの状況もあるので、薬剤師視点の指導や説明を薬局でサポートできればと思います。治療において薬局は最後の砦です。また、患者さんにも時間を割いて話をしてもらいますので、薬剤師が関わることで患者さんにとって少しでも『プラスになること』を提供したいと心がけています」(吉田氏)。

不安を抱えるがん患者さんを心理面でサポートする「がん対話カフェ」

そうごう薬局天神中央店では、2013年から月1回「がん対話カフェ」を開催している。
「がんはどうしても死を連想してしまう疾患なので、患者さんの気持ちの浮き沈みが大きくなります。気持ちが落ちこんだ時の心のケアは絶対に必要です。そういったがん患者さんの不安に対して何かできることはないだろうかと考えたのがきっかけです」(吉田氏)。
「がんサロン」や「患者会」を開催しているところもあるが、多くは医師や看護師が複数の患者さんや家族を対象に話をするという形が多く、個人的な悩みや迷い、不安を話せないという患者さんもいる。同店では、予約制で土曜日の午後に「がん対話カフェ」を開き、原則、担当薬剤師と患者さん、もしくはそのご家族の1対1でじっくり話を聞く場を提供している。参加するのは、同店が処方箋を応需する病院の患者さんだけではない。ホームページを見て参加する方、友達から聞いて参加する方も多い。
これからの治療をどうするか、抗がん剤の副作用を心配しながら積極的な治療を選択するべきか、自分の選択が正しいのか、患者さんが抱える悩みは様々である。『がん対話カフェ』は薬剤師から一方的に説明や指導を行う場ではない。
「患者さんが話をし、患者さんがもっているがん治療への不安・想い・悩みを全て吐き出していただき、聞きたいことを何でも聞いていただいて、患者さんにスッキリしていただくことが目的です。イメージや人の話だけでがん治療が怖いと考えている方もいます。何を選択するかを決める際に、正しい情報に基づいて決めていただけるようにサポートしたいのです」と吉田氏は「がん対話カフェ」の役割を説明する。「患者さんに信頼してもらえる薬剤師、顔を見ただけで安心したと言われるような存在になりたい」とも。

行政とともに取り組む「糖尿病性腎症重症化予防事業」

一方、対馬市のそうごう薬局では地域の糖尿病患者を平成26年度から平成28年度までサポートした。それが、対馬市との連携による「糖尿病性腎症重症化予防事業」への参加である。
対馬市は山間部が多く車での移動が多くなりがちである。食事の面でも砂糖や塩などの調味料を多く使う習慣があり、平成25年度国民保険データでは糖尿病患者数が全国平均の1.2~1.3倍だった。同事業は国の「健康日本21」を受け、対馬市が策定した「健康つしま21計画」のもと、保健医療関係団体の活動の1つの業務において、株式会社マディアが開発した仕組みを活用した取り組みである。
薬局として同事業に参加するのはそうごう薬局が全国初。対馬市には総合メディカルが運営する薬局が5店舗あり、市内の約7割の処方箋を応需している。1号店開設から約15年間、地域の医療施設や行政と良い協力関係を築いてきた地域に根付いたそうごう薬局のあり方が背景にある。
対象となるのは、腎症ステージがII期~III期Bの糖尿病患者である。糖尿病性腎症はステージを維持することさえ困難で、透析に至ると多大な精神的・肉体的負荷が生じ、さらに年間約500万円もの医療費がかかるため、医療経済的にも問題となる。そこで透析への移行を阻止するため、医師との連携により糖尿病患者さんの自己管理を支援するのが薬剤師の役割となる。
「多くの患者さんは糖尿病の食事・運動療法を十分に実施できていません。薬局には受診後には薬を受け取りに必ず来局されるというアクセス面での利点と、受診により患者さんの糖尿病に対する関心が高まっているタイミングであるという心理面での利点があります」と九州薬局統括部の村上芳行シニアアドバイザーは薬局でサポートすることの意義を話す。
6ヶ月間の継続プログラムで患者さんを支援するが、行うのは指導ではなくコーチングであるという。
「患者さんに自ら目標を立ててもらい、それが達成できるか、できなければどのように修正するか、行動変容に導くようにサポートする。それが薬剤師の役割です」と村上氏。
前述のがん患者さんへのサポートと同様、ここでも重要なのは患者さんの話を傾聴することであるという。そのため、通常の投薬カウンターではなく別室に移動して30分から場合によっては1時間半程度の時間を割く。
同事業を実施した3年間では、サポートした患者さん28名のうち、腎症ステージが進行した患者さんはおらず、3名が改善、悪化は0名という成果を挙げている。

地域に出て未病の段階での働きかけを

そうごう薬局はがんと糖尿病に限らず、認知症や高齢者の低栄養に起因するフレイルやサルコペニア、在宅訪問も比較的早い時期から注力している。その中でも喫緊の課題である認知症に対しては、薬剤師に限らず全職員が認知症サポーターの資格取得を目指すなど、地域医療へのサポート体制を積極的に整えている。また、2017年8月末時点では47店舗が健康サポート薬局だが、将来的にはそうごう薬局全店舗の2割程度が健康サポート薬局として活動することを目指している。その際に課せられているのが、地域への情報発信である。例えば、フレイルに関する啓発もその1つで、「日本人は粗食が美徳であるという意識がありますが、高齢者に関しては体力維持のためタンパク質の必要性を理解していただくことが重要です。また、未病の段階で健康に対する関心を持ってもらい、運動につながれば良い循環になるのではないかと考えます」と下新原氏は、今後の働きかけの必要性を話す。
今までも薬局内のポスター掲示や、リーフレットの作成・配布など疾患や生活習慣の改善の啓発には努めてきた。しかし、未病の状態というのは薬が関わる前の段階であり、従来の処方箋を持ってくる患者さんへの対応とは異なる。
「薬局に来ない方に、薬局の機能をどうアピールするかが今後の大きな課題です。健康サポート薬局の機能の1つとして健康イベントの開催が謳われており、当社でも取り組んでいますが思うように参加者が集まらない状況もあります」(下新原氏)。
薬局単体での活動やイベントだけでは難しいため、最近は他業種が開催する健康イベントなどへの出展も進めている。例えば、スーパー銭湯など健康関連施設でのイベントへのブース出展や、自治体などが主催するイベントへの参加である。
「今までは薬局の中で受身的な活動が多かったのは事実ですが、このような活動を続けていけば、薬局に対する地域の認識も徐々に広まっていくと考えています」(下新原氏)。
薬局と地域が一緒になり、さらに地域に貢献・支援していくための打開策をそうごう薬局は「積極的に薬局の外に出ていく」ことに求めて、活動を継続している。


2017年8月取材

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