

![]()

2010年9月19日・20日、山口県・下関にて第72回九州山口薬学大会が開催されました。その中で沢井製薬共催によるランチョンセミナー「薬局の未来〜その危機!その活路!とは〜」が開催され、座長に俣賀隆先生(綜合病院山口赤十字病院薬剤部長)を迎え、山村真一先生(神奈川県川崎市薬剤師会常務理事プライマリーファーマシー代表)による講演が行われました。
昨今、国家の財政状況は厳しさを増し、社会保障の維持すら困難な局面を迎えています。保険薬局を取り巻く環境もダイナミックに変容し、その大きな潮流の変化の中で、特に独立系薬局の存続が危ぶまれる状況となっています。
今回の九州山口薬学大会ランチョンセミナーでは、調剤現場と薬剤師会を通じ、保険調剤薬局事業に携わってきた、神奈川県川崎市薬剤師会常務理事でプライマリーファーマシー代表の山村真一先生が、保険薬局を取り巻く現況とジェネリック医薬品の活用方法について、300名を超える薬剤師を前に講演を行いました。
薬局の未来を語るにあたって、改めて我々保険薬局の現在の姿を考えてみます。保険調剤業は国家主導の下で順調にスタートし、その後20数年間右肩上がりで伸びていきましたが、2002年の診療報酬のマイナス改定を境に大きく風向きが変わり、我々保険調剤の業界にも大きな変化をもたらしました。
1985年に10%だった医薬分業率は10年かけ20%になり、さらにその8年後の2003年には50%と急速に伸びる結果となります。急速すぎる伸びは保険薬局の脆弱化を招き、結果、経験のある薬剤師の不足、経験の少ない薬剤師の採用不可避という事態に陥りました。
一方で病院・診療所の門前へ保険薬局の集中開業が進むなど、薬局の質的向上よりも数量的拡大が優先され、調剤過誤やリスクマネジメントについて指摘され始めたのもちょうどこの頃となる訳です。
では次に、経済的視点から保険調剤業を分析してみましょう。処方せん1枚の内訳を見ると、処方せん単価の平均値が8000円、技術料は2000円。つまり6000円は薬剤費ということになります。1施設あたりの年間保険請求額は、診療所で9400万円、歯科で3600万円、保険薬局では1億1千万円。現在の分業率が60数パーセントで、70%くらいを頂点とすれば、あと2千万円程度増え、1億3千万円くらいになる計算です。処方せん1枚あたりの技術料が2000円で、年間7億枚の処方せんが発行されていますので、2000円×7億枚で1兆4千億円。これが国が我々に支払ってくれているフィーです。保険薬剤師数が14万人として薬剤師1人あたりの生産性は1千万円くらいになります。この額が高いのか安いのか、適正なのかという視点が重要です。
我々の姿を数値化したところで、改めて国の姿と重ねてみます。医療費の37%は公費負担、残りは患者さんの払う保険料と自己負担金ですから、純然たる税金産業です。我々が受け取る医療費の半分は人件費、薬剤費は22%程の比率です。
自分たちの姿をしっかりと理解できれば、自ずとジェネリック医薬品の存在価値を見出すことができると思います。ジェネリック医薬品や長期収載品を使い薬剤費を下げることは、人件費を下げるよりも手をつけやすいはずです。我々の事業に税金が投入されていることを改めて考えてみれば、薬剤費の低減についてもっと努力すべきだということが分かると思います。
急速に進む医薬分業を背景に、保険調剤業界自体も大きく形が変わろうとしています。薬局経営に異業種の参入を国が容認しているため、医薬品小売業の経営主体が多様化してきています。結果、競争が生じることで、価格の低下やサービスの向上に繋がることは望ましいというわけです。昨年6月の改正薬事法を境に、ヤマダ電機といった新規参入組や、保険薬局チェーンとコンビニの連携などが相次ぎました。これらは患者にとってメリットがあることではありますが、逆に小規模の保険薬局は戦っていけるのかといった危機が生まれました。最終的には小規模の保険薬局は消え、大手チェーンが勢力を伸ばし全国制圧するのでしょうか。
経済の論理で考えると、市場の約4分の1を占めたとき、はじめてその市場を仕切っていると言えます。現在、保険調剤業界の市場規模は5兆9千億円。そのうち、4分の1は1兆4千億円ほど。この規模の企業が我々の業界に存在するでしょうか。トップのアインファーマシーズで1200億円、日本調剤で約1千億円。まだまだ我々の保険調剤業界は戦国時代にあると言えるでしょう。
ではどうすれば小規模の保険薬局は生き残れるのでしょうか。その答えは実は身近な所にあります。もし小規模の保険薬局が手を結べるならば、薬局の数では9割、保険調剤売上では8割になります。一定数の保険薬局が手を結ぶことになればまだまだ勝算がありそうです。何より仕入れの交渉窓口の一本化に繋がることは大きな意味を持ちます。
今年4月30日の厚生労働省医政局局長通知で、「医療現場の動向の把握に努めるとともに、各医療スタッフが実施することができる業務の内容等について、適時検討を行う予定」とした発表がありました。医療スタッフが業務分担することで医師の過重な労務を軽減することについて前向きに検討しようとしているのです。
その中で薬剤師業務について、「薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益」とした上で、薬剤師の活用が望まれる業務として、薬物療法の経過を確認した上で、前回と同一薬剤を提案したり、定期的な副作用発現状況チェックのために分割して調剤する事や、薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づいた薬剤変更の提案等が上げられます。病棟や在宅医療の場面において薬剤師を十分活用する事は、間違いなく医療費節減への貢献に繋がる事でしょう。
国も薬剤師に期待しています。受け身で待っているだけではいけません。我々が実際に動いて数字を示すことで始めてフィーが発生するのです。「上がれば下がる」つまり、薬剤師の裁量を「上げる」ことによって、国家・国民の負担が「下がる」のです。例えば2千億円市場規模のアムロジピンの87%は未だに先発品です。これを薬剤師の努力で50%をジェネリック医薬品に転換することで、約500億円のコストダウン貢献が可能になるのです。変化に適応した種が生き残るこの世の中、変化を恐れず手を取り合ってアクションを起こせば活路を見い出せるかも知れません。