
大阪南部、岸和田市に平成5年、薬剤師による勉強会「五ツ星フォーラム」が結成された。この場で話し合われた理想の「かかりつけ薬局」を目指し生まれたのが五ツ星薬局だ。平成12年に市立岸和田市民病院前に開局した同薬局に共同出資するのはもちろん、所属メンバーが薬局経営者である。
岸和田市は、関西国際空港と大阪の中心部を結ぶ中間地点という交通アクセスのよい場所にある。一方で、大阪府北部などに比べ大学病院など基幹病院が少ない。平成5年当時は国の分業推進の政策が強力に推し進められつつあった時期であり、岸和田地域では急速な動きは見られなかったものの、一部にマンツーマン形式の分業に踏み切る医療機関が現れ始めるなど、普及が始まりつつある時期でもあった。そのような折、所謂「ソリブジン事件」が社会問題となったのをきっかけとして、処方せんの受け手である薬局側の体制を見直そうという声が薬局経営者や病院薬剤師の中から上がってきた。そのうちの有志の数名が中心となって「患者および医療機関から安心と信頼を得る薬局となること」を目標として、実践的な勉強会であるフォーラムを組織化し、平成6年1月より活動を開始した。
最高級の称号を意味する「五ツ星」を会の名称に掲げ、理想の薬剤師・薬局像を追求しようと結成された五ツ星フォーラムの活動は月1回、参加はすべて個人の自由意志によるものとされた。各薬剤師のスキルアップを図り、積極的に他の医療スタッフと連携をとり、地域医療に関する本質的な問題を探ることなどが活動目標として掲げられた。このような活動目標に賛同して参加する薬剤師は、岸和田市近隣の薬局薬剤師ばかりでなく、病院薬剤師や遠方からも多数見られた。
市立岸和田市民病院の院外処方せん発行の方針が打ち出されたのを機に、「所属メンバーの共同出資による薬局の設立」が提案され、平成12年5月に「五ツ星薬局」が開設された。フォーラムの象徴となる薬局を目指すと同時に、地域全体の分業発展へのステップとなることが五ツ星薬局の大きな目標だ。
薬局に入ると吹き抜けの開放感ある広々としたスペースが広がる。出入り口のバリアフリー化、ゆとりを持たせた待合室に、個々の患者にあった服薬指導やセルフケア指導に対応できる相談コーナーなど、患者に対応するための様々な工夫が施されている。一日の平均外来患者数が1000人を超える市立岸和田市民病院門前にあって、五ツ星薬局は朝9時の開店から夜7時の閉店まで患者の来局が途絶えることがない。さらに五ツ星薬局をかかりつけ薬局にする患者の増加により、処方せんは市民病院のみならず周辺医療機関からのものも増えており、処方せんを応需する医療機関数は月70軒を超える。
理想的な薬局を目指し設立された薬局だけに、必要となる医薬品はすべて購入し備蓄する。一人一人の患者に時間をかけて服薬指導を行う。中には、例外的な医薬品使用もありレベルの高い服薬指導を求められるが、保険薬局が負担に感じることも患者にとって必要なことだと判断すれば実践できる。このような取り組みが認められて、市民病院周辺に多くの薬局が集まる中にあっても、自然と患者は五ツ星薬局に集中することになる。

五ツ星薬局が特に心がけるのは患者とのコミュニケーション重視の服薬指導だ。「服薬指導とは相手の本音を聞くこと」と語る中井薬局長は、患者とコミュニケーションを図り、疑問や不安をしっかり聞き、薬についての情報を適切に伝えることで初めて、患者との間に信頼関係を築けるという。副作用や支払い金額明細まで、聞かれたことにはすべてきちんと応じる。「メリットもデメリットも含め十分に説明することで薬局への信頼を構築したい。医療の主体はドクターでも薬剤師でもない。患者なのだ」という考えの下、すべての業務が行われている。
自信を持って説明するためにはきちんとした知識が必要だ。五ツ星薬局では現代医学に基づく最新の医療を念頭におき、医薬品の情報を常に研究し調剤技術の向上に努めている。今も続く五ツ星フォーラムをはじめ、調剤過誤防止研究会を開催するなど、薬剤師はもとより、事務スタッフなど全員が参加して情報の共有化を図る。
そうした患者主体の姿勢はジェネリック医薬品対応にも表れている。市民病院の院外処方せんのうち、ジェネリック医薬品への変更が可能なものは5割ほど。ジェネリック医薬品を希望するすべての患者に適切な説明を行い情報提供することを心がけている。現在のジェネリック医薬品備蓄は300品目ほどに達している。
(2008年12月)