



木質で統一された壁とフローリングに広々とした空間、少し落とし気味のライティングに落ち着いたクリーム色のソファ。大型スクリーンでは昔懐かしい映画の上映が行われていて、コーヒーを片手に語らう人も見られる。車椅子の女性を押しながら店舗に入ってきた男性は、店内の人たちと挨拶を交わしながら奥に設置されている市販薬のコーナーへと足を踏み入れる。全面硝子張りの壁の向こうには60種類もの草花や薬草が植えられており、四季折々に咲く花々が人々の目を楽しませる。
祥漢堂薬局新大阪店の店内は調剤室がなければ、レストランかカフェに見紛う。

壁面と同じ木質のデザインを施したカウンターには簡単な間仕切りがある程度。昨今厳しくなりつつある個人情報保護対策のため、閉鎖性を高めた薬局とは異なる設備だ。しかしこれまで患者から不満の声は聞かれない。応対した薬剤師は丁寧に患者の話を聞きながら、薬をただ揃えるだけでなく、その患者にとって最適な答えを導いていく。
ジェネリック選択を含めた保険調剤に加え、漢方、サプリメント、体質改善指導など、話は多岐に渡る。当然、一人一人にかける時間も長い。調剤カウンターには腰に負担の掛からない座り心地の良い椅子を設えており、患者の中には何回か通いながら椅子が気に入って個人的に買い求めた人もいるという。
そして祥漢堂薬局新大阪店を「オーダーメイド薬局」の場として特徴づけるのが「漢方」の存在である。

株式会社祥漢堂の創立当初はアンテナショップ的な薬局の要素が主であったが、数年後さらに新たなファクターが加わった。それが漢方との出会いである。
体調を崩していたEMシステムズ國光浩三社長は15年ほど前、当時大阪市立大学に客員研究員として来日していた中国南京中医薬大学の王強氏の漢方指導を受けることで徐々に回復した。「自分が受けた恩恵を世の中に広めたい」との國光社長の思いが、その後の漢方薬局経営に繋がっていく。
とはいえ、漢方薬局経営は採算が厳しい。それでも敢えて漢方薬局経営に踏み切った背景には、社会貢献的な意味とともに、祥漢堂薬局を特徴ある薬局として成長させたいという思いもあった。
王氏を正式に同社の取締役主任相談員に招聘し、漢方薬局の第一号店が1993年、新大阪に設立される。主任相談員としての王氏には、東洋医学研究会をはじめとした講演の要請が多く来る。今年6月からは最新の漢方処方を学びたいという現役医師、薬剤師の求めに応じ、月に一回の「臨床漢方講座」がスタート。具体的な疾患や症例を取り上げた最先端の中医学を学べるとあって、初回から20名を超える医師が集まり熱心な質疑応答が繰り広げられた。
王氏は積極的に正しい漢方知識を持つ専門家を育てる一方で、南京中医大学の教授として本場中国の最新臨床知識を吸収し、それをまた日本で環流させる。
祥漢堂薬局新大阪店には、医療用医薬品がジェネリックを含め1700品目、OTCは1000品目を常備している。漢方生薬は将来的には180種類まで増やしていく予定だ。
新大阪店の薬剤師11名は、ジェネリックを含めた医療用医薬品はもとより、OTC、サプリメント、漢方製剤すべてについて、幅広い知識と調剤技術の習得、高度な対応能力が求められる。
管理薬剤師を務める坂上和実氏は「まず患者様の声を聞くことを大切にしています」と語る。充分な対話を通じて、コンプライアンスの充足度を高めていく。「お話をされることで満足して帰られる方も多い」のだと言う。豊富で幅広い知識と技術が患者との間の充実したコミュニケーションに繋がっていると言える。

患者にとって「ここは自分のかかりつけ薬局」だと感じさせる気配りが店内のあらゆる部分に施されている。患者の案内役を務めるコンシェルジュを配置していることも特徴の一つ。一度来局した患者の名前を覚えることを心がけ、次回来局時にはそのお名前で声を掛けることを心がけている。「挨拶を忘れない」「整理整頓を心がける」というごく日常的な心配りを大切にしていることも薬局を上質なものにしている理由かもしれない。
(2008年9月)