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施設の取り組み
札幌南三条病院 /国立病院機構北海道がんセンター

道内がん治療のネットワーク作りを目指す札幌がん専門薬剤師セミナー

写真.佐藤 秀紀氏

佐藤 秀紀氏(札幌南三条病院 薬剤部長)
札幌病院薬剤師会会長、感染制御専門薬剤師

写真.玉木 慎也氏

玉木 慎也氏(国立病院機構北海道がんセンター薬剤科 製剤主任)
がん指導薬剤師、がん専門薬剤師、札幌病院薬剤師会 がん専門薬剤師セミナー運営委員長

がん専門薬剤師認定の取得を目指す薬剤師をサポート

写真.佐藤 秀紀氏による説明

札幌病院薬剤師会では2005年から札幌病院薬剤師会がん専門薬剤師セミナーを開催している。年4回、全国から第一線で活躍する医師や薬剤師を講師に招いて行う講演形式のセミナーである。同セミナーに参加することで、日本病院薬剤師会が認定するがん薬物療法認定薬剤師の新たな申請や更新に必要な単位の取得ができる。
セミナーを主催する札幌病院薬剤師会会長である札幌南三条病院薬剤部長の佐藤秀紀氏は、「北海道は非常に広いですが、北海道病院薬剤師会の会員の半数は札幌病院薬剤師会の会員です。そのため、セミナーの主催は札幌病院薬剤師会ですが、全道の薬剤師を対象としています。」と言う。さらに道内に20施設ほどあるがん診療連携拠点病院はもちろん、日常的にがん治療を行わない病院の薬剤師も対象として捉えている。「がん専門薬剤師を目指す薬剤師のサポートをすることが当セミナーの目的です。さらに、一般の薬剤師にもがん治療に興味を持ってもらい、ジェネラリストとして臨床現場で質の高い業務を実践し活躍する薬剤師の養成を手助けする場でもあります。」と佐藤氏は語る。

参加者のモチベーションを高めるためのテーマと講師の選定

セミナーの企画は、同セミナーの運営委員長でもある北海道がんセンター薬剤科の玉木慎也氏を含む5人の運営委員会が行っている。日進月歩を遂げているがんに関する情報を、個々の薬剤師で追うのは困難である。そこで、「がん専門薬剤師等の認定を持つメンバーが、現状で困っていることや耳にした最新の話題を持ち寄り、より多くの薬剤師の興味をひくような話題をセミナーのテーマにしています。また、参加者のモチベーションをより高めることができるように、治験の責任者等の第一線で活動する医師や薬剤師を講師として招き、学会や東京などの遠方のセミナーに参加しなくとも、最新の情報に触れることができるようにしています。」と玉木氏はセミナーについて説明する。

セミナーを通じてネットワーク作りを目指す

写真.玉木慎也氏による説明

さらに、札幌がん専門薬剤師セミナーを通じて、「今後は北海道のがん治療に携わる薬剤師のネットワークを作っていきたいです。」と玉木氏は語る。
今やがん治療はがん診療連携拠点病院だけではなく、多くの医療機関で行われている。中には、年間数人しかがん患者が来ない施設もあり、もちろんがん専門薬剤師がいない施設もある。「だからといって、薬剤師ががんを知らないということは許されません。」と玉木氏は言う。「さまざまな環境にいる薬剤師が自由に意見を交換できる場を作りたいと考えています。このセミナーを通じて、困ったときに相談できる人間関係の基盤作りをしていきたいですね。」と話す。玉木氏ががん指導薬剤師(がん専門薬剤師)ということもあり、現在もセミナーに参加した他施設の薬剤師から化学療法に関する問い合わせなどを受けることがある。
それをさらに広く進めるために、「現在講演会形式で行っているセミナーを、互いの顔が見えるグループディスカッション形式にしていきたいです。これまで肺がんや血液がんなど、病態ごとのテーマが多かったのですが、今後は患者さんにネガティブな情報を伝える際のコミュニケーションスキルなど、知識だけではなく、より実践的なテーマも展開していきたいと考えています。」と今後について語る。病態などの知識のほかに、がん治療に関わっていく上で非常に重要なテーマだからだ。

情報の共有化で薬剤師業務に広がりを

佐藤氏は、「薬剤師が単に薬の説明だけで終わるのではなく、がん治療のマネジメントまで関わるのならば、より深い知識を身につけていかなければなりません。」と指摘する。その上で、「こうしたセミナーで最新の知識を得るとともに、ネットワークにより情報を共有することは、がん治療に携わる薬剤師にとって非常に有用なことです。それによって、チーム医療の中で、薬剤師業務自体の広がりも見えてきます。また、中小病院の薬剤師においても化学療法に取り組んでいる薬剤師がいますので、最新の知見を得て、発展して臨床研究に取り組めるような場としていきたいと考えています。」と佐藤氏は語った。

札幌がん専門薬剤師セミナー

今年最初に開催された4月21日のセミナーでは、第一線で活躍する腫瘍内科医を講師に招聘し、肺がんの基本的な疫学や病態、さらに分子標的薬を中心に臨床試験の結果を交えた最新の治療まで約2時間の講演が行われた。

参加した薬剤師は103名。札幌市内の基幹病院はもちろん、稚内や函館の病院、クリニックや保険薬局の薬剤師も参加し、熱心に聞き入っていた。


(2011年4月取材)

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